愛、勇気、希望―――世界が泣いた、永遠に語り継がれる物語

1985年の初演以来、ロンドンで27年間にわたり上演が続き、今なおロングラン記録を更新し続ける『レ・ミゼラブル』。世界43カ国、21カ国語に翻訳され、6000万人を超える観客を動員しているこの作品は、まぎれもなく世界で最も愛されているミュージカルの最高峰だ。本作は、その舞台の興奮と感動を、超一級のキャストとスタッフの手によって丸ごとスクリーンに封じ込めて完全映画化。舞台版をこよなく愛するファン には歓びを、舞台を見たことのない観客には驚きを、そしてすべての人々に生涯忘れられない映画体験をもたらす至高の感動作だ。

原作は、文豪ヴィクトル・ユゴーが1862年に発表した大河小説。150年の時を経ても、現代の私たちにも通ずる物語は、格差と貧困にあえぐ民衆が自由を求めて立ちあがろうとしていた19世紀フランスを舞台に展開する。主人公のジャン・バルジャンは、パンを盗んだ罪で19年 間投獄された男。仮釈放されたものの生活に行き詰まった彼は、再び盗みを働くが、その罪を見逃し赦してくれた司教の真心に触れ、身も心も生まれ変わろうと 決意。マドレーヌと名前を変え、市長の地位に上り詰める。そんなバルジャンを執拗に追いかける警官のジャベール。そして、不思議な運命の糸で結ばれた薄幸 な女性ファンテーヌ。彼女から愛 娘コゼットの未来を託されたバルジャンは、ジャベールの追跡をかわしてパリへ逃亡。コゼットに限りない愛を注ぎ、父親として美しい娘に育てあげる。そんな 中、パリの下町で革命を志す学生たちが蜂起する事件が勃発し、誰もが激動の波に呑まれていく…

自分を偽る生き方を強いられながらも、人としての正しい道を模索し、波乱万丈の人生を歩むバルジャン。彼の心の旅を軸に多彩な登場人物の運 命が交錯するドラマは、絶望的な環境にあってもよりよい明日を信じ、今日を懸命に生き抜く人々の姿をリアルなまなざしで描き出す。その中心にあるのは、 様々な形で表現さ れる「真実の愛」だ。離れて暮らす娘コゼットを思いやるファンテーヌの母の愛。バルジャンがコゼットに注ぐ無償の愛。コゼットのバルジャンに寄せる無垢な 愛。コゼットと恋人マリウスの間に通い合う純愛。いくつもの愛のエピソードが、見る者の感情を揺れ動かし、忘れがたい名場面の数々を作り出していく。とり わけ胸に迫るのは、バルジャンとコゼットの血のつながりを超えた父娘の絆のエピソードだ。苦悩と葛藤に満ちたバルジャンの人生が、コゼットの存在によって 報われ、未来へとつながっていくことを物語るラストには、誰もが涙を誘われずにいられないだろう。



舞台・映画の枠を越えて、超一流のキャストとスタッフが集結し、キャストには、これ以上は望めない豪華な顔ぶれが揃った。全ての役者がオーディションを受け、役を手に入れたという。本年度アカデミー賞には8部門ノミネートされた。(作品賞、主演男優賞、助演女優賞・歌曲賞♪Suddenly、衣装デザイン賞、メイクアップ賞、美術賞、録音賞

