【レポート】Ma:rchen-holic*7周年記念祭「盤上世界の征服論」@恵比寿aim | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

今回のレポートを書くにあたり、今回の主役となる彼女たちの事について今更ながら考察してみた。

まず彼女たちは「歌い手」なのか「語り手」なのか。

彼女たちのステージや楽曲の根底には「物語」の存在が欠かせない。
それも既存の物語に合わせて、楽曲を作り出す事も出来れば、逆に自分たちの物語に、既存の楽曲をなぞられるステージも出来る。
もちろん自分たちの物語を作り上げた上で、楽曲を作る事だって出来る。

更にそれは自身の表現方法にも及んでくる。
元々コスプレイヤーの畑だった彼女たちにとって衣装でそれを表現する事はお手の物。
時に映像を交え、寸劇を交え、ありとあらゆる表現方法を駆使してくる。

それが通常のブッキングライブでの持ち時間15分で表現する時もあれば、長時間のライブで長く一本の物語として表現する事も可能である。
こうしていると彼女たちの存在が色々な意味でボーダーレスになっていく……。

ステージで歌を歌う「歌い手」なのか。
それとも物語を語る「語り手」なのか。

それが彼女たち……Ma:rchen-holic*の魅力でもあり、謎に満ちた部分でもあると思う……。


そのMa:rchen-holic*がメンバーの変遷を経て、7周年を迎えた。
今年は化面狂奏戯樂のメンバーを迎えて、歌の面で、表現の面で強力なサポートを得て、更にパワーアップをしようとしていた。

果たしてMa:rchen-holic*の7周年……どのようなステージだったのか。

今回は6月18日に行われたMa:rchen-holic*7周年記念祭「盤上世界の征服論」の様子をレポート致します。

●開演前

土曜日の昼下がり。
日は照って、普通に歩いていても汗ばむ夏の陽気。

恵比寿駅から少し離れた閑静な街並の一角に恵比寿aimは立っている。

昨年の周年も行われた同会場。
少し路地裏を入った入口から地下に潜る感覚は、まるで秘密基地に誘われている感覚に襲われる。
もしかしてMa:rchen-holic*側も、こうした感覚を計算して、この会場を選んだのではないか……と勝手に想像をしてみると面白い。

こうしてやや深いビルの地下へと潜ると、そこには横幅が広いステージの会場が待っていた。
会場の後方では既に物販のためのテーブルがあるが、ステージの真ん前から、そのテーブルまでの縦はそこまで無かったように思える。

今回、Ma:rchen-holic*は集客目標を100人としていた。
(100人集めたら、この日発売予定だった新譜を無料で配布しようとしていた事からも分かる)
残念ながらその目標には達しなかったが、非常に多くの来客があり会場は開場直後から人で溢れかえり、開演直前にはいっぱいになった。

会場にいる誰もが息を飲んで、開演の瞬間を待っていた。
そして……開演時刻になり、いよいよステージが始まる……。

●本編

今回は大きく分けて、前半、後半に分かれる。
なのでこのレポートも前半、後半と大きく二つに分けて紹介していきたいと思う。

※なお今回のレポートはセットリストをほぼ割愛しています。
セットリストはりゅうきのブログにあるので、そちらを参照にするといいと思います。

○前半

物語はある部屋から始まる……。
いかにもやる気が出ない、気だるい感じ満載のりゅうき(笑)が起きたくない様子でゴロゴロしている。
そこに目の前に買った覚えの無いゲームが……。
不思議に思いつつもりゅうきはそのゲーム……「盤上世界の征服論」をスタートする。

そんな導入部からスタートする前半のステージ。
基本的にはステージの上で展開される寸劇、歌と、ステージ上手側の壁面に映されるプロジェクターの映像(=ゲーム画面)が交互に展開されていく。

りゅうきが始めた「盤上世界の征服論」はアドベンチャーゲームの形式で進んでいくが、途中選択肢が一つしかなく、その直後にゲームオーバーになるという理不尽な展開が続き(ゲームをしている)りゅうきをして「クソゲー」扱いされる(笑)
だが一度、ゲームオーバーになってコンティニューすると新たなルートが展開されるなど、このあたりの展開はかつてこの手のゲームにはまった事がある世代ならどこか懐かしさすら覚える展開では無かったかと思う。

