HDD鑑賞


中村組の伊坂作品はいい!

観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-スランバー1

ゴールデンスランバ―


監督・脚本:中村義洋

脚本:林民夫/鈴木謙一

撮影:小松高志

照明:蒔苗友一郎

録音:石貝洋

VFX:大萩真司

原作:伊坂幸太郎

音楽:斉藤和義

出演:堺雅人/竹内結子/吉岡秀隆/劇団ひとり/香川照之/柄本明/濱田岳/ベンガル/大森南朋/貫地谷しほり/相武沙季/伊東四郎


劇場公開時に観たんだけど、また観たくなって、昨年のテレビオンエアを録画したのをやっと観た。


大学時代の友人・森田(吉岡秀隆)に「釣りに行こう」と誘われた青柳(堺雅人)は、総理大臣の凱旋パレードに沸く仙台・定禅寺通り付近の路地に停めた森田の車の中にいた。

「お前、オズワルドにされるぞ」と警告する森田。その直後、パレードルートで爆発音。大衆監視の元で首相暗殺が実行された。警官が車に近づいてくる。「逃げろ」と森田は言う。青柳が車を出た次の瞬間、森田を乗せた車が爆発。訳も分からないまま現場から逃走する青柳。

そして事件を伝えるテレビのニュースで、青柳は自分が首相暗殺の容疑者となっていることを知る。

かつて青柳と付き合っていた晴子(竹内結子)もまたそのことを知るが、「そんなことする人じゃない」と確信をもつ。

青柳の「イメージ」を利用しようとする何者かの陰謀から一人で逃れようとする青柳だったが、思いもよらない人々が自分を助けてくれていることに気づく。


観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-スランバー2

今は夫と娘との家族をもつ元カノ晴子。

青柳の無実を信じる晴子がとった行動は。


アヒルと鴨のコインロッカー」を観てから原作を読み、すっかり伊坂ファンになりました。

それから伊坂作品を読み始め、映像化作品も鑑賞してきて気付いたことが…。

好きな伊坂原作の映像化作品は、「アヒルと鴨のコインロッカー」と「フィッシュストーリー」。それと今作と昨年公開の「ポテチ 」。そうなんです。全部中村監督の作品です。

では、中村監督が好きなのかというと、他の作品にそれほど思い入れがあるわけでもない。

つまりは、伊坂作品×中村監督という組み合わせがhiroにあってるみたいなんです。

そこに演者濱田岳・音楽斉藤和義というピースが加わると…。


今作の話の前にずいぶん字数を割いてしまった!


今作レビューですね。


「敵が誰で、何の目的で青柳を利用しようとしているのか?」…ハッキリいって何も描かれていません。

たぶん今作がNGな人、ここがダメじゃありませんか。

これは、映画がどうこうではなく、監督や演出がどうこうでもないんです。原作がそうなんです。

小説では今作と「魔王」「モダンタイムス」の3つが多少前後する架空の時代設定のなかで描かれています。

そしてこの3つすべて、「敵」の描写があいまいです。

「国」のようで、「権力」のようで、「大衆」のようで、実はそのどれでもない。

まるですべての人間があるものの意図で生かされているかのような。

そしてそういう「敵」なり「運命」なりに抗う人々が物語を作っています。

なんとなくデビュー作の「オーデュポンの祈り」に出てくる島の世界観が、その源流にある気がします。

…すいません。小説レビューじゃなかったですね。

つまり、そういう原作なので、監督はよく読み込まれ、とてもリアルに表現されている、という気がします。

逆に言うと、伊坂×中村が好きな人は、こんなところがいいんじゃないでしょうかね。


観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-スランバー3
この後、名シーンですよね。

ヘルメットとヘルメットがコツンとね。


もうひとつの今作の魅力。それが青柳を取り巻く人々。

前述しましたように、はじめ青柳はたった一人の孤独な戦いを挑みます。

ところがそんな彼を支援する人が出てくるんです。

大学の後輩・カズ(劇団ひとり)、仙台の地下に通じている保土ヶ谷(柄本明)、花火師・轟(ベンガル)、通り魔キルオ(濱田岳)ら。

警官(でんでん)、職場の先輩・岩崎(渋川清彦)の二人も泣かせる。特に岩崎が間髪いれずに吐いたセリフは鳥肌もん。

そして竹内結子演じる晴子が影でサポート。

青柳と晴子の間にはなんの連絡もない。ただ二人にだけわかる「サイン」だけで気脈を通じているんですよ。

忘れちゃいけないのが青柳のお父さん(伊東四郎)ね。「知っているんだ」…名言です。泣きました。

そして最後のあの文字も…号泣でした。


キャストにまったく無駄がない。

スタッフ全員が監督の意図を理解し、監督もまた原作の世界観をよく理解している。

かなり熱が入っちゃいました~。ホント、好きな作品なんですよね。



hiroでした。

「びっくりした?」