キーワード「た」「ち」「つ」「て」「と」 | 認知的体験 

キーワード「た」「ち」「つ」「て」「と」

  

「タ」

対象の永続性(object permanence)

 対象の永続性とは、対象がたとえ視界から見えなくなっても存在し続ける認識ということである。これは生後8ヶ月くらいに概念に達する。つまり生後8ヶ月に達していない幼児が手を伸ばそうとしているオモチャを布で覆うと、その幼児はすぐさま行動を止め、まったく興味を失ってしまったかのように行動する。それに対して、生後10ヶ月の幼児に同じ状況をつくった場合、積極的に布やスクリーンに隠された対象物を探そうとする。(OC)

  

対象物の永続性(object permanence)

対象物の永続性とは、「対象物が視界から見えなくなっても存在し続けるという認識」のことで、心理学者ピアジェが出した発達段階理論の一つです。生後数ヶ月の赤ちゃんの前におもちゃを置いておくと、赤ちゃんはそれを見つめたり、手を伸ばして触ろうとします。そこで、布や仕切りなどでおもちゃを隠し見えないようにすると、赤ちゃんは驚いたり泣いたりもせず、見つめていた行動や手を伸ばす行動をやめ、まるでもともとそこにおもちゃがなかったかのように振る舞い、おもちゃを探そうともしません。対照的に、生後10ヶ月ぐらいの幼児はおもちゃを見えなくすると、布を引っ張ったりして積極的に隠されたおもちゃを探そうとします。こういうふうに、対象物が視界から消えても、そこにまだおもちゃがおいてあると考えることを「対象物の永続性」と言います。後からの研究で、3ヶ月半ぐらいの赤ちゃんでも対象物の永続性を示すことが明らかとなりました。(KJ)

  

代表性バイアス(representativeness bias)

 日常の生活の中で、あることがどの程度「ありがち」なことかを確率で判断しようとします。この時、私たちは実際に自らがより多く経験していること、つまり代表性にたよってしまいます。

 ここで言う代表性とは、目立った特徴や表面的な特徴で物事の類似性を表現することをいいます。例えば、魚の絵を簡単に書いてみようとするとき、多くの人がラグビーのボールのような形の胴体と、三角形に近い形の尾ひれで魚をあらわそうとするのではないでしょうか。この時私たちは魚の表面的な形の特徴を、魚の代表性として用いているのです。

 私たちが何か物事を判断するのに、いちいちすべてを詳しく検討したり、分析していたのでは時間がかかってしまいます。そこでこの代表性に着目することによって、私たちは簡単に物事の類似性を見つけたり、類似性に基づいて判断を下すことができるようになります。

 しかし、この代表性に頼りすぎてしまうと、それは判断の誤りの原因となります。この代表性による誤った認知を代表性ヒューリスティックというのです。(MM)

  

短期記憶(short-term memory)

記憶には、長い間覚えていられるものと、短時間で忘れてしまうものがあります。

例えば、自転車の乗り方や、自分の家の住所などは、ある日突然忘れてしまった、などという事はまずありませんね。このように、一度覚えたら忘れることのない記憶は、『長期記憶』といいます。

それに対して、電話帳で電話番号を調べて電話をかける時、一瞬は電話番号を覚えますが、番号をプッシュした後はすっかり忘れてしまいます。このように、短い時間しかもたない記憶を、『短期記憶』といいます。

『短期記憶』は、記憶できる時間が数秒間と、大変短いのが特徴です。さらに、記憶できる量もかなり限られています。人によって違いますが、普通の人が一度に記憶できるのは、だいたい7項目前後だと言われています。一度に7個以上の単語や数字を覚えようとするのは、なかなか難しいものです。

また、『短期記憶』は、記憶の中身を何度も意識的に反復することにより、『長期記憶』へと移行することもあります。一度見ただけではすぐに忘れてしまう英単語も、何度も発音し、書く練習をすることで、時間が経っても忘れずに覚えていて、テストの時に生かすことが出来ますね。(MY)

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短期記憶とは,その言葉の通り,短期間保持される記憶です。記憶には長い間覚えていられる記憶と短時間のみしか覚えていられない記憶があります。因みに長い間覚えていられる記憶は長期記憶といいます。

短期記憶の例としては,初めて会った人に名前を聞き,その場所では覚えているが,次の日になると忘れてしまっているような記憶が短期記憶です。 自転車の乗り方や,自分の家の電話番号や住所など,一度覚えたら忘れることのない記憶が長期記憶です。