ジャン・バルジャンを演じるのは、『X-メ ン』などの映画 スターであると同時にトニー賞に輝くミュージカル・スターとしても活躍するヒュー・ジャックマン。本年度アカデミー主演男優賞にもノミネートされたが、彼 自身の優しくおおらかでマッチョなイメージは、バルジャンそのもの。当たり役ともいえる納得の演技・歌唱を披露してくれる。宿敵ジャベールには、『グラ ディエーター』のアカデミー賞スター、ラッセル・クロウ。この役は「悪役」というイメージがあったのだが、彼はジャベールを敬虔で純粋、職務に忠実で不器 用な男に作り上げ、非常に印象に残った。この役作りは繊細な演技が可能な映像だからこそ可能なアプローチなのかも知れない。コゼットには、『マンマ・ミー ア!』のアマンダ・セイフライド。マリウスが一目惚れするのも納得の瑞々しく輝くばかりの美貌。そして、コゼットの母ファンテーヌには『プラダを着た悪 魔』のアン・ ハサウェイが扮し、見事な演技、歌唱を披露。夢やぶれた女性の張り裂けそうな想いを熱唱する。彼女の美しく大きな瞳が、語らずともファンテーヌの切ない心 情をあらわして涙を誘った。
監督は、『英国王のスピーチ』でアカデミー賞監督賞を受賞した名匠トム・フーパー。製作には、舞台版の生みの親でもあるキャメロン・マッキ ントッシュが名をつらねている。製作陣がこだわったのは、すべての歌を実際に歌いながら、生で収録する撮影方法。役者の感情のほとばしりがそのまま歌声と なって溢れ出し、ミュージカルならではの醍醐味と、映像だからこそ挑戦できた繊細な歌唱表現を堪能させてくれる。
スーザン・ボイルのカバーで有名になった「夢やぶれて(I Dreamed a Dream)」をはじめ、「ワン・デイ・モア(One Day More)」、歌唱でとりわけ秀逸だったのが、「オン・マイ・オウン(On My Own)」を歌った
エポニーヌ役の22歳の新星サマンサ・バークス。天才あらわる、だ。他にも「民衆の歌(The People's Song)」など、心揺さぶる名曲ぞろいのミュージカル・ナンバーは全曲完全網羅。
生きるのが難しい時代だからこそ輝きを増す人と人の絆。誰かのために生きることの尊さ。困難に立ち向かっていく勇気と、希望を持つことの大切さ。それらを高らかに謳いあげた『レ・ミゼラブル』― いまの私たちが心から欲し、共感できる映画がここにある。 哀しみの中を生き抜いた彼らは、希望を胸に明日へと進む



《参考資料》

映画『レ・ミゼラブル』公式サイト

http://www.lesmiserables-movie.jp/

Murray Perahia

 

Songs without Words

 

Mendelssohn

Schubert/Liszt

Bach/Busoni

 

 

ペライアの初来日は1976年のことだったが、このときは体調が悪く練習を控えていたが、完全主義者の彼はホテルの部屋にこもってひたすら練習にあれくれた。そしてステージでは大胆に旋律を歌わせるモーツアルトを披露したが、これが酷評のもととなった。心を痛めたペライアは以後日本から遠ざかることになる。再来日は15年後の1991年春のこと。欧米では完全にチケットがソールドアウトになるピアニストとなっていた。この15年間に、結婚をし二人の子供に恵まれた。この環境の変化が彼の精神的な安定をもたらしたと考える。

 

今回の演奏は驚異的な集中力に富み繊細で叙情的な資質により磨きがかけられて、巨匠のなに恥じない名演奏となっている。

 

無言歌とは、一般的に歌詞を持たない歌を意味し、親しみやすい歌曲を思わせる旋律が中心になっている。メンデルスゾーンの無言歌は、彼がロンドン滞在中に書いたロマン的な性格を持つ曲集で、歌謡的な旋律とシンプルな伴奏からなり、タイトルはおそらくメンデルスゾーン自身によるものではないかと考えられている。

メンデルスゾーンは折に触れて、家族や友人に短い旋律を添え手紙を送り、それらをまとめて曲集とした。全48曲からなり、感情表現、独創的な伴奏部、主題の創意工夫などにメンデルスゾーンの特徴が表れている。豊かな詩情と愛らしさ、のどかな気分に包まれた曲が多く、絵を書くことが好きだったメンデルスゾーンの美意識がかいま見えるようだ。

 

リストは1837年から38年にかけて、シューベルトの歌曲の編曲を行い、ピアノ作品として新たな息吹を与えた。このCDの演奏では特に「遠い地で」のさすらい人の境地を深い共感とともに演奏している。

 

ブゾーニの編曲によるバッハのコラールは、「目を覚ませと呼ぶ声が聞こえる」、「来れ、異教徒の救い主よ」、「喜べ、愛する信者よ」、「主イエスキリストよ、われ汝に呼ばわる」の4曲の信仰にみちた印象的な演奏である。

