5、ふしだら(4) | フォーエバー・フレンズ

5、ふしだら(4)

カラオケボックスが時間切れとなり、行き場を失った圭一郎と綾乃の二人は、夜の山下公園へとやってきた。みなとみらいの観覧車の光りが色艶やかに夜空へ灯を発し、その灯が夜の横浜港の海にもうもうと写し出される。そんな美しい光景を見ながら、二人はただぼんやりと歩いていた。

「あ、恭子ちゃん。うん、カラオケボックスあれから時間切れになってね。今山下公園にいるよ。うん。待ってるよ」

そう言うと、圭一郎はスマートフォンをポケットの中へとしまった。そして「優太帰ってしまったみたい」と言って、ぼんやりと光り輝く海の向こうに見える観覧車を見つめた。

しかし、当の綾乃の対応を至って冷ややか。

「帰ればいいじゃん」のただ一言。

「そんな言い方するなよ。大体優太が綾乃さんの事好きなのを知っていて、どうしてあんな事したんだよ」

「ああでもしなきゃ諦めないじゃん」

「でも、あそこまで傷つける事ないだろ」

「嫌いだから」

「また・・・」

「酒飲み、品格ゼロ、バカ、いい加減、しつこい、下に強いくせして上には弱いし・・・」

「・・・」

「言葉使いは悪いし、ストーカー、電話魔、とにかくあいつの好きなところなんて何一つナシ。全てが嫌い」

すると圭一郎は綾乃を叱りだした。

「俺は綾乃さんの事は好きだけど、でも、綾乃さんは少しフラフラしすぎだと思う」

「どうして?」

「小田社長の愛人をしていると言えばいいだろ。だから付き合えないと言ったらいいじゃないか。結局そんな事を何一つ言わずに、優太にただ暴言を吐いて。綾乃さんがフラフラしているようにしか見えない」

「じゃあ、それを知っていて、私と優太をくっつけようとしているノンちゃんは何?」

「それは・・・」

「全部お見通しだよ。ノンちゃん、優太にいい恰好がしたくて、こんな事してるだけじゃん。友達だったら、私が小田社長の愛人やってるから止めとけっていったらいいじゃん。それが友達ってもんじゃん。それが友情ってもんじゃん。結局ノンちゃんだって優太の無様な姿を見て楽しんでいる」

「そんな事ない!」

「そうだよ。そして情けない優太の面倒見てるフリして、自分を良く見せてるだけ」

「・・・」

「挙句の果てに私の心まで傷つけて・・・」

「え?」

すると綾乃は、いきなり圭一郎にキスをした。あまりにもの突然の出来事に、圭一郎は驚き戸惑ってしまった。

そして唇を離すと、綾乃は「私は・・・ノンちゃんが好き・・・」と一言。

「えええ???」

「ノンちゃん・・・」

そんな光景を、暗闇の向こうで呆然と見つめる女性がいた。月の光に映し出された、小柄な女性。それはなんと恭子であった。

恭子は、そんな二人の姿を見ると、思わず涙をポロポロと流し、そのまま駅の方向へと立ち去って行った。