今回は、You Tube にアップされた以下の
動画を、まず見ていただきましょうか…



■ まず、このお芝居の概要は…

ご覧になったとおりの三人芝居です。

11/ 1~ 6 と「SPACE 雑遊」で上演された、
劇団競泳水着劇団員による本公演(第十五回
公演)です。

・妖艶な秘書である門脇玲子役=紺野今日子さん

・ボーイッシュで短髪の陽々野暦(ひびのこよみ)役=大川翔子さん

・美人なのにちょっと野暮ったい音大生の橘さき役=川村紗也さん

です。

■ では、お芝居の設定は…

お芝居の設定は、ある有名な作曲家が亡くなり、彼の
仕事場であるマンションの一室に、結果的には上記3
名の女性が参集することになる…というものです。

門脇歴子(以下、Aと表記)は、もちろん、作曲家の秘書。

ボーイッシュな陽々野暦(以下、Bと表記)は、作曲家の実の娘。

その作曲家は妻と破局し妻の同級生であった女性と懇ろになって
しまったんですが、その女性の娘が音大生の橘さき(以下、Cと
表記)です。ただし、作曲家とその新しい女性との間に生まれた
子ではありません。

■ 三人芝居のおもしろさとは…

論理的に考えて、以下の7つの各場面、各局面が出現しますよね。
← なお、以下、A=秘書 B=実の娘 C=音大生 です。

<Case 1>=A単独

<Case 2>=B単独

<Case 3>=C単独

<Case 4>=A、B、C の3人全員が絡む

<Case 5>=A と B の2人が絡む

<Case 6>=A と C の2人が絡む

<Case 7>=B と C の2人が絡む

で、私の記憶では、確か、<Case 3>=C単独 という場面
は無かったように思いますので、6つの場面、局面が意味深、
かつ、それなりに複雑に絡み合って、観客の前で演じられる
わけです。

■ 各Case における心理的な葛藤、複雑な思いとは…

もちろん、これが、お芝居の要諦であり見所です。

いくつか例を挙げると、

○[<Case 5>=A と B の2人が絡む]関係では、  

B(実の娘)はA(秘書)に対して、「父である作曲家と男女
の関係があったに違いない…」という確信を抱いています。

○[<Case 7>=B と C の2人が絡む]関係では、

C(音大生)はB(実の娘)に対して、自分の母親がBの父親
を奪ってしまったという引け目、申し訳なさを感じています。

一方、B(実の娘)はC(音大生)に対して、父親を奪われた
怒りにプラスして、自分は才能の無さから父親の音楽の道
を歩めなかったのに、父親はC(音大生)の才能に希望を
託し、またC(音大生)自身もピアニストとしての素質が
大いにあることに、複雑かつ増幅された怒りが付加されて
いる状況です。

○[<Case 6>=A と C の2人が絡む]関係では、

C(音大生)が自分のために作曲家が書き下ろしてくれた楽
譜を仕事場に必死に探しにきたのに、A(秘書)は敢えてそ
れを妨害するような行動に出ます。

ところが、A(秘書)のその妨害行為を察知して楽譜を見つけ、
結果的にC(音大生)に楽譜を渡してくれたのは、<Case 7>
ではC(音大生)と「対立」していたはずのB(実の娘)なん
です…

などなど、登場人物三人の絡みと相互の複雑な思いの
一端を紹介しましたが、どうです、三人芝居のおもしろさ
がはじける心理的葛藤劇だと思いませんか(^_^)?

そして、最後には、「いと愛し(いとし)」というタイトル
が象徴するかのごとく、三人の間に一種の「緊張緩和」が
醸成され、かつ、女性三人三様の「心の平安」の到来を暗示
させ、このお芝居は幕を閉じたのでございます(*^_^*)

■ 上野友之さん(脚本・演出)のスゴさとは…

Perfume をプロデュースしている中田ヤスタカ氏、古くは
SPEED をプロデュースした伊秩弘将(いぢちひろまさ)氏
…等々、「女心を女以上に熟知したアーティスト」と称され
る男性は、昔から一定数いました。

今、演劇界で、「女心を女以上に熟知した演劇人ランキング」
を作成するとしたら、上野友之さんは間違いなく上位にランキ
ングされるものと、私は考えています。

梅雨時に観た(同じく上野さんの)「IN HER TWENTIES」共々、
2011年は、女性の心理の襞を丹念にトレースする秀作を観る
ことができて、演劇ファンとして幸せな年でした(*^_^*)

上野さんの次回作を、心より期待しています(^_^)v

■ おまけ

終演後は、川村紗也さんと少しお話しができました。
川村さん、ご丁寧に対応していただき、ありがとうございました。

また、このお芝居が終わった直後に、川村さんが某演劇賞を受賞
なさいました。心よりお祝い申し上げます。

なお、川村さんの受賞に関する記事は、私のブログで既にアップ
しました。ご興味のある方は、以下のURLをクリックしてみて
くださいませ。

http://ameblo.jp/hitoe-eri/entry-11078088816.html
http://ameblo.jp/hitoe-eri/entry-11079080555.html