ベートーヴェンの交響曲第9番。横浜に住み始めた4年前から毎年、年末になるとコンサート会場に足を運んでいたのだが、5年目にして初めて第九を歌うという機会に恵まれた。もちろん、ステージに上れるほどのレベルには到底達していないし、そもそも前以て練習をしていなかったので、合唱団として歌ったわけではない。ただ、第九は知っている。ドイツ語も大学1年生のときに習ったなーなんて、そんな程度。それでも、こんな第九素人同然の私でも、一流指揮者に一流オーケストラの演奏で第九を歌える機会があったのだから驚いた。おまけに、指揮者が長年ファンである西本智実さん。こんな貴重な機会はまたとないだろう。

 演奏会当日。昼過ぎからリハーサル開始。実は、合唱練習は夏ごろからあったらしいのだが、演奏会の情報を得たのが11月…。その後もなかなか予定が合わず、結局当日のみの参加になってしまった。リハーサルは、初めに第1楽章から第3楽章まで通しがあったので出番まで待機。やっと第4楽章、歌える!と思ったら、男性の方がステージに上がってきて約10分の発声練習。そして西本さんによる指導、約15分。想像していたよりもあっという間にリハーサルは終わってしまった。

 やがて、いよいよ本番。リハーサルのときはがら空きだった席がぎっしりと埋まっていた。さすがは第九、やはり満席。席は3種類に分かれており、聴く専門の人、合唱団ではないけど本格的に歌いたい人、そして、私のように本格的には歌えないけど歌ってみたい!人とそれぞれ席が設けられていた。そんな私は、第1楽章から第3楽章までは席で演奏を聴いていた。西本さん、やっぱり素晴らしいなぁ。なんて余裕で構えていたら、第4楽章、終わってしまった。準備不足なりに頑張って歌ったけど、あれ、4楽章ってこんなに短かったっけ?楽譜を追うのに必死で、いつも聴いていた第4楽章よりもずっと短く感じられた。それでも、ソリストの方達の歌声は圧倒させられたし、西本さんの指揮で多くの見ず知らずの人達と歌った第九は、とても貴重な経験になった。さらに、ちゃんと歌えるようになって、あわよくばステージで歌いたいと、そう思わせてくれた演奏会だった。


Vladimir Horowitz

Schumann

 

【収録曲】トッカータ、子供の情景、クライスレリアーナ

 

収録されている演奏はどれも名演ですが、特にクライスレリアーナを取り上げます。私がこのCDを手に取ったのは、クライスレリアーナを勉強するにあたって色々なピアニストの演奏を聴き比べる為でした。他に、イヴナット、アルゲリッチ、ウラディミール・アシュケナージ、アンドラーシュ・シフ、伊藤恵さん等の演奏を聴きました。その中でのホロヴィッツの演奏を最初に聴いたとき、「もっと良い演奏が他にあるかも」と正直思いました。しかし、色んなピアニスト達の演奏を何度も繰り返し聴くにつれ、気がつくと私の耳はホロヴィッツの音を求めるようになっていました。決して器用には聞こえない演奏。不器用とも聴こえる音の粒の中に、決して器用に聴こえる演奏では気付けないであろう細部の言葉が、言葉として聴こえてくる。聴けば聴くほどに深みが増してくる名演だと思います。



JOSEPH MOOG FRANZ LISZT

 

F.リスト:ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調

     ピアノ協奏曲 第2番 イ長調

     死の舞踏

Joseph MoogPf

指揮:Ari Rasilainen 

オーケストラ:ラインラント=プファルツ州立フィルハーモニー管弦楽団

 

 

私がドイツで出会ったピアニストJoseph MoogCDを紹介します!

Joseph Moog1987年生まれのドイツ人ピアニストです。華やかなテクニックをもつ若手ピアニストです。2012年にはInternational Classical Music Award(ICMA)YOUNG ARTIST OF THE YEAR 2012に選ばれました。

ドイツを中心とした主にヨーロッパで活動をしているようです。

 

私が初めて彼の演奏を聴いたのもドイツのイエナという小さな街でした。そのとき彼は、街の小さなオーケストラとの協演でラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を演奏しました。

そして私はこの時、初めて感動で涙が出るという体験をしたのです!彼の可憐なテクニックは目を見張るものでしたが、中でも特にオケと共に高い音域へ盛り上げていく気迫に圧倒されました。高音で響く細やかで切れのあるパッセージには心を揺さぶられ、その音楽に入り込んでいくようでした。

 演奏が終わる頃には自然と涙が出ていて、感動で体が酔っている気がしました。その感動をなんとか伝えたくて、拙いドイツ語で彼に話しかけたのを覚えています。

 

今回紹介したCDは、その時買ったものです!残念ながらラフマニノフのピアノ協奏曲第3番ではないのですが、、、でも彼の細やかなテクニックを堪能できる内容だと思います!