短期記憶は,記憶できる時間が約20秒間と,大変短いのが特徴です。記憶できる量も限られていて,人によっても違いますが,大体一度に記憶できる量は7±2まで(5から9)だといわれています。この事実は心理学者ジョージ・ミラーによって発見されました。7±2という数はマジカルナンバーと呼ばれています。

短期記憶の情報は時間の経過とともにかならず忘れてしまいます。しかし短期記憶を長期記憶にしていくことができます。長期記憶は時間が経過してもなかなか忘れることはありません。短期記憶の内容を何度も確認することにより,短期記憶は長期記憶になります。友達の家の電話番号など,よく電話をかけることでいつのまにかその電話番号を覚えてしまっていることがあります。この短期記憶から長期記憶に記憶を転送することを精緻化リハーサルといいます。(HM)

  

「チ」

チャンク仮説(chunk hypothesis)

 今から言う数字を覚えてみて下さい。

2,2,3,6,0,6,7,9

覚えられましたか?

 今言った8つの数字を「ただでたらめに並んでいる」と思うと覚えるのは大変です。しかし「富士山麓オーム鳴く」と語呂合わせをすると、あっという間に覚えられますね。このように語呂合わせをすると、8つの数字を「富士」「山麓」「オーム」「鳴く」と4つの単語にまとめられます。今のように、バラバラの数字や文字などを単語などにまとめること、それをチャンキングと言います。そして「富士」や「オーム」といった1つ1つのまとまりをチャンクと呼びます。

 人間が何かを短い間だけ覚えておこうとする時、7±2、つまり5から9チャンクの内容を覚えられると言われています。1つのチャンクの中にたくさんの数字や文字をつめこむほど、一度に覚えられる量が増えるわけです。

  人間の記憶についてのこのような考え方をチャンク仮説と呼びます。テスト前などにみなさんが頼りたくなる記憶術、その中にもチャンク仮説が活用されています。(SK)

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チャンクとは記憶における情報の1単位で、チャンキングとは情報のかたまりを小さくすることです。たとえば電話番号で11チャンクの0-9-0-1-2-3-4-5-6-7-8を3チャンクの090-1234-5678とする、というように使います。

このように、いくつかの要素をまとめて高次の単位に構成することを「チャンキング」、その構成された単位を「チャンク」と言いました。

人間の短期記憶の容量は、チャンク数にして7±2といわれています。例えば、個々のアルファベットf・e・s・t・i・v・a・lは7つのチャンクですが、festivalという単語にすれば1つのチャンクになります。チャンキングは短期記憶をする際に有用で、例えば、憲法の前文をノートに写す時、一字一字見ながら写すと大変だが、ある程度の意味のまとまりで写すと効率がよくなり、そのまとまりが大きくなればなるほど、写す速度は速くなります。また、長期記憶においても、チャンキングは役立ちます。例えば、鎌倉幕府の始まりを、1192年と数字を丸覚えするより、「良い国作ろう」と覚えた方が覚えやすい、数学の問題で使う公式の組み合わせのパターンを覚えてしまえば、機械的に解答できるなどです。(SH)

  

注意(attention)

注意という言葉は日常でも良く使われている言葉です。心理学の世界で注意に関する研究が行われるようになったのは20世紀中ごろになってからです。

注意には2つの側面があります。「焦点的注意」と「注意の分割」です。

焦点的注意とは、ある1つの対象に注意を集中させることに関するものです。それは、主に視覚的なもの、聴覚的なものがあります。例えば、一度にいくつかの違う情報が耳から入ってきたとき、その中からひとつの情報をうまく選択して聞き取ることができるのは、焦点的注意の働きがあるからです。

注意の分割とは、同時に生じる2つ以上の刺激のすべてに注意を向けて、同時にそれらの処理を行うということに関するものです。ここでポイントになるのが注意資源という考え方です。人間が持っている情報処理の容量には限界があり、その決まった量をいくつかに分けて情報処理を行っているというのが、注意資源の考え方です。この量が多ければ多いほど同時にいくつものことをできます。例えば、車の運転になれていない人は運転しながら会話をすることは難しいでしょう。これは、運転初心者は運転することに注意資源がかなり必要なため、会話に注意を分配できないからです。またこの注意資源は、補給されたり消費されたりするものです。そのため長時間集中するときには休憩を入れるなどして注意資源を蓄える必要があります。(YN)

