【舞台観賞】「それいけ!邪馬台国」(CAPTAIN CHIMPANZEE) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

9月の観劇ツアー第2弾!
……なんですが、インディーズアイドル業界の方が忙しくてねぇ(笑)
21日にはあの「二ヶ月に一度のライブバトル」もありましたし……。

……と、演劇関係者には関係ない余談を申しても「なんのこっちゃ!?」なので割愛。
しかしこの21日より後に見ると、恐らくまともな感想が書ける自信が無かったので、初演が行われた9月19日にお伺いしました。

今回、観劇したのはCAPTAIN CHIMPANZEE公演「それいけ!邪馬台国」という作品です。
CAPTAIN CHIMPANZEE……略して「キャプチン」さんの舞台は、今年6月の合同公演も含めれば4回目になります。
だいぶキャプチンの劇団員も顔と名前が一致する方が増えてきました。

でも本公演もお目当ては、同郷の長井柚嬢(非キャプチン)なのですが(笑)

そんな訳でこの日向かったのは、池袋のシアターグリーン。
ここは3種類の劇場がありますが、今回入場したのはBOX in BOX THEATER。
今までBIG TREE THEATERと、BASE THEATERに入場した事はあるんですが、このBOX in BOX THEATERは今回が初でした。

初めて入ったので感想を述べるなら、他二つの劇場と比べて、更に規模が小さめ。
まさに典型的な小劇場。
なのですが同じ敷地内の5階にあるので、エレベータで移動しないといけないのは意外と億劫(笑)

1階にあるBASE THEATERと、3階だけど階段を上ればいいBIG TREE THEATERと比べると不便さは否めにない。
だけど会場そのものは好きなタイプの劇場なので、この際目を瞑ろう。

さてキャプチンさんの楽しみは公演開始前にもある。
それは「ひまつぶ紙」という、いわば簡単な心理テストの用紙。
ご丁寧に鉛筆までセットで用意してくれるのだから、毎回その心配り(?)には感心させられます。

公演開始までしばしの間「ひまつぶ紙」で暇を潰し、いよいよ開演となります。

それでは簡単なあらすじでも。
今回は公演終了後につきネタバレ有りでいきます。


日本初の女性総理大臣になった姫神(白井美紀・以下敬称略)は選挙戦略の一環として、秘書官・大島(胡七瀬)を伴いお忍びである古墳に来ていた。
この古墳こそかの邪馬台国の女王・卑弥呼が眠っているとされる古墳だというのだが……。
そこに突然現れた古墳を守る鬼(上素矢輝十郎)
鬼に驚く姫神たちだが、鬼の口からこの古墳が確かに卑弥呼の古墳だと聞かされ喜ぶ……だがその直後、姫神たちは命を狙う暗殺者の凶弾に倒れてしまう。

……と思いきや、時を止めた鬼によって一命を取り留める。
しかし時間が進むと、やはり死んでしまう……。

そんな姫神たちを見て、鬼は知り合いの玄ちゃんこと玄武(尾形梓)に1800年前の日本にタイムスリップをさせる。

そして姫神たちは1800年前の日本……邪馬台国に行く。

当時、日本の中の最弱国の一つに過ぎなかった邪馬台国を舞台に長になりたてのヒミコ(池上映子)が、日本の女王となるまでの物語を描いていく。
果たしてヒミコはどのようにして女王になったのか。
そしてヒミコが伝えようとした事とは……。


そんな笑いと涙の物語。

……まずタイトルの通り、女王・卑弥呼が治めていた時代の邪馬台国を舞台にした物語でしたが、歴史が好きな人でも、そうでない人でも楽しめる作りにはなっています。
だから極端に言えば、日本の歴史を学ぶ前の小学生でも、時代背景を気にせず一つの物語として純粋に楽しめるかな……と。

いやそれはさすがに言い過ぎたか。
やはり最低限、小中学校の歴史の授業で邪馬台国を知っていないと、ちょっとこの時代背景が分かりにくいかもしれない。

ただし前述のように物語は歴史に疎い人でも楽しめると言ったように、物語の予備知識程度に歴史を知っていればいいレベル。
恐らく一般常識の身についている、高校生以上の年齢層なら十分楽しめるでしょう。
むしろ劇中に出てくる小ネタの数々の元ネタの方が、高い年齢層じゃないと分からないかもしれない(笑)

物語の展開は前半から中盤は、外敵の脅威に晒される日本の様子を主に笑いを交えながら軽妙なテンポで描いていく。
それが不思議と中盤から、徐々に感動的なストーリーに展開していく様は見事だし、非常に丁寧に描かれています。
このあたりの笑いと感動のバランスは非常に絶妙だし、キャプチン脚本の特徴の一つだと思います。

こうして全体を見ると、やや後半よりの中盤までは非常にテンポも良く見事な構成でした。
ただ後半から終盤にかけてややだれ気味。それまでのテンポのいい展開から、徐々に億劫な展開になっていきました。
決して物語の終わり方も嫌いじゃないけど、そこまで至るのが長かった。
今回に関して言えば、脚本の藤原思氏(今回から名前を戻したそうです)の言いたい事を詰め込み過ぎてしまった感も感じます。