ぜひ一度聴いてみてください!!

パーセル・プロジェクト2012Come ye sons of art

 

2012115日(月)

渋谷区文化総合センター大和田さくらホール

 

【プログラム】

 

Ode for the Birthday of Queen Mary 1694   Come ye sons of art Z.323

メアリー女王の誕生日のためのオード(1694) 来たれ、汝ら芸術の子らよ

 

O God, thou art my God Z.35

神よ、汝は我が神なり

 

O Lord God of hosts, how long wilt thou be angry Z.37

主よ、万軍の神よ いつまで 怒りたもうや

 

O Lord, rebuke me not in thine indignation Z.40

主よ、願わくは 憤りをもて我を責めたもうなかれ

 

 

–休憩–

 

 

Ode for St.Cecilia’s day 1692   Hail! Bright Cecilia Z.328

聖セシリアの祝日のためのオード(1692) めでたし、輝かしきセシリアよ

 

 

 

 

 ヘンリー・パーセル(Henry Purcell)という作曲家をご存知だろうか?

 周囲の知人にその質問を投げかけると、「誰、それ?」という方もいれば「大好き!あの曲いいよね~あの曲とかあの曲とかあの曲とか」という方もいる。

 パーセルは、かなりざっくり言ってしまえばバロック時代のイギリスの大作曲家である。同時代のJ.S.バッハやヘンデルがあまりにも有名であるために彼らに比べると知名度は下がるのだが、36歳で夭折してしまわなければ、今日よりずっと高名な作曲家であったかもしれない。彼はその短い生涯のなかで美しい作品を数多く残した。

 これは私の周りでいえることだが、パーセルが好きな人は、心からパーセルが好きで好きで仕方がない、という人が多い。

 どうやらパーセルの音楽には、一度はまると抜け出せない魅力があるらしい。

 

 私が行った演奏会は、そんなパーセルをこよなく愛する《パーセル・プロジェクト》という団体の、パーセルをこよなく愛する人のための、オール・パーセル・プログラムである。

 なんという物好きなプログラムだろうと思うが、パーセルファンにはたまらないらしい。いよいよ開演という19時、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールはほぼ満員の聴衆で埋め尽くされていた。

 

 プログラムはパーセルが女王メアリーのために書き、イングランド王室で演奏されたといわれるオード(頌歌)に始まる。

 楽器はいわゆる古楽器によるもので、リュートなど、普段の演奏会では目にする機会の少ない楽器も登場する。「あの楽器は何だろう?」と身を乗り出して見ようとする聴衆もいる。

 その楽器は非常に有機的な音がする。木や動物から作られる楽器は、演奏者の呼吸に呼応し、言葉を語るように自然で、耳に心地よく、体温のある音だった。17世紀のイギリスではこのように演奏され、このような音空間のなかに身を置いていたのだろうか?想像力を掻き立てられずにはいられなかった。

 ソリストの方々はみな実力のある歌手ぞろいであった。個人的には、そのなかでもアルトの布施奈緒子さんが素晴らしいと感じた。パーセルの時代、アルトはカウンターテナーが担うパートであり、音域が低く、女声が歌うには難しい。バッハやヘンデルの宗教曲を扱った演奏会で、アルトの女性が低音を出しにくそうに歌っているのをこれまでしばしば見てきた。しかし布施さんはその「苦しそうな感じ」を一切出さないどころか、響きの充実した声で、ソロの場面で初めのフレーズを歌い出した瞬間から私の耳を惹きつけた。力強く、かつ無理な力みのない、美しいアルトであった。

 続いて3曲のアンセム(ここでは、イングランド国教会における礼拝のための音楽)が演奏される。プログラムには、“詩編の一つから歌詞を取ることにより、「責める」「懲らしめる」「怒り」「衰え」など否定的な言葉が次々に現れるため、パーセルはバロック的な修辞技法をふんだんに駆使している”という藤原一弘さんによる記述がある。このような修辞技法をどのように演奏するかということについては様々な意見があるが、聖書における詩編は、人間の神に対するリアルな感情、本音が生々しく記されている箇所であると私は感じている。今回の演奏はその修辞技法について深い理解のある演奏でありながら、過度に様式感を損なうような表現はせず、あくまで一種の美しい形式のなかで守られた演奏であった。音楽がそのように書いてくれている、というものを忠実に再現しようとしているように聴いて取れた。

