HDD鑑賞


置き捨てられた日本人がいたこと、知っておかないと。
観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-fox1
太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男


監督:平山秀幸

脚本:西岡琢也/グレゴリー・マークェット/チェリン・グラック

撮影:柴崎幸三

編集:洲崎千恵子

音楽:加古隆

原作:ドン・ジョーンズ

出演:竹野内豊/唐沢寿明/井上真央/山田孝之/中島朋子/岡田義徳/阿部サダヲ/ショーン・マクゴーウァン/板尾創路/光石研/柄本時生/近藤芳正/酒井敏也/ベンガル


太平洋戦争末期、洋上最大の拠点であったサイパン島を米国軍に攻められ、日本は島の放棄を決定。しかし、その命令は現地の日本軍や民間人には伝わらず、彼らは何の情報もないままジャングルに野営地を設営し、米国軍に対して抵抗を続けていた。

現地軍のリーダーとなった大場大尉(竹野内豊)は、「一人でも多くの敵兵殺す」とゲリラ戦を主張していたが、民間人の野営地が目の前で爆撃にあい、「一人でも多くの日本人を救う」と方針を変更。堀内(唐沢寿明)、木内(山田孝之)、尾藤(岡田義徳)ら軍人、大城(ベンガル)、千恵子(井上真央)ら民間人と共に、なんの救援もない生き残るための闘いを続ける。ジャングルの中に突然現れ、米国軍兵士をもてあそぶように消えていく彼らを、いつしかルイス(ショーン・マクゴーウァン)ら現地米兵は「フォックス」と呼ぶようになる。


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現地サイパンはじめ過酷なジャングルでのロケ。


日本軍の上層部は冷たい。多くの幹部は兵士を将棋の駒程度にしか見ていない。どのメディアを見ても、どうやらそれだけは見解の一致。足りなくなれば、また本土から補充すればいい…レベルの認識だった模様。幹部は名家の出だったり、大学出だったり。所詮たたき上げは、志願だろうが、赤紙だろうが、下士官(士官の下)までにしかなれない。いつの世も、同じようなことを。

その幹部に切り捨てられた兵士や民間人。新型爆弾や敗戦の噂を耳にしても、米軍の心理作戦かもしれない、との不安は容易に想像がつく。無闇に信じられるものではない。それゆえ、抵抗するしかなかった。彼らの抵抗は実に512日に及んだという。


日本軍サイドを平山監督が撮影、一方米軍サイドを共同脚本もしているチェリン・グラックが撮影。これを平山監督が統括するというスタイルで編集。米国人の著した原作を、日米二人の監督の視点でとらえるという試みは、「日米合作」にふさわしいつくり。ちなみにチェリン・グラックは和歌山生まれの和歌山育ち。映画における日米の橋渡し的な仕事が多いそうです。


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唐沢、気合の丸刈り!


主演の竹野内は、優しさあふれる顔立ち。軍人らしくないといえばらしくないんだけど、大場大尉のキャラクターを考えると、まずまずなキャスティング。ジャングルでの困窮した生活と日本の敗戦を受け入れられない衝撃により、何かが壊れそうになる自分を立て直す…そういう演技が物足りない気はした。

キャラクターとして立っていたのが唐沢演じる堀内今朝松。地味な竹野内よりもビジュアルで目立ってた。もう少しあくの強い人物設定ができそうだったけど、登場シーンと最期のシーンしか見せ場がなかったのが実にもったいない。
山田孝之もああいう展開になるのであれば、彼の日常からその片鱗をばらまいておいてくれると、さらによくなったのではないか。

日本の軍人たちの描写、少し「狂気」が抑え気味だったかな。「地獄の黙示録」と似たような環境なんですよね。豪華キャストがもったいない気がした。

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真央ちゃん作品、連発(笑)


毎度おなじみデコ美女真央ちゃん。相変わらず美しい富士額。ただ、今作の女優陣では中嶋朋子が食ってましたね。彼女の話す日本語がカタコトに聞こえるのは、サイパン暮らしが長いことを象徴しているのだろうか。「ワタシはタイイさんのことが気がかりです」とサラッと告白したあたりの表情がいい。いつまでも蛍じゃないもんね。


「狂気」については先ほど触れた。唐沢・山田・岡田・板尾ら、そうした演技ができる役者陣がそろっていただけに残念。

全体的には日米双方の目線を意識したことは成功。どちらによることもなく、大場隊が投降するまでの経緯はよく描かれてました。終盤の日焼けプラス頬のこけ具合もメイクさんの技と役者陣の頑張りが伝わります。

気になったのは、「硫黄島からの手紙」に少し引っ張られたかな。後出しだからしょうがないけど、展開が似ていたので。


ふと心配なことが…これ、「金曜ロードショー」のオンエアを録画したものなんですよ。延長なしの2時間枠内で放送。カットしてますよね、当然。そう考えると「狂気」の部分、お茶の間への放送を考えると、一番最初にカットされるところかも。一度、ちゃんとレンタルして観たほうがいいかな。


太平洋戦争もの、続きましたね。まだチャンスがあれば続けるつもりです。戦争映画が嫌いな人には「ごめんなさい」。


余談ですが…これを書くにあたって、たまたま拝読したある映画専門サイトのレビューが、大場隊の行動が理解できない。投降すれば食料も医療も十分に提供されるはず。…等々不満の文言を並べておられていた。一般の方の投稿ではなく、映画紹介の付属記事の中にです。専門サイトのプロのライターが、ですよ。当時の状況を理解しようともせず、すべての事柄を現代の尺に当てはめることしかできない想像力のなさ。少々、いや相当怒りを覚えました。第一、作品のことを云々いうならともかく、これでは主旨もちがう。これは、安易にバイトにお願いしただけなんですかね。そう信じたいですね。




hiroでした。

そういう記事を書きたくないから、今、太平洋戦争を知りたいんで~す。