だから個人的に印象に残っているのは中盤のシーンが多い。
特に(結果的に)中盤のハイライトといえる「ありがとう」の語源になったシーンは笑えるんだけど、凄い感動した。
却ってラストシーンでヒミコが跡継ぎとなったトヨ(上村琴)に語りかけるシーンは、多分脚本としてはこれを一番伝えたいというのが分かるにも関わらず、どこか冷静になって見つめていた自分がそこにいました。

上演時間は2時間15分。
やや冗長。もう少し短くして良かったと思う。
自分の伝えたい事を詰め込みすぎると、却って伝わらないという多少残念な結果になった感は否めません。

ただ……キャプチンさんの現実世界と物語の世界の絶妙な狭間のような空間を作り出す術は相変わらず上手いと感じます。
今回の脚本ではその塩梅、匙加減を多少間違えた程度で、まだまだ良くなる可能性はあったと思います。

もっとも私が拝見したのが初演だったので、千秋楽あたりはどうなっていたか……。
二回目を観たら、価値観が変わった舞台だった可能性はあります。
今回は多少、厳しい意見も言いましたが、基本的に嫌いなスタンスじゃないので、また観に行きたい劇団である事には変わりありません。
まぁ100点満点だとすれば、今回は80点だったと思ってくれれば、いいんじゃないでしょうかね。


さて今回の気になった出演者の方でも。

ヒミコを演じた池上映子嬢。
もう鉄板です。完璧です。この方の演技で文句を言う事は滅多な事じゃありません(笑)
この劇団の看板女優の面目は躍如しています。
でも毎回のように主役を張るのに、毎回のように印象が異なるんですよね……。
前作「グリムと田中さん」とは違い、堂々とした印象が観ていてすっきりしました。

続いてトヨを演じた上村琴嬢。
この劇団の若手のホープというのは本当に良く分かります。
少女役とか、そういうポジションを演じさせたら本当に上手いですよね。
まだキャプチンに入団して一年程度と認識していましたが、すっかりキャプチンに欠かせないメンバーになってきましたねぇ。

他にはヒミコの弟・テルヒコを演じた生沼佑樹氏のどこか頼りないけど、姉であるヒミコを支えようとする健気さが良かった。
また「グリムと田中さん」では敵役だった永野百合香嬢は、今回はヒミコの妹・ウズメを好演して乙女な一面もしっかり演じられるのに感服した。
あと個人的に塩谷和裕氏の演技が好み。2年前の「思いの鳥」でもその幅広さを褒めていた記憶はあるけど、今回もヒットだった。

それにしても木村賢氏……メインの役であるカイより、「アリの木村」さんのインパクトが強すぎ(笑)
この劇団、意外と一人二役が平気であるけど、メインの役よりこっちの方がインパクト強いとは……(笑)

あと馬の呂氏南帝(ロシナンテ)を演じた涼子嬢。あれは衣装が反則(笑)
劇中では「化け物」呼ばわりされていたけど、ただのかわいいロバにしか見えない(笑)

こうして考えるとキャプチンの着ぐるみ技術もなかなか高いなぁ(笑)
玄武の衣装も甲羅が良く出来ていた……でも尻尾が蛇になってないのは、個人的に許せない(笑)

でも一番驚いたのは、今回のお目当て長井柚嬢。
今回、彼女が演じたのはオババ……。
名前からお察しの通り、お婆ちゃんなんだけど、見事なまでの老婆メイクだった。
ポジションとしては日本各地の国々の長のまとめ役だから長老ポジションを想像して欲しい。
とにかくこれまで彼女が演じた役の数々を振り返ると、今回の役がどれだけ柚嬢にとって大いなる挑戦だったか……。
メイクはもちろんなんだけど、しがれた声に杖をつく様、立ち振る舞いなど、完璧にオババ様になりきっていた。
劇中は彼女がまだうら若き乙女である事を忘れさせるくらい、貫禄のある演技を見せてくれました。
もし彼女を知らない人が見たら、柚嬢の年齢をもっと上に見てしまう方もいたかもしれない……そう思える程のオババ様でした。
場面によっては主役級の存在感を発揮し、名脇役を見事に演じきったと思います。
本当に個人的な思い入れ抜きにしても、今作品中、一、二を争うほど印象に残った役でした。
(ちなみにもう一つ争っているのは、呂氏南帝・笑)



……という事でキャプチンも3回目になると、いいところも、そうでないところもだいぶ見えてきたような気がします。
一部、劇団員の顔と名前が一致し始めていますし、自分も徐々に常連になっているのかな?なんて思えてきます。

今回、上記で名前は出なかったけど、胡七瀬嬢が地味な役回りだったりしたのは、ちょっと面白くなかったりして(笑)

そんな訳でトータルではかなり楽しませてもらった、キャプチンの舞台。
来年2月に本公演を控えているみたいですが……どうしようかなぁ。

またちょっとしたおとぎ話みたいな、現実からほんの少し遠い世界に旅立ちたくなったら、お伺いする……かもしれません。


・CAPTAIN CHIMPANZEE・公式サイト↓
http://capchim.com/