また前半は「客演」と称しゲスト出演者も多く登場するのだが、その登場の仕方も「盤上世界の征服論」のゲーム内の「サブクエスト」の位置づけで登場するキャラクターたち……という扱いになっている。
例えばデカシャツ喫茶は物語のキーとなる紙を持っているし、FICEはあるアイテムに扮して(?)いる。
KISS and CRYの二人はとても重要なメッセージを読み上げるなど、それぞれ役目を与えられている。
(なお主にダンサーとして登場した楓、遥-yoh-はゲーム内での役目は無かったものの、Ma:rchen-holic*メンバーをバックダンサーに従えて歌を歌うという珍しい演出を実現させている)

こうしてステージと映像が交互に行きかい、サブクエストを得て多くのキーアイテムも集まり、やがて「盤上世界の征服論」も大詰めを迎えていく。
最後は客層も一緒になって謎を解いて……そして物語は終演を迎える……。

……というもの。
ちなみに「盤上世界の征服論」のゲーム内は、Ma:rchen-holic*、化面狂奏戯樂のメンバーがゲーム内のキャラとして登場。
フライヤーを見ている方は分かったと思うが、あの衣装のままゲーム内の世界のキャラクターとして存在していた。
本当ならネタバレ全開にして良かったと思うが、あの内容を再度、文章として再構築するのは骨が折れる作業なので割愛させていただいた(笑)
まぁ気になる内容については、あの日、あの場所に居た方々だけが知っている特権という事で……(笑)

ただ一つだけネタバラしすると、化面狂奏戯樂は響己、京呼だけでなく、最後は活動休止中だったメンバー・縫も登場。
前半終盤はMa:rchen-holic*feat.化面狂奏戯樂……総勢6名でのステージが展開された。


こうして一つのゲームをクリアした……という体で進んだ前半。
しかしこのゲームのような世界を一体、どこの誰が作り出した?という謎が残った……という事で後半へと突入する。

○後半

前半終了後、約30分の休憩を挟み後半がスタートする。

後半もプロジェクターの映像が壁面に流れ、物語の展開を流していく。
それは話を作るのが好きな「カミサマ」の話。
自分で話を作るのが好きだった「カミサマ」が、自分が作った話の続きが作られたり、また違う展開の話が出来ていく事に楽しみを見出していくという展開……。

そんな「カミサマ」の物語に沿ってステージは進んでいく。
しかしその進行は前半と大きく異なる。
前半がゲームのような映像美を映し出したのに対し、後半で映し出される映像は、物語の筋が文字で淡々と綴られていくにとどまっている……。

そして……圧倒的にステージの上での時間が多くなっている。

後半は物語の筋に影響して大きく分けて3つに分けられるが、ほとんど息をつく暇がない展開である。
ここは前半と違いMa:rchen-holic*feat.化面狂奏戯樂のメンバーのみの構成である。
だが6人のメンバーが楽曲によってメンバーを変え、立ち位置を変え、人気のオリジナル楽曲も、良く聴くカヴァーも交え、次から次へと目まぐるしくステージが変遷としていく。
合間、合間では衣装チェンジもあり、ステージの上で様々な物語が散りばめられるているような感覚に陥った。

基本、後半のステージも彼女たちが表現したい物語を表現する上で、欠かせないピースであるのは間違いない。
しかし物語の展開を抜きにしてステージを語ったとしても、非常に見応えのあるステージが展開された。
ここにMa:rchen-holic*feat.化面狂奏戯樂が目指した、物語とステージの融合……彼女たちが目指したステージの理想形があったように見受けられる。

やがて物語は進んでいき、徐々に物語の主……「カミサマ」の正体がおぼろげではあるが見えてくる……。
果たして前半のようなゲームのような世界を作った「カミサマ」の正体とは……。

……と、今回の物語の核心に迫ったところで、後半もいよいよ終局に向けてクライマックスとなっていく。
それまで楽曲によって出たり入ったりしていたMa:rchen-holic*feat.化面狂奏戯樂のメンバーが6人勢揃い。
こうしてラスト「Ender's Neverland」を熱唱!
前半、後半合わせて5時間近く行われた7周年記念祭は無事終了……するはずが無かった!(笑)

ちょっとした客層同士の打ち合わせ(笑)の後「アンコール」の掛け声が発生。
「アンコール」の声に応えるよう、Ma:rchen-holic*feat.化面狂奏戯樂のメンバーが再び登場!
それぞれのメンバーのパーソナルカラーに合わせたバラの花が客層から贈られて、相当疲れているにも関わらず嬉しそうな笑顔を見せた。

