12、店長のはからい(2) | フォーエバー・フレンズ

12、店長のはからい(2)

港南学院選手宿舎では、明日の試合の為の最終ミーティングを行われていた。

「ごめん、今回だけはどうしてもわからないんだ」司は全員に頭を下げた。

陽一は驚いて「篠宮はそんなにクセがないのか?」と言った。

うん。予選会からの映像も取り寄せて何度も見直した。パソコンにもかけてみた。でも癖が全くわからないんだ」

すると古屋監督監督が「司、クセの話はもういい。篠宮の特性説明をしてくれ」

「はい。球速は全力投球で148km/h平均で143Km/hで武南の小林さんより若干遅いです。そして変化球はカーブのみです」

真は「それじゃあ小林より打ちやすいのか?」と司に尋ねた。

「それが・・・違うんだ。カーブが100Km/hぐらいのスローカーブなんだ。ストレートとの速度差は約45Km/h。つまりバッターボックスに立ったときの体感速度は、伸びがどれだけあるかわからないけど、小林さんより速く感じるかもしれない」

「こりゃヤマを張るしかないな。ストレートかカーブか・・・」古屋監督が少し困った顔で言うと、さらに「チームの攻撃力は?」と司に聞いた

「はい。やはり4番の大河内さんがキーです。弱点は内角低めの球ですね」といってプロジェクターの画像を指差した。

「そして全体的に小技が上手いです。大河内さんを除いて長打の危険性はありませんが、そのかわり全員100mを12秒台で走ります」

それを聞いた古屋監督は頭をかきながら「こりゃ、やっかいなチームだな。司、もういい。モチベーションが下がる」と言って席を立った。




そして同じようなミーティングが、淀商でも行われていた。
大河内は全選手の前で港南学院の説明していた。
「まず、このチームは徳永と遠山ばかりクローズアップされているが、それは違う。一番のクセ者は3塁コーチャーズボックスの原や。何かと相手チームのアラを探してきて、意表をついた走塁を指示する」
淀商の選手は大河内の説明にじっと聞き入っていた。
「だから、外野手はシングルヒットを打たれても、必ず全力で内野に返球しろ。これで武南がやられた。それと攻撃のチームと思うが、それも違う。このチームは守備のチームや。外野手は全員強肩やから、賭けにでるようなタッチアップは絶対にするな。徳永の餌食になるで。次にピッチャーの速見。これは練習どおりスクリューを叩く。スクリューを封じれば、速見は自滅する」
これにはビックリである。今までの対戦チームの作戦は速見の立ち上がりを叩けだった。
しかし大河内は、最初から速見の伝家の宝刀であるスクリューボールを狙う作戦を組んだのだ。
これはまさに速見への奇襲攻撃である。
松永監督はずっと黙って大河内の説明を聞いてきた。
「そして最後。打撃力、さっきも言ったとおり徳永と遠山がクローズアップされすぎているんや。しかし徳永はアウトローの変化球。遠山は胸元の速球やシュートに弱い。そこをつけば大体抑えられる。問題は1番の一ノ瀬や。こいつは弱点が少ない。一度暴れさせたら止まらへん。だから気をつけないかん。それだけ気を付けたらこのチームは抑えられる」
するとこれまで目を閉じて聞いていた松永監督が「大河内、お前の言っている事は大筋正しい。けどな、徳永と遠山はお前の言っているようなバッターとは違う」と言った。
「しかしデーターで立証されています」と大河内が反論すると、松永監督は「あのな、あいつらは4年前リトル世界大会で優勝しとるんや。大舞台で勝つ奴と言うのは、大舞台でデーター以上の力を発揮するんや。そんなに甘くない」そう言うと席を立った。
しかし大河内にも意地があった。

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