 最後の曲、聖セシリアのオードは今日の全プログラム中最も規模の大きいものであり、宮廷ではなく一般の聴衆を対象としたオードである。パーセルはこの曲のような祝典的な曲を書くことに本当に長けている。おそらくパーセルの持っている唯一無二のセンス、跳ねるような語感が、そのような華々しい曲を生みだすのであろう。非常にエネルギッシュで熱のある演奏だった。

“これらの楽器を競わせたまえ いづれが最も巧みに務めを成しうるか 汝はそれらの数々の華を一つに統ぶ 汝こそ全ての楽器の合奏そのものなり”という歌詞がある。まさにその言葉通り、全ての演奏者が活き活きと喜びを表出していた。各々の楽器が、各々の言葉で気持ちを語らずにはいられないという豊かな心を持っているかのように―その楽器が一番よく鳴り響く状態で―喜びを語っていた。それでいて調和のとれた一体感のある演奏であった。全ての演奏者が喜びをもって演奏されるとき、こんなにも聴衆の胸を打ち震えさせるのかと思わされたラストだった。

 

数々の華を一つに統べる喜びを、天上の聖人セシリアに捧ぐこと、そして宮廷のみならず大衆にその喜びを知らしめることがパーセルの意図だとしたならば、その意図は演奏家によって再現され、楽譜は音楽となり、今日の時間と空間のなかに響き、今なおそれはかなえられる。今回はそのことを強く実感できた演奏会だった。喜びは普遍であり、喜びが生んだ輝かしい音楽は今日に生きる私たちを勇気づける。「Come ye sons of art (来たれ、汝芸術の子らよ)」、それは音楽を通して喜びを語る喜びを、聴く喜びを誰しもがもっている、私たちも芸術に魅せられた子なのだと…気づかせてくれるコンサートだった。

CM、ドラマ、ポップス、アニメ等の楽曲を手掛けている、現在活躍中の作曲家、菅野よう子氏。

私の尊敬する作曲家の一人である。そんな菅野氏の、CM曲を集めたアルバムをここで紹介したい。


GRAND.FUNK.INKよりリリースの「CMようこ」である。


〈収録作品〉

1. 彼100%トレビアン (‘04明治製菓 キシリッシュTV-CMソング)


2. Lion Man (’98 トヨタ ハリアー TV-CMソング)


3. 電線にタコが絡まっちゃったらどうするの? (’00 東京電力 TV-CMソング)


4. Silent Star (’06 シャープ携帯電話「静かな光」篇 TV-CMソング)


5. Seeds of Life (’04 コスモ石油 TV-CMソング)


6. walk travel along (‘06トンボ鉛筆 TV-CMソング)


7. Exaelitus (’06 LEXUS LS460 New World編 TV-CMソング)


8. チヤホヤされたい女 (’03 KDDI DION TV-CMソング)


9. Don’t Spend MONEY!MONEY! (’00 プロバイダーゼロ TV-CMソング)


10. Dear Blue (’06 映画「好きだ!」テーマソング)


11. Long Goodbye (’07 シチズンホールディングス TV-CMソング)


12. ママ新発売! オープニング (‘01 TVドラマ「世にも奇妙な物語」)


13. MAGICSWEETS (’02 資生堂 ピエヌ TV-CMソング)


14. Melody (‘06日立企業広告「つくろう。」 TV-CMソング)


15. em outro lugar「どこかよそで」
(’05 日本テレコム株式会社(現ソフトバンクテレコム株式会社)TV-CMソング)


16. ビバこばら (’99 ファミリーマート パニーノ TV-CMソング)


17. From Metropolis (’04 東京地下鉄株式会社 [東京メトロ] TV-CMソング)


18. Melty Kiss (’00 明治製菓 メルティキッス TV-CM ソング)


19. Beautiful Memories (’05 シャープ アクオス TV-CMソング)


20. Family Affair (’03 マスターカード・ワールドワイド TV-CMソング)


21. ゆうじ CMバージョン (’99 サントリー ビタミンウォーター TV-CMソング)