そして本当の本当のラスト……「空想旅行団」で会場と一体になった形で大団円。

あっという間のようで、非常に濃密な長時間に渡る「7周年記念祭」はこうして幕を閉じた……。

●総括

まず今回のライブをレポートにしようとして思ったのが、いかに文章にしてこのステージの興奮を伝えるかが難しいという事だった。

Ma:rchen-holic*の世界観は物語というか、そういうものに溢れているはずなので、文章にして伝えるのが本来一番、ストレートに伝わるはずなのである。
しかしそこに歌、映像、色んなものが複雑に絡んでくる……。
視覚、聴覚はもちろん、その場の「空気」などを感じる嗅覚などの感覚もフルで動員する事になる。
それ故、文章だけで表現する事の限界を今回は感じたライブイベントだった。

ただ前半と後半は似たような構成ながら、まったく毛色の違うライブイベントに出来上がっている。
特に前半のゲーム的な構成はこれまでのMa:rchen-holic*では出来ない構成だったのは間違いない。
これまで彼女たちが持っていなかった映像の力というのを、効果的に演出したのが、今回のゲーム的な構成であったと思う。
もっともこれまでも映像を用いる手法は多かったが、ここまで映像がメインで使われるようなステージはこれまで無かった。
それを可能にしたのは化面狂奏戯樂の一員でもある京呼の力が非常に大きいのは、伝え聞いているところである。
後半は逆にこれまでのMa:rchen-holic*の世界観に近いステージ。
従来のファン層はどちらかというと、後半の構成の方に親しみを覚えたかも知れない。
また後半のステージの上で展開された物語の流れは、実は後半単体でも十二分に通用するものとなっている点は見逃せない。
今回、メインで見せたかったのは前半かも知れない(実際、フライヤーで強調していたのも、イベントサブタイトルも「盤上世界の征服論」になっていた点からしても)
だけどMa:rchen-holic*の本来の性質は後半に凝縮されていたと思えるのである。

また純粋にステージの面を見ても、これまでほぼほぼ女性オンリーだったMa:rchen-holic*に化面狂奏戯樂の三人が加わる事で非常に幅が広がったのは確かである。
響己はFICEなどでもコーラスでの実績もあり、音色に幅がかなり広がった。
京呼、縫の男性ヴォーカルはこれまでMa:rchen-holic*だけでは引き出せなかった楽曲の音域や魅力を引き出すのに一役買ったのは間違いない。
特に後半で歌った京呼、縫による「少年希望論」はその最たる例だったと思う。
もちろんMa:rchen-holic*のメンバー三人も従来の楽曲、新曲においても多くの見せ場が数多くあり、従来のファン層も非常に満足がいく出来となっていた。

特に後半は楽曲と楽曲の間のスパンが短かったのと、メンバーが入れ替わり立ち代わった影響もあってか、曲数の割りに時間が非常に短く感じた。
実際は後半も2時間半近く費やされているのだけど、それを感じなかったあたり、非常に濃密な時間が流れていたと……振り返って思う次第。
 
上記のような理由から今回のライブイベントはほぼ満点に近い出来だった。
そういう意味では発売予定だったNEWアルバム発売が間に合わなかった事が、唯一残念であり、余計に悔やまれる。
この点については、事前に各所で謝罪をしていたけど、これだけいいステージを観た後で今回、ステージで披露した楽曲が多く入った音源がその場で入手できなかったのは痛恨だったかも……。
「鉄は熱いうちに打て」……ではないけど、このステージの感動、熱気が冷めないうちに、音源で再び彼女たちの歌声が聴く機会が少し間延びしてしまったのは残念だった。
(逆に言うとそれだけいいステージをした裏返しでもあるのですが……)

ただ総じて非常に素晴らしい構成で最初から最後まで魅了してくれた、Ma:rchen-holic*feat.化面狂奏戯樂。
これからの6人の活躍は大いに期待したいところであります。


しかしながら自分は今回のステージで、ますます分からなくなった事が一つだけある……。
果たして彼女たちの存在は……

ステージで歌を歌う「歌い手」なのか。
それとも物語を語る「語り手」なのか。



それともそのどちらでもない、新たな表現者たちなのか……。

その答えはきっとこれからずっと先……まだ真っ白なページの物語の続きで語られる事なのかも知れない……。