53本目(9月29日鑑賞)


アルタミラ的エンタメ懐石!

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舞妓はレディ


監督・脚本:周防正行

美術:磯田典宏

音楽:周防義和

出演:上白石萌音/長谷川博己/富司純子/田畑智子/草刈民代/渡辺えり/岸部一徳/高嶋政宏/小日向文世/濱田岳/竹中直人/中村久美/岩本多代/高橋長英/草村礼子/松井珠理奈/武藤十夢/徳井優/田口浩正/彦摩呂/大原櫻子/妻夫木聡/津川雅彦


京都の花街・下八軒にある老舗お茶屋・万寿楽。おかみ(富司純子)の下、ベテラン芸妓の豆春(渡辺えり)、里春(草刈民代)が在籍する万寿楽の悩みは、舞妓がおかみの娘で三十路近い百春(田畑智子)たったひとりということ。そこに百春のブログをみたという少女春子(上白石萌音)が、舞妓になりたいと訪れてくる。居合わせた言語学者の京野(長谷川博己)は、彼女の鹿児島弁と津軽弁のまざった言葉に興味を抱き、彼女を一人前の舞妓にしようとおかみに申し出る。

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周防監督がミュージカル? 先に言っときますと、ミュージカルとしての完成度は…少々「?」。歌直前の一瞬の間が、ちょっとだけ気にかかる。全部自分でやっちゃう才子周防監督。こればかりは慣れてる方にサポートしていただく方が正解。

などと批判めいたことから始めたこの感想文。実は、本作大変お気に入り(笑)。アルタミラ系のお仕事ムービーは大好物。これまでそれ系は矢口監督。周防監督がそれをやっちゃう。しかも周防流に。ミュージカル仕立てですが、まるで名作「Shall we ダンス?」を観ているよう。

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ヘプバーン演じるじゃじゃ馬娘が見初められ、社交界のレディに変身していく「マイ・フェアレディ」。本作、タイトルの通り、これが元ネタ。どこの馬の骨とも知らん、鹿児島弁と津軽弁という方言の中でも特に個性的な言葉を使う少女が、流ちょうな京言葉を操るおもてなしのプロ「舞妓」に変身するまでを追ってます。

この成長ストーリーは心地よい。いろいろあってようやく舞妓デビューを果たす春子。そのお店出しの日、髪を結い、着物を着付け、お化粧とお飾りを施される。春子が「小春」に変わる数分のカット。もう、泣きそうになりました。気が付くと親目線。娘が一人前になった姿を見ている想い。

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本作、出演陣の本気も心地よい。京言葉はほんの一端。礼儀作法から日常の所作しかり。中村久美、徳井優、田口浩正、彦摩呂ら先生方のコーチングしかり。その筋の方が見れば粗はあるのかもしれないけど、一般目線ではもう十分。踊りや礼儀作法も、きっとそれなりのレベル。少ないカットの出演者も、そのために相当な練習を積まれたのだろうと、その本気に拍手。 


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飽きさせないストーリー構成も◎。ちょっとしたロマンスを付け出しに、メインのドラマも最後に用意。「やってない俳優」が父で、J妻が母だったり。しかも出演は写真のみという贅沢。まさに秘伝のスープ。最後にあの映画のパロディも付け足して食後のデザートに。いろんな本気といろんなエンターテイメントがつまった懐石作品どすえ。(笑)


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アルタミラに好かれているのか、タバトモの扱いがいい。好き女優の一人につき、hiroは満足。「ロボジー」からのアルタミラつながり岳は、それなりのモノをチラつかせつつ出番不足。

周防組の監督妻、竹中、渡辺は、もう名人の域。竹中のコミックパートと「男衆(オトコシ)」仕事の切り替えは絶妙。その立ち居振る舞い、これも研究の成果か。

初アルタミラとなる長谷川君はいい。主演と言っていい働き。富司さんも世界遺産級の優しさ。舞コーチ中村さんは一級のコメディエンヌ。妻夫木君の笑顔が光る。櫻子の歌はトニー賞をあげたい。「やってない俳優」とその妻の存在感も美味しすぎる。

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キリがない。みなさんよい。が、やっぱり萌音ちゃんですね、一番の輝きは。自信なさ気な女の子が、変わっていくんですよ。歌も上手いんですよ。ちゃんと舞ってるんですよ。応援したくなりますよって。


ただのおふざけでもない。髪結いの手捌き(さすがにここは本職の手か)。実に鮮やかで、実に美しく、身が引き締まる。ここ、好きなシーンのひとつ。

古くから伝わる伝統。研鑽された職人芸。そうしたものを役者が演じる時、覚悟があるのとないのでは違う。本作にかかわる役者、クルー、協力スタッフ。多くの方が覚悟を決めて取り組んだエンタメ懐石、如何どすえ。


hiroでした。




脚本8 映像7 音響6 配役9 他(音楽)7

37/50