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人間は,目や耳などのから入力された膨大な情報のすべてを処理しているわけではなく、生活するのに必要な情報を 選択的に処理しています。この選択をする行動が注意です。

人間の情報を処理する能力には限界があるため、注意には範囲があります。注意の範囲が広くなればそこでの情報分析能力は粗く、注意の範囲が狭くなれば詳細な情報分析がなされる、と考えられています。注意の範囲は、ストレスあるいは覚醒レベルによって影響を受けます。たとえば、ストレスが溜まっていたり、眠かったりすると注意の範囲は狭くなります。

また、私たちは特定の情報だけに注意をむけ、そのほかの情報を無視も出来ます。たとえば、大勢の人間が話をしている場所で、自分の名前だけが聞き取れた経験があるでしょう。この場合、あなたの注意は自分の名前にだけ向けられていて、そのほかの情報は無視されています。これをカクテルパーティー現象といいます。

人間の注意の状態をリアルタイムで客観的に推定することは,作業をしている場面での事故防止や作業効率の向上などに役に立ちます。現在では、脳波の状態も含めて、注意の状況を総合的に調べる研究も行われています。(TK)

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注意という語は日常的に用いられる用語ですが、心理学の立場からは、すでに今から100年ほど前に、ウィリアム・ジェームスによって説明されています。それは、『注意がどんなものであるかは、誰でも知っている。それは、同時に存在しうるいくつかの思考の対象や連鎖のうちの一つを、明白かつ鮮明な形で心にとらえることである。意識の焦点化、集中が注意の本質である。それは、ある事柄を効果的に取り扱うために、それ以外の事柄を引っ込めてしまうことを意味する。』というものです。

なかなかこれを聞いても良くわからないと思うので、ここで一つ例を挙げて説明してみたいと思います。それはカクテルパーティー現象というものです。多くの人々が集まったパーティ会場では、あちらこちらに人の輪ができて、にぎやかに談笑が行われています。会場全体がかなり騒々しさに包まれていますが、そのなかで誰かと話に夢中になっているときには、周りのほかのグループの話し声やざわめきはあまり気のなりません。また、たまたま隣のグループの話題が自分の関心事であることに気が付き、そちらで交わされている会話に耳を傾けると、急に隣の人の声が大きくなったわけでもないのに、そこで話されている内容が理解できるようになる、というものです。

この例でもわかるように、注意には2つの側面があります。ひとつは、周りの騒々しさが気にならなくなり、話している相手の声がしっかりと聞き取れるようになる焦点的注意ともうひとつは、相手と話しながらも、隣のグループの話題にも耳を傾けることができる注意の分割と呼ばれるものです。(SA)

  

長期記憶(long-term memory)

私達は生活していく中で、見たり聞いたりとあらゆる瞬間に様々な経験をし、その経験を覚えているということは、とても重要です。もし覚えることができなかったら、自分が何者なのかも分からなくなる、ということになってしまいます。つまり「記憶すること」は、私達の生活に欠かせません。

心理学の世界では、記憶を長期記憶と短期記憶と呼ばれる二種類に分け、区別して考えます。長期記憶とは、数時間から数年、数十年に渡って保持される記憶のことをいいます。

例えば、今日初めて会うAさんを知り合いから紹介されて、次の日Aさんに会った時に、「Aさんだ」と思い出す時に使う記憶は、長期記憶です。また、紹介されてすぐに、その場に来た別の友達にAさんの名前を教えるような時に使う記憶は、短期記憶です。

一般の人が「記憶」と言う時には、たいてい長期記憶だけをイメージしていると思います。しかし、人の記憶の機能はとても複雑で、長期記憶と短期記憶の二種類があるだけでなく、長期記憶をいくつかの種類に分けて考える必要もあり、その分類が記憶についての正確な理解をするうえで大切なことになってきます。(AN)

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長期記憶とは、一言でいうと文字通り、長く覚えている記憶のことです。 「記憶」という言葉は、普段は「英単語を記憶する」などのように使われます。心理学の世界での「記憶」は、普段使われているよりもっと広い意味で使われ、いろいろな種類がありますが、大きく分けると長期記憶と短期記憶の2つになります。短期記憶は、ほんの一瞬から長くて1分くらいは覚えているけれど、それ以上たつと忘れてしまうという記憶です。長期記憶は1分以上から何十年と覚えているもので、理屈の上では永遠に忘れないといわれています。