22. MAGICSWEETS -Masao Nisugi Remix-


23. チョコと勇気 (’04 チロルチョコ TV-CMソング)
-CD Bonus Tracks


24. Living In Future (’06 マイクロソフト TV-CMソング)


25. Glass Shoes (’04 AGC旭硝子 「硝子のストーリー」 TV-CMソング)


心と耳に残るメロディーが特徴である菅野氏の音楽。「CMようこ」は、そんな菅野氏らしさの詰まった作品集である。

コスモ石油や東京メトロなど、大企業のCMを手掛ける菅野氏のCDは、「この曲聴いたことある!」と感じるものばかりであり、懐かしさをも感じさせてくれる。

また、様々なジャンルの音楽を作りこなすことでも有名な菅野氏。そう、このCDでもカントリー音楽、ジャズ、クラシックと、多岐にわたるジャンルのものが収められており、飽きがこない。

実際のCMでは、映像がある分どうしても視点が映像と曲に分散されるが、CDでは音楽だけに視点がいく。その分今まで見えなかった、楽器編成や対旋律などの技術的な面も見え、そういった点もまた面白い。 


中でも印象に残った二曲を紹介してみたい。

まず、5番の「Seeds of Life」。

あの「心を満タンに」でお馴染みの、コスモ石油のCM音楽である。透明感溢れるピアノとハープによる美しい主旋律、8部音符によるアルペジオからは、穏やかで優しさ溢れる表情が滲み出ている。チェレスタ、弦が上手い具合に旋律に被っていき、このような対位法的な側面からも菅野氏の魅力を感じる。

ハープによるグリスタンドが奏でられると、それまで8部音符だったアルペジオは16部音符へと縮小され、穏やかな表情から爽快な表情へと変化する。そこからは、明るい未来へ向かって歩み出すような、そんな強いエネルギーが感じられ、勇気や希望を与えてくれる。何か壁にぶつかった時、この曲を聞けばきっと心がクリアになるはずだ。音楽が心の奥底に浸透し、心を満タンにさせてくれる作品である。

16番の「ビバこばら」。

「こばらが減ったのね♩」でお馴染みのファミリーマートのCMだ。

歌詞にマッチした滑稽なメロディーは、アコーディオンの軽快な音と共に、人々を明るい気分にさせてくれる。「なんだか気分が乗らないな~」そんな時には、この曲を聴くと良いだろう。また、この曲を聴くと不思議と小腹が空いたような錯覚に陥るのは、私だけだろうか。ひょっとしたら、お腹が減らず困った時に、聴くのも良いかもしれない。


菅野氏にとって音楽とは、「感情を表現するもの」だそうだ。

 クライアントの意向や制限時間などの制約があった場合、さすがの菅野氏でもバリアがかかり、音楽が生まれてこないことがあるという。しかしそんな時、菅野氏は「言われたことを一旦全て忘れ、感じたことをそのまま音楽にする」そうだ。

