8、料理甲子園(2) | フォーエバー・フレンズ

8、料理甲子園(2)

バイトを終えると、いつものように汐入駅で恵と茜は別れた。

そしてそのまま陽一を待っていると、陽一は走ってやってきた。

陽一と横須賀駅へと歩きながら、恵はずっと茜の事を考えていた。

そんな事を考えていると陽一が「恵、これに出てみろよ。俺、応援するよ」と言って、『料理甲子園』のチラシを恵に見せた。

「料理甲子園?」

「そう、次の日曜日に横浜みなとみらいホールで神奈川県の予選をやるんだ。全国3000名の女子高生が参加するんだってさ」

「締め切り4月30日だよ。もう終わってるじゃん」

「締め切り終わってたけど、テレビ局の人に言ったら、参加枠まだあるからいいよって言ってくれた」

「どんな料理を作ればいいのかな?」

「これがルールらしいんだ」陽一はそう言うと、テレビ局員からもらった大会概要を恵に渡した。



恵は家に帰ると、自分の部屋で『料理甲子園』の大会概要を見ていた。

『一次予選 予算1,000円以内で、スーパー『トールマート横浜店』で買い物をし、制限時間60分以内で得意料理を3品目作る。調味料とお米は会場の物を使用』

恵はそれを見ると「腕試しでやってみようかな」と言って、微笑んだ。

写真素材 PIXTA
(c) koichi写真素材 PIXTA

そして一週間後、料理甲子園の第一次予選の日がやってきた。

恵は茜と陽一と一緒に、横浜みなとみらいホールへとやってきた。

すると会場には、100名の女子高生が集まっていた。

恵は不安そうに「これ、みんな出場するのかな・・・」と言った。

「みたいだな」陽一も少し心配そうだった。

「恵、頑張ってね」茜は、恵の背中をポンと叩いた。



いよいよ『女子高生料理甲子園の一次予選』が開始された。

司会の男性はマイクを持って「さあ、始まりました!第6回女子高生料理甲子園!熱き少女達の甲子園です。思う存分腕自慢をしてください。それでは皆さんスタートラインに立ってください。スタートの合図が鳴ったら、トールマートまで走って買い物にいって下さい」

そして、出場する女子高生達が一斉にスタートラインに集まった。

やがてスターターによるピストルの音がパン!と鳴った。

すると出場選手が一斉に走り出した。

そして恵も、出場選手につられるように必死に走った。

「なんなの?これって陸上?」

「恵!頑張れ!」茜と陽一も恵を追いかけて、必死に走った。

そんな茜を見て「茜!走っちゃだめ!お腹の赤ちゃんが!」と叫んだ。

「えっ?赤ちゃん?」隣を走っていた陽一がその言葉に驚いた。

「しまった・・・」恵はそう言うと「茜ごめん!言っちゃった!」と言って、走り去っていった。

取り残された陽一と茜は、気まずそうにその場にたたずんだ。

「茜ちゃん、俺、今の聞かなかった事にするよ・・・」

「もういいよ。恵のバカ」



恵はトールマートの自動ドアを抜けると、恵は買い物かごを持って店内へと繰り出した。

そして、早速野菜コーナーへと向った。

野菜コーナーは以外に人が少なかったのだ。

そして『れんこん』『にんじん』『干ししいたけ』『ごぼう』『4/1にカットした大根』『グリーンピース』を取って、今度は『卵』と『こんにゃく』を買った。

そして最後に『鳥のもも肉』を買い、レジへと並んだ。

そしてそれらをエコバックに詰めると、なんと上位で店を出た。

しかし、その後次々と追い越されていき、やっとの思いでみなとみらいホールへと帰ってきた。

そして、厨房に立つと恵は時折汗を拭いながら、必死に料理を作った。

そしてそんな恵が選んだお得意3品種。

『グリーンピースごはん』

『だしまき』

そして恵の得意中の得意の『筑前煮』

至ってシンプルな和食だった。



60分が経過すると、競技終了のチャイムがなった。

そして司会者から成績が発表された。

「え~この中から、10名の方が選ばれます。選ばれた10名の方は見事関東地区大会出場という事になります。それでは発表します」

出場選手は固唾を呑んだ。

「相模商業2年 和田美代さん」

「成徳女子高3年 小林あやめさん」

「東高校3年 大貫理沙子さん」

次々と結果が発表されていった。

そして・・・・。

「港南学院高校3年 山野恵さん」

その名前を聞くと恵は「やった!」と言ってガッツポーズをした。

そして会場の隅でみていた陽一と茜も「やったあ」と言ってハイタッチした。

恵はなんと料理甲子園で、関東大会進出を果たしたのだ。



そして茜とは横浜駅で別れ、恵と陽一は一緒に帰っていった。

「恵、茜ちゃん妊娠してるのか?」

「そうなんだ」

「どうするんだろ・・・」

「中絶するみたいだよ」

「マジかよ?」

「うん・・・遠山君の事考えたらそっちの方がいいんだって」

「そうかなあ?・・・」

「ねえ、男の人からしたら、どっちの方がいいのかなあ?」

「俺なら、生んでもらいたいよ」

「でもどうやって育てるの?」

「う~ん・・・」陽一は言葉をなくしてしまった


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