センセーの呪縛 | ひよこまめのKellogg MBA徒然日記

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2010年7月からNorthwestern University - Kellogg School of ManagementのMBAプログラムに留学する日本男児が、徒然なるままに綴る日記です。

シカゴから中国に向かう飛行機の中でこのブログの草稿を書いている。『14時間のフライト』と聞くとかつてはゲロゲロ、と思ったものだが、意外な程に慣れている自分に気づく。ひたすら寝て、眠れないならなんか作業をする。すぐに14時間がたつ。ううむ。何事も慣れ、でございます。

閑話休題。

Kellogg に入学するタイミングとほぼ同じくして、新入生は360-Degree Leadership Assessmentという評価を受ける機会がある。Leadershipという名を冠してはいるが、要はこれは前職でご一緒させていただいた上司・同僚・部下に対し、『この人の振る舞いについて評価してください』という風にお願いするもので、自分の振る舞いが職場で周りからどのように見られていたのかを知る、貴重な機会である。各質問項目については自分自身の評価も記載するので、周りの評価と比較することで、認識ギャップも把握することができる。

このAssessmentの中に、『この人はどの程度効果的に他者とコミュニケートしているか』という項目があった。僕は自分自身に対する評価として、『知識はともかく、うまく他の人とコミュニケートできることが自分のバリュー』などと思っていたので、5段階評価の4を自分の評価として与えた。まぁ、こんなもんかな、別に5でも良いけど、位の気持ちで。

結果を見て驚愕した。周囲からの平均点は3。要はあんたのコミュニケート能力なんて、普通レベルでしかないですよ、ってことだ。さらに驚きだったのが、定性的な評価としてのコメントの中にあった『時々、何を言っているのか分からない』『意見を聞いているようで、実は自分の意見に固執している』というコメント。がっびーん。

正直、かなりたじろいでしまったのであるが、たじろいでばかりもいられないので、原因を分析することにしてみた。内発的要因・外発的要因の両方から。

内発的要因については、僕がもともと理論的に話をするのが得意でなかったり、頑固だったりすることが要因だと思うので、これは少しずつ修正していくしかない。自分では人の話を聞いた上で、それを整理して話をする、ってのを心がけていたつもりだったけど、十分じゃなかったってことで。30歳になってこういうことにリスクフリーな状況で気づけるのも、MBAの大いなる価値ですな。

そして外発的要因について考えたときにふと思い当たったのが、表題の『センセーの呪縛』だった。会計士センセーとして、僕は今まで基本的に相手に話を聞いてもらえる環境で仕事をしてきた。それは、話の内容の同一性(会計士センセーが付き合うのは、基本的に会計のお仕事をされている方で、トピックについては合意が取れている。『何の話ですか』について、合意をとる必要は基本的にない)も理由だし、立場の話(何しろこっちはセンセーだ。センセーの話を聞くのは当然だ)も理由になると思うが、たぶん、無意識のうちに『センセー的語り口』で話をする方法が身についてしまっていたのだろうと思う。

『センセー的語り口』は、話者の知識と立場の絶対の優位性を前提にしている。話者であるセンセーのいっていることが分からないということは、聞いている側がセンセーよりバカであるためであり、センセーが悪いということを意味しない。また、センセーは聞いている側に分かってもらう努力もする必要はない。だってセンセーのほうがえらいんだから。要は、相手が分からない場合は聞き手が悪いのであって、話者が悪いわけではない、と考えるのが『センセー的語り口』である。一般的に分かりやすい例で言うと、死ぬほど眠くなる大学教授の講義。あれだ。

僕は、この『センセー的語り口』を唾棄すべきものとして、自分だけはそうなるまい、と気をつけていたのであるが、知らぬ間に自分もそうなっていたのだろうと思う。無意識のうちに、相手にわかることを強いる態度に。無意識のうちに、自分が言ってることは正しいと思っている態度に。しかも知らぬ間に、それでも『自分はコミュニケーション力がある』という風に勘違いするまでに。なんとまあ。僕はここでも、骨の髄まで『会計士センセー』であったわけだ。はぁ。

MBAに来て、良くも悪くも内省する機会が多く、こういう『自分のだめさ』加減に気づかされる機会が多い。こういう事実に気づける自分を幸せだなぁと思う一方、情けなくてがっかりする。MBA留学を目指している皆さん。MBA留学って、決してかっこいいもんじゃないですぜ。まぁ逆に、かっこよくいられる人がいたとすれば、その人って何かしら見落としてるんじゃないかと思うけど。