どの曲にも純粋さがあり、心と耳に残る。それは、菅野氏の音楽が全て本音だからなのだろう。

 感じたままを音楽にする、そんな思いが直球に伝わってくる作品集「CMようこ」である。 「CMようこ2」も発売されているので、そちらも是非聴いてみたい。

外も中もショッキングピンクで統一されており、デザイン性に関しても高く評価したい、CDアルバムである。

原ゆりか紹介CD



Funaba Hisao lab.-吉武


フェリス女学院大学大学院音楽研究科演奏会
オーケストラ協演の夕べ

曲目
C.ニールセン:フルート協奏曲より第1楽章
秋元三奈

ドボルジャーク:ヴァイオリン協奏曲 op.53 より 第3楽章
森田千草

M.ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調 より 第2・3楽章
濱田志穂

P.I.チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1楽章
源田かおり

砂山瑞穂:Sea Voyage

G.ヴェルディ:過激《椿姫》より アリア「ああ、そは彼のひとか~花から花へ」
青木佐和子

R.シューマン:ピアノ協奏曲イ短調 op.54
山本紗英子



まずこの演奏会を一言でまとめてしまうと
「生演奏は違うな!!」
ということにつきます。

この感想の理由には二つあり、一つ目、私は今までクラシックの勉強をして来たのですが、合唱のコンサート等に参加して楽員さんたちの後ろに立っていた、という経験はあるのですが、客席できちんと聴くというのが初めてでした。
 私が、今まで習った楽器はピアノしかなく、演奏する曲も聴く曲もピアノに偏っていたため演目のほとんどがはじめて聴くものでした。
 もちろんオーケストラなどの曲もCDでは聴いていますが、生演奏は音の響きや聴こえ方がまったくと言っていいほど異なって聴こえたような気がします。
もう一つ、砂山さんのSea Voyageは一度パソコンの打ち込みで制作したものを聞かせていただいたことがあるのですが、生演奏を聞くまではパソコンでうち込んだ音源でもいいんじゃないか…と思ったのですが、本物は違いますね!!
ホール内の静けさや、演奏している人達やお客様の緊張感など、その場にいないとわからないものが体験できた、素敵な演奏会でした。
Funaba Hisao lab.-石塚写真



フェリス・音楽の花束―プレミアムコンサート:フェリスの今―
2011年12月8日(木)於・あいれふホール(福岡)

フェリス女学院大学の教授陣・学生・同窓会が福岡(あいれふホール)で演奏会を行ないました。
まさにフェリスの音楽学部の「今」を詰め込んだ、盛り沢山なステージでした。

設営・転換・本番中のMC・ドキドキの譜めくりをさせていただいた私が、このコンサートを振り返ってみたいと思います!

まずは第一印象として、あいれふホールの響きが予想以上に良くてビックリしました。
私は福岡出身ですがこのホールへ行くのは初めてでした。ずっと噂には聞いていましたが、雰囲気も座席からの視界もちょうどよく、素敵なホールだなと実感しました。

【プログラム】

♪バッハ:ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ 第3番 ホ長調 BWV 1016 より第1楽章 アダージョ 第2楽章 アレグロ

「ピアノ七変化―内部奏法とプリペアド・ピアノ―」より
♪カウエル:エオリアン・ハープ
♪三宅榛名:見慣れぬ夏の日に
♪ケージ:バッカスの祭り

intermission

♪モーツァルト: 幻想曲 ニ短調 K. 397
♪サラサーテ:スペイン舞曲集 第3番「アンダルシアのロマンス」 作品22 -1
♪ヴィエ二ャフスキ:華麗なるポロネーズ 第1番 ニ長調 作品4
♪フランク : 天使の糧
♪越谷達之助 : 初恋

♪ヘンデル:オラトリオ『メサイア』より「ハレルヤ」
♪アンドリーセン:アヴェ・マリア
♪ロヴランド:ユー・レイズ・ミー・アップ
♪レーガー:マリアの子守唄
♪岡島雅興:むかし博士らが(前奏曲・賛美歌)バリトン、女声合唱とオーケストラのために
♪いずみたく:見上げてごらん夜の星を


【出演】
名倉 淑子(ヴァイオリン)
立神 粧子(ピアノ)
蔵田 雅之(テノール)

濱田 志穂(ピアノ)
山本 紗英子(ピアノ)
伊藤 史織(ダンス)

Ferrisヴォーカルアンサンブル九州(合唱)


第Ⅰ部は、主に学生による演奏で、内部奏法やプリペアド・ピアノの作品です。
去年6月にサントリーホールで行ったレインボウ21フェリス女学院大学プロデュース「ピアノ七変化-内部奏法とプリペアド・ピアノ-」というコンサートで上演した曲の再演です。

内部奏法とは、ピアノの弦に直接触れて、はじいたりなでたりする奏法です。
『エオリアン・ハープ』は繊細な音ですが、満席になった会場内にもしっかりと響き渡っていました。お客さんも、立って演奏する姿と弦の音にかなり集中して、前のめりになってまで聴き入っていた印象を受けました。

プリペアド・ピアノとは、ピアノの弦にねじやゴムなどを挟んだり乗せたりして、音色を変えたピアノのことです。
『見慣れぬ夏の日に』も、ダンス付きの『バッカスの祭り』も、サントリーホールの本番から半年後、さらに熟成され堂々とした演奏・パフォーマンスでした。
ダンスはピアノの下にもぐったり、ピアニストに絡んだり、お客さんを驚かせるような演出が沢山あり、上演後に「なんでピアノの下にもぐったと~?」という素朴な疑問が投げかけられていました。
東京と福岡で、お客さんのもつ雰囲気や着眼点が微妙に違うのは、コンサートの作り手側から見ると非常に興味深いです。


