「「その手、どうしたの?」わたしが聞くと、「いや、去年の十二月に電気鋸で切ってしまったんですよ」斎藤さんは、白い包帯をかばうようにしていいます。切断した指は三本。右手の人指し指、中指、薬指の第一関節からすっぱりと切り落としてしまったのだそうです。そのときは二月でしたから、怪我をしてからすでに二ヵ月。傷口は落ち着いているということです。わたしは彼の右手をとって、両手の掌ではさみました。もちろん、そのときには、指が生えてくるなどと思っていたわけではありません。痛みがなくなればいいというくらいのつもりでした。ところが、その次の日、斎藤さんから電話があったのです。「先生、傷口は治って落ち着いていたんですが、昨日、夜中にすごくうずきましてね。包帯を解いてみると、縫い目だったところが切れて、出血しているんですよ」そんな電話でした。わたしは、なんとも返事のしようがありません。病気なら治療することも可能ですが、切断してしまった指はとかげでもあるまいし、どうすることもできません。斎藤さんの指先に具体的な変化が起こったのは、それから一ヵ月後でした。そのときは、わたしと一緒に千葉の清澄寺にお参りに行くことになっていたのです。車のなかで、斎藤さんはこういいました。「先生、指の先がどうもおかしいんですよ。なんだかむずむずして、小さな突起みたいなものが出てきたんですよ。ぜひ見てください」正直なところ、わたしはそのとき、あまり見たいという気がしませんでした。まだ食事前でしたし、そんなときに傷口なんか見たくなかったのです。「いいよ。しまっときなさい。見たくないから」ちょっと冷たいかなとは思いましたが、正直にそういったのです。しかし、斎藤さんはすがるような目でわたしを見ます。その気迫におされて傷口を見せてもらうことにしました。包帯を解くと、すでにきれいに治っていた傷口の先が赤く腫れています。そして、中指の先に、ちょうど鬼の角のように二本の小さな突起物があるのです。「どうしたんでしょうか?」「さあね、指でも生えてくるんじゃないの」わたしは冗談のつもりでそういいました。次にわたしが斎藤さんと会ったのは、その年の九月のことでした。「先生、驚かないでくださいよ。指が生えてきたんです」斎藤さんは、そういって右手をわたしの前に突きだします。このときばかりは、わたしも自分の目を疑いました。たしかに本人のいう通り、まったくなかったはずの第一関節から上が蘇生しているのです。爪もちゃんと生えています。ただし横から見ると、まだ指の腹のちょうど指紋をとる部分の肉が薄く偏平な形をしています。しかし、たしかになかったはずの指がそこにあるのです。「これは奇跡ですよ」斎藤さんは興奮しているようすでしたが、わたしは念エネルギーと霊エネルギーが合体すれば、そんなこともあるかもしれないと考えていました。結局のところ、斎藤さんの指先はそれからも成長を続け、翌年の二月、つまりわたしが最初に彼の指に手を当ててからちょうど一年後にはすっかり元の通りになり、左手と変わらなくなったのです。もちろん、斎藤さんが感激したことはいうまでもありません。この話は、一つの嘘もない真実です。あなたが信じるかどうかはともかくとして、世の中には、こういう不思議も存在しているのです。よく、「科学の力でも解明できない不思議がある」といいますが、この話はまさにその類なのです。斎藤さんの指が完全に元の状態に戻ってからしばらくして、わたしのところに一人の医師が訪ねてきました。斎藤さんの話を聞きつけた外科医だということです。わたしはそのお医者さんに、霊の話や念エネルギーの話などをしたあとで、逆に質問してみました。「あなたは、科学者として、こういう不思議を信じますか?」その医師は即座に答えたものです。「ええ、信じますよ。医者をやっていると、科学では説明できない不思議な現象にいろいろでくわすもんです」斎藤さんの指が蘇生したのは、彼が必死になって「指がもう一度ほしい」と願ったためだと思います。彼の願いが高級霊に通じて、そこにわたしの念エネルギーが加わり、こんな奇跡が起きたとしか説明のしようがありません。あなたが信じようが信じまいが、これはまぎれもない事実なのです。」
「霊障(れいのさわり)がわかれば奇跡は起こる!!」萩原章礼著より
感想
>よく、「科学の力でも解明できない不思議がある」といいますが、この話はまさにその類なのです。
私がこの本を読んだのは丁度20年前だが、5年ぐらい前にテレビでこんな番組を見た。
>斎藤さんの指が蘇生したのは、彼が必死になって「指がもう一度ほしい」と願ったためだと思います。
それは違うと思う。この人はすっかり諦めていたのだから。そんなスピリチュアル的な事を遥かに超えた運命のようなもの(天の配剤的な)だろう。http://ameblo.jp/hitorinomeaki/entry-11461926662.html
おまけ