5、春の合宿(2) | フォーエバー・フレンズ

5、春の合宿(2)

時同じくして、恵の実家の前で、陽一は淳紀の練習をチェックしていた。

「淳紀、ちょっと素振りしてくれ」

「はい」

淳紀はそう言うと、マスコットバットで素振りを始めた。

10回ぐらい振り終えると、陽一が「ストップ」と言った。

「どうですか?」

「淳紀、ちょっと手を見せて」

陽一がそう言うと、淳紀はマメだらけの手の平を陽一に見せた。

淳紀の手の平を見て陽一は「ふん、ふん」とうなずき、そして「淳紀、俺の手を見てみろ」と言って、淳紀に手を見せた。

陽一の手にはマメ一つ無く、それどころかマメができた形跡すらなかった。

「俺はこの手で、毎日500回素振りをしてる」

「えっ?なんで?なんでマメがないのですか?」

すると陽一は、淳紀のバットを持って説明をしだした。

「俺はバットを強く握らないんだよ。足腰を使って、体の回転と遠心力を利用してバットを振るんだ。淳紀は力いっぱいグリップを握るからマメが出来るんだよ。それに力いっぱい握るから、手首の返しが不自然になる。バットは腕の力で振るんじゃない」

淳紀は陽一の言ってる事が、あまり理解できなかった。

すると恵の父がゴルフクラブを持って、庭へ出てきた。

「おはよう、徳永君」

「あっ、おはようございます」

「淳紀の特訓かい?」

「ちょっとしたレッスンです」と言って、陽一は笑った。

すると恵の父はゴルフの素振りを始めた。

「あ~あ・・・ゴルフしたいなあ・・・」恵の父がそう言って素振りをしていると、陽一は「淳紀!これだよ!ゴルフだよ!」と大きな声を出した。

そして陽一は恵の父に「淳紀にゴルフを教えてあげてくれませんか?」と言った。

「いっ・・・いいけど・・・」恵の父も陽一の突然の言動に驚いてしまった。



そして恵の父に引き連れられ、陽一と淳紀は近くのゴルフ練習場へと行った。

淳紀はひたすらゴルフボールを打ったが、物凄くスライスする。

恵の父は見るに見かねて「淳紀、力入れすぎだよ」と言って指導し始めた。

「うん?淳紀、お前グリップが強いな?もう少し弱く握れ」

「そ・・・そうかな?」

「ああ、そんなに強く握ったら、手首が返らないだろ?それに体も回転しにくいぞ。このように手首がグルッと回るぐらいの力で、クラブを握るんだよ」と恵の父は力説した。

淳紀は恵の父の言うとおりにゴルフボールを打った。

すると綺麗には飛ばなかったが、正面にライナー性の当たりがでた。

すると淳きは何かに気付いたように「そうか!徳永さん!わかったよ」と言った。

「わかったか?いくら強く握って力を入れても、バットの先端には力が伝わらないんだよ。手首を柔らかく使う事で、バットの先端に力が伝わるんだ」

「じゃあ家に戻って練習します。徳永さん、もう少し練習に付き合ってもらってもいいですか?」

「ああ、いいよ」

陽一と淳紀はゴルフ練習場を走って去って行った。

そして一人残された恵の父は呆然としていた。

「なんだよ・・・ゴルフじゃなかったのか?」



恵は一番好きな和食にチャレンジしていた。

レシピは・・・。

『カレイの煮付け』

『里芋のにっころがし』

『五目御飯』

『胡瓜とわかめの酢の物』

『けんちん汁』

恵はそれらを少しだけ食べてみた。

「美味しい・・・やっぱり私、和食が一番得意かな?」



5時になると陽一が淳紀の練習から帰ってきた。

「おかえり、陽一」

2年ぶりの我家での『おかえり』と言う言葉に、陽一は癒される気持ちになった。

いつも家に帰ると、部屋は真っ暗でそして肌寒い。

でも恵がいる土曜日の部屋は、明るくて暖かくて、そして『おかえり』という言葉があった。

そして食卓には晩ごはんが用意されてあった。

「美味しそうだな」

「うん。食べたら感想聞かせてね」

「わかったよ」


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