第Ⅱ部は、フェリスの教授陣による演奏です。
ステージに漂う雰囲気がガラリと変わり、ピアノ独奏、独唱、ヴァイオリンと、どれも圧巻でした。
とくに、立神先生のピアノソロは、場面ひとつひとつ音楽の表情が違い、聴き逃せないワクワク感が最後まで続きました。
蔵田先生の日本歌曲、名倉先生のスペイン舞曲と、とにかく素晴らしい演奏ばかりが続き、本当に濃厚なひとときでした。

そしてⅡ部の後半、このコンサートのトリを飾ってくださったのがFerrisヴォーカルアンサンブル九州(同窓会の方々による合唱グループ)の皆様です。
蔵田先生の指揮、立神先生の伴奏で、クリスマスソングや、誰もが一度は聴いたことのあるような馴染みやすい曲が並んだプログラムでした。
蔵田先生のノリノリでエネルギッシュな指揮が鏡のようにして、女声合唱の皆さんの笑顔へと連鎖していく感じが、とても「音楽」だなぁと、なんだか嬉しくなりました。

締めくくりは会場のみんなで「見上げてごらん夜の星を」を大合唱(2回も!)。拍手喝采のうちに幕を閉じました。福岡のお客さん、やっぱりアットホームです。

ということで、今回のコンサートは、
★挑戦心をいっぱい持って演奏を全うした現役学生、
★一流とはこういうことか!を音楽でみせて下さった先生方、
★音楽で人の輪を作る楽しさを感じさせて下さったFerrisヴォーカルアンサンブル九州の皆様、
それぞれの良い音楽に触れられた価値のある時間でした。


【「磁気ループ」の取り組み】
このコンサートは、聴覚障がいを持った方にも満足に音を聴いてもらえるよう、「磁気ループ」という機器を設置しました。

磁気ループとは、マイクで拾った音を、磁気に置き換えて直接補聴器へ伝えるシステムです。
標準の補聴器には、この磁気ループからの音声を聞くモードが必ず付いていて、スイッチひとつで簡単に切り替えられるそうです。
設置方法も意外と簡単で、磁気誘導アンプに繋がったループアンテナを、席を囲うように這わせるのみです。女性スタッフ3名で30分ほどで設置完了しました。

実際に補聴器利用者であるお客さんは、「よく聞こえた」とおっしゃっていたそうです。
聴覚障がいを持った方や、お年寄りの方にも、目の前の生演奏を鮮明な音で楽しんでいただきたいですよね。
純粋に、自分がおばあちゃんになって耳が遠くなっても、コンサートには行きたいものです。
こんなにシンプルな構造で簡単に設置できるならば、もっと多くのコンサートで設置されると良いなと思いました。
自分が企画・運営側となる時には、また取り入れたいです。

Funaba Hisao lab.-栗原ポリーニ




スーパーテクニックでショパンコンクールを優勝した天才ピアニスト、マウリツィオ・ポリーニ。彼のショパンエチュードの録音は大変有名なもので、1975年ミュンヘンで録音されたものである。ショパンのエチュードを弾く機会ができたというのもあり、久しぶりに彼の演奏をじっくり聴いてみることにした。ショパンのエチュードといえば、受験生には欠かせない曲。技術的にも、音楽的にもかつてこの曲を弾くのにどれだけ苦労したことだろうか。彼の最近の演奏はだいぶ丸い音になってきているようだが、このCDの演奏は、音色を全く変えずに強弱だけで弾ききるといわれているポリーニの演奏スタイルを正に体現した演奏と言えるのではないだろうか。1曲目から信じられない程のテクニックと強靭な音で圧倒された。そして、それは決して崩れることなく一切の不安感を与えない。見事に一音一音が計算し尽くされている音の並び、この音を出せることがどれだけすごいことであるか、気が遠くなるほどの努力を想像することすら出来ない。彼のテクニックに関してはいうまでもないが、短い曲であるエチュードのまとめ方は本当にすばらしい。彼の演奏は息をつく間もないような緊張感や説得力があり、聴き手も思わず集中して聴いてしまう。まさにエチュードとして完璧な演奏ではないだろうか。ピアニストとして一度は聴いておかなければならない名盤であるということは間違えないだろう。