14、みんなの甲子園(4) | フォーエバー・フレンズ

14、みんなの甲子園(4)

東名高速を走行中、野球部関係者専用バスでは、各家庭ひとりずつ自己紹介が行われていた。

そして遠山家の番になると、茜がマイクを持たされてしまった。

少しお腹の大きな茜は、緊張気味に「遠山真の・・・・妻の茜です」と言った。

由香子の両親は、お腹の大きな茜を見ると少し軽蔑した視線で見た。

しかし茜はその後堂々と「1月始め頃に赤ちゃんが生まれます。そして最後にお父さんの活躍する姿を見せたいと思い、今日はこのバスに乗りました。皆様宜しくお願いします」と言った。

周りがシーンとする中、清志朗の父が「君はいくつだ?」と茜に聞いてきた。

「18歳です・・・」

「そうか、これからいろいろと苦労も多いだろうが、頑張りなさい。体の調子が悪くなったらいつでも言ってくれ」清志朗の父は、笑顔でそう言った。

「あっ・・・ありがとうございます」茜は涙を浮かべながら、頭を下げた。

そして感極まった恵は、涙を浮かべながらパチパチと拍手をした。

やがて、バス中が茜への拍手となり、茜はこらえきれずに涙を流した。

そして、次は恵の父の番だった。

恵は、父がまた変な事を言うんじゃないかと不安に思った。

「え~・・・キャッチャーの山野淳紀の父です。この度は息子が甲子園に行けた事とても嬉しく思います。実は、今日は息子の淳紀だけでなく、もう一人の選手の保護者としてまいりました。そのもう一人の選手とは主将の徳永陽一君です」

「お父さん・・・」

「徳永君は、2年前、飛行機事故でご両親を亡くしております。だから今回私は、天国にいる徳永君・・・いや陽一君のご両親に代わって保護者となり、応援しに行く事としました。皆様、今日明日と宜しくお願い致します」

恵の父がそう言って頭を下げると、再びバスの中に拍手が起った。

恵はお父さんの話を聞いて、涙をこぼした。

「お父さん・・・ありがとう・・・」



そして応援バスの大軍団は、東名高速を西へ西へと走って行き、夜の東名高速道路を、色鮮やかに彩った。

彼らの向かう地は、明日の決勝戦が行われる甲子園。



そして今、70台のバスに乗った3000人の大応援団は、甲子園へと向かっている。

目的は港南学院高校野球部の応援だ。

そう、一年前はたった3人の野球同好会だったチームだ。

そして努力してここまで育ってきたチームを、今みんなが応援しに行こうとしている。



翌朝、恵は鳥の声で、目を覚ました。



そしてバスのカーテンを開けると、そこには甲子園球場がそびえたっていた。

遂に恵は、甲子園へとやってきたのだ。

「これが・・・甲子園なんだ・・・」恵はそう言いながら、マンモス甲子園球場の外観を見た。



いよいよ港南学院と仙台学園の、日本一を賭けた戦いが始まろうとしていた。



甲子園 - 写真素材
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