例えば、最近やった数学の問題を思い出してみてください。新しい公式はノートなどを見直さないとわからなくても、かけ算のやり方など小学校のときから何度も使っているものは、ほとんどの人が何も見ずにできると思います。このとき、新しい公式は短期記憶、かけ算のやり方は長期記憶だということができます。くり返し使うことで忘れなくなる、というのも記憶の特徴のひとつで、新しい公式も何度も使っていけば覚えられることになります。また、かけ算のように、意識的に思い出さないけれど日常的に使用しているというものは、長期記憶の中でも特に潜在記憶と呼ばれます。

こうして例をみると当たり前のことのように思えますが、当たり前に思えることもしっかりとしたデータに基づいて確かめる、というのが心理学の基本的な姿勢です。(BT)

  

調節(accomodation)

 調節とは、人間の発達において、心理学者ピアジェが提唱したものです。

 ピアジェは、人間の発達を、シェマの同化と調節と考えました。シェマとは、認知的枠組みとも言われ、簡単にいうと、自分が存在している環境に適応するために、それぞれの人がもっている認知的な構造のことです。同化とは、自分のシェマに合うように情報を変化させて取り入れることを意味し、今日のテーマである調節とは、いまもっているシェマを修正することをいいます。かたい言葉だと難しいので、今回は例として、ウィンタースポーツのスキーを例に紹介します。

 始めてスキーを体験する人は、テレビでみたりしたスキーのイメージなどをもとにして何とか滑ろうとします。つまり、今もっているシェマで、なんとか「スキー」という初めての状況に対応しようとします。これが同化です。でも、今もっているシェマではどうにも滑れないため、なんどもこけたりしながらも、徐々にこつをつかんでいきます。この状況はつまり、「スキー」という慣れない環境に対してシェマを修正している状況であり、これが今回のテーマである「調節」になります。その後、中級者、上級者コースへとスキルアップしていくときにも、同様に、同化と調節が行われていきます。(KJ)

  

直接記憶範囲(immediate memory span)

 1回にどれくらいの量の記憶ができるのかという能力の限界を「直接記憶範囲」、または「記憶範囲」と言います。

 ここで問題です。次に読み上げる数字を覚えてください。「5、7、8、6、3、4、1、9、2」覚えた数字を順番どおりに書き出してみてください。いくつまで正しく言うことができますか?

 このように、数や文字や図形の系列を1つずつ読み聞かせるか見せるかして、すぐに再生させ、間違えずに再生できた最長の長さを記憶範囲としています。記憶範囲には個人差・年齢差があります。ミラー(Miller, G. A.)は大人では7±2、つまり5~9の記憶範囲があることを明らかにしました。記憶範囲はチャンクという意味のあるかたまりにすることで増大し、まとまりの数で言ってもやはり7±2が限界であるとされています。このことから7を記憶のマジックナンバーと呼んでいます。例えば、人に何かの説明をするとき、説明したいことを5つ以下に絞れば覚えてもらいやすくなるでしょう。

 また、記憶範囲の平均は5歳児で4、7歳児で5、12歳児で6、と年齢とともに増加していきます。(KM)

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 突然ですが、今から言う数字を順番通りに覚えてみて下さい。「9,3,6,0,9,1,7,4,5」。そして覚えた数字を口に出してみて下さい。何桁まで正しく言うことができますか?

 数字や文字を1つずつ聞かせたり見せたりして、すぐにその覚えたものを口に出したり書いたりしてもらいます。そうして間違えずに思い出すことのできた列の長さを直接記憶範囲と言います。つまり、先ほどの数列で1まで思い出せた人の直接記憶範囲は6となります。

 ミラーは直接記憶範囲は7±2、つまり5から9であると発表しました。

 この時、いくつかの数字や文字をひとまとまりにしたものを単位にして7±2を数えることができます。つまり「1,1,5,7,9」を「1,1,5(いい子)」、「7,9(泣く)」と区切れば2かたまりと数えられます。3つの数字を1かたまりにすれば、15桁から27桁の数字を覚えることができるのです。携帯電話の番号を覚える時などに活用できますね。(SK)

  

直観像(eidetic imagery)

直観像とは、映像を見たまま写真に撮るように記憶する能力の事です。対象が消えた後も鮮明にイメージを思い浮かべる事ができ、細部の様子まで詳しく述べる事ができます。通常は成長するに従って失われていく能力ですが、成人でもこの能力を持っている人もいます。(HA)

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 目で見たことを覚えておく力のことを直観像とよびます。それは、ほとんど写真と同じくらい細かいところまで覚えておくことができ、明瞭なものです。そのような像は、昔見て覚えていて思い出せるものよりずっと細かいところまで正しく、詳しいところまで描かれることができます。(TT)

  

「ツ」

対連合学習(paired-associated learning)

単語のリストを被験者に覚えてもらい、あとから思い出してもらうといったような記憶測定の方法に、再認と再生があります。再認とは、例えば「先ほどの単語リストにサボテンは書いてありましたか?」といったように、学習した項目と学習しなかった項目とを被験者に提示し、学習時に提示した項目を指摘させる方法のことです。それに対して再生とは、「先ほどの単語リストに何が書いてありましたか?」というように言って被験者に正確に再現させる方法のことです。

再生にはさらにいくつか種類があります。思い出した順に自由に再生する方法は自由再生であり、提示された順序通りに再生する方法は系列再生です。この他に、手がかりを利用した再生があります。この手がかりを利用した再生の代表的なものが対連合学習です。

 対連合学習は、2つの項目を対にして学習し、一方を手がかりとしてもう一方を再生する方法です。例を挙げると、「peace-平和」のように英単語と日本語を対にして覚え、「peace」を提示して「平和」と答えさせるようなことも対連合学習です。ここでの「peace」のように手がかりとなる語を刺激語、「平和」のように再生させる語を反応語といいます。(SJ)

  

「テ」

手続き的知識(procedual knowledge)

知識には大きく分けて二つの種類があります。一つは、宣言的知識、もう一つは、手続き的知識と呼ばれています。

手続き的知識というのは、例えば自転車の乗り方や、ピアノの弾き方、車の運転の仕方、話し言葉によるコミュニケーションなど、習い覚えて身についた技能のことです。手続き的知識は、「もし、何々すれば何々になる」という規則の集まりですが、必ずしも言葉やイメージで他人に伝えることができるとは限らず、無意識のうちに働いていると考えられています。

一方、宣言的知識というのは、例えば「地球は丸い」とか、「りんごは赤い」といったような、誰が見てもそうであるという、事実に関する知識のことを言います。私たちは、そういった膨大な量の宣言的知識をもとに、手続き的知識を持つようになると言われています。(MY)

  

「ト」

同化(assimilation)

 同化という言葉はピアジェという人が考え出しました。同化の意味は、外の世界の事柄を自分が持っているシェマ(特定の概念を表すための知識のこと)に合わせて対象を変化させて、自分の内部に取り入れる働きをいいます。これは、子供の知的発達において重要な働きをしています。

 例えば、中学校に入学すると小学校までの生活とはかなり違った生活になりますよね。勉強が大変だったり、本格的な部活動を始めたり、と。今まで知らなかった世界でも私たち人間は徐々に適応していきます。今まで積み上げてきた知識を使い、新しい世界をうまく自分の中に取り込んでいくのです。同化の他に、調節という働きもあります。これは、新しい世界をうまく自分の中に取り入れられなかったとき、自分の中の知識を修正して、その世界に適応していこうという働きです。この同化と調節という機能を使って人間は成長・発達していくのです。(HK)

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ピアジェの認知発達理論によると、乳児が既存のシェマ(スキーマ)を使って新奇の事物や事業を理解する過程。ピアジェは子供達に外界に対し実験を試み、結果として何が生じるのかを探った。その結果、子供はシェマを構築する、すなわち、既存のシェマに合わせて理解しようとする。もし古いシェマがこの新しい事象に上手く同化しなかったら、有能な科学者のようにそのシェマの修正を試みる。それゆえ、外界関する理論は進展していく。(OC)

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発達心理学者であるピアジェは、子どもを「好奇心豊かな科学者」と表現し、その子どもは環境へ積極的に働きかけ、シェマを形成していくとしました。シェマとは、心の中のモデルを言い、学習などの経験を通じてできた、物事に対する理解や概念を示します。新たな物事に出くわしたとき、子どもは既にもっているシェマを使って、それを理解しようとします。ピアジェはこの認知過程を同化と名づけました。(KJ)

  

統制処理(control process)

 普段よく聞く言葉や、自分の趣味などに関する言葉は、あまりよく考えなくても理解したり、納得したりすることができます。しかし一方で、ほとんど聞くことがない、あるいは初めて聞くような言葉の場合は、そう簡単に理解することはできません。自分が既に知っている言葉や知識の中から、似ていると思われるものを探してみたり、先生や友達に聞いてみたり、辞書で調べたりして、ようやく理解することができます。よく知っている言葉のように、意識的な努力をしなくても入力される情報を自動的に処理することを自動処理と言います。そして初めて聞く言葉のように、意識的な努力や注意力が必要となってくる情報処理を統制処理と言います。

 自動処理によってすんなりと理解できるのは、その言葉を何度も何度も繰り返し見たり使ったりした経験があるためです。それに比べると、知らない言葉、また知っている言葉でも、それをいくつか組み合わせて意味の通る文を作り上げるのには、大きな負担がかかります。こちらは統制処理にあたります。新しい言葉に出会ったら、その言葉と共に、文法の知識やどんな文脈で使われていたのかを記憶しておけば、言語処理全体がとても楽になるのです。(KM)

  

トップダウン型処理(top-down approach)

私たちが見たり、覚えたり、考えたりすることを、情報処理過程として理解するときには、異なるタイプの処理過程を区別することが必要です。

その処理過程は2つに分けることができます。それはボトムアップ型処理と呼ばれる処理過程とトップダウン型処理と呼ばれる処理過程です。

トップダウン型処理というのは、見たものや聞いたものからの情報によって、低次なレベルからより高次なレベルへと情報処理が進むボトムアップ型処理とは異なり、私たちがすでに持っている知識や経験、期待によってなされる情報処理であり、概念駆動型ともよばれます。

例えば 「TДE CДT」 という文字を見たときに前半のДをHに、後半のДをAに読むのはトップダウン型処理です。

実際に私たちが認知するときには、トップダウン型処理とボトムアップ型処理の2つの過程が互いに補うように生じています。(YA)

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人間の脳はコンピュータのように、見たり聞いたりした情報を処理します。そして、私たちはその情報を理解したり解釈したりします。

概念駆動型処理とも呼ばれるトップダウン処理とは、人の記憶や知識をたよりに情報を解釈する仕組みです。例えば、お土産をもっていったときに、「つまらないものですが」と言うのをよく聞きますが、受け取る方は本当につまらないものだろうとは思いません。これは、日本人にはそのように謙虚にものを言う文化があることを、もともと知識として持っているからです。

また、目の前のできごとを、知識や記憶からできる期待や予測に、うまく合うように理解したりもします。

これとは反対の仕組みが、ボトムアップ処理で、データ駆動型処理とも呼ばれます。文字や音声などのそのままの情報をもとに全体を理解する仕組みです。例えば、「文字を見る」→「単語を理解する」→「文を理解する」→「文章を理解する」という段階をとります。

私たちはこの2つの仕組みを使って、目の前の情報を処理し理解しているのです。(YA)

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人間の能動的な情報処理にはトップ・ダウンアプローチとボトム・アップアプローチと言った2種類の仕組みがあり、これらは情報処理の方向性を表します。

トップ・ダウンアプローチ(処理)とは、 私たちが、すでにもっている知識やその時々に頭に思い浮かんだ期待や仮説などの考えを先行させて、見ているもの・聞いている音・読んでいる文を理解する方式のことで、概念駆動型処理とも呼びます。すなわち、高次の水準にある概念や理論などから動かされ、入力データを予想や仮説、期待などのもとに処理していくもので、人間の記憶に依存することが大きい処理方法です。

トップ・ダウン処理とは、もっとわかりやすく言うと、高いレベルの情報が低いレベルの情報に影響を与える処理のことで、トップ・ダウン処理においては予想することが大きな役割を果たします。例えば授業中に居眠りしたとしても、予習などによって授業がどう進むのかがわかっていれば、次の要点はわかるのです。また、このトップダウン処理を読み方で考えてみると、テキストに書かれている1語1語の意味よりも、書き手の意図やテキスト全体の意味により注意を払いながら読みを進めていく読み方であると言えます。読解力の優れた学習者は、このようなトップダウン処理的な読み方をする傾向があると言われています。(KJ)

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もともと持っている知識、文脈、記憶、行為経験・動機などを助けにして、頭の中でイメージすることで、物事を考えるというやり方。

例えば私達が、犬が吠えているのを見て「犬が吠えている」と考えるのは、知識や記憶、経験から、今目の前にいる動物が犬という名前で、「わんわん」と発する声が、犬という動物の鳴き声である、と知っているからである。

このように、外からの刺激に対して、知識などの助けを借りて頭の中でイメージする方法をTop-Down Approachと呼ぶ。(AH)