43本目(9月14日鑑賞)


観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-最強1


最強のふたり


電車の中でたまたま横に座った男二人の会話が漏れ聞こえてくる。聞こうとして聞いているわけでもないのに、二人の会話の内容、テンポが可笑しい。一言一句正確に聞こえているわけでなくとも大方話の内容が伝わってきてしまう。盗み聞きのようで申し訳なく思う。その一方で、早く、この二人のことを誰かに教えたくてしょうがなくなる。

…最強のふたり…そんな映画でした。


雇用保険の給付を受けるためには、就職活動をしているという証に、面接を受けたことを示すサインが必要。ドリス(オマール・シー)は、富豪でありながら事故で頸椎より下の感覚を失ってしまったフィリップ(フランソワ・クリュゼ)の生活介助の求人の面接を受ける。ところが、サインだけもらってすぐに帰るつもりだったドリスをフィリップは採用。

介護の知識どころか、要支援者を労わる気持ちすら持ち合わせていないドリス。手を動かせないフィリップに着信中の携帯電話を差し出すわ、「これは健常者用のキャンディ」と揶揄するわと、問題行動ばかりを起こす。見かねた一族から彼を解雇するべきだと進言されるが、フィリップは拒否。富裕と貧困、クラシックとヒップホップ、介護用バンとスポーツカー、あらゆる面で相反する二人の生活が始まる。


観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-最強2

「かわいそうな」フィリップと「乱暴そうな」ボリス


やたらと評判が良かった。hiroの周りでも絶賛する人が数人いました。絶対にいいと。迫力のアクション映画でもなく、ホームグラウンドでは109でしかやっていなかったこともあり、DVD鑑賞回しにしておりました。ところが、準ホームTOHOで、会社近くの日比谷シャンテで、やってるじゃありませんか。さすがシャンテ。ヨーロッパ系の地味な映画は得意中の得意。まして14日のTOHOシネマズデイで1000円。ほんじゃ行こうかな、と。


シャンテって…あ、すいません、首都圏の方しかわからない話題かも…ここの映画のセレクトはファンな人が多いですよね。hiroも嫌いじゃありません。ここでしか観られない輝きみたいなものを、ここのスクリーンで観ることができますよね。


映画館の話はさておき、紆余曲折を経て、結局観ることとなったこの作品。「いい」という評判から、勝手に「愛と感動の介護・友情の物語」というイメージを抱いていました。

これね、全然違いますよ。徹頭徹尾コメディ。最初から最後まで「お約束」の笑いの連続で、この日1000円ということもあり、ほぼ満席だったのですが、客席も声を出して笑ってました。シャンテのお客さんの映画を観る目はたしかだと、常々思ってはいたのですが、その客さんをして笑わせてしまう脚本、秀逸です。

で、当然差別ネタもちょいちょい出てくるのですが、この辺が脚本の妙。hiroは前から思っていたのですが、障害を持つ方をただ「かわいそうな人」と同情していればいいのでしょうか。彼(彼女)らはもっと「ふつうに扱ってほしい」のではないかと。以前、障害者枠で職人さんを雇用していた職場にいた経験上での考えです。

それで本作で、ボリスの問題行動をたしなめる一族の人間にフィリップが言います。「彼は差別をしない」と。障害があっても、健常者と同じように音楽を聴き、おしゃれをして、恋をするのです。ボリスはフィリップの生活をサポートします。できないことをやってあげます。それ以上はやってあげることはしません。その代わり、悩んでいれば彼の言葉で助言をします。背中を押してくれます。そうして二人の間に友情が芽生えます。「かわいそう」にみえるフィリップと「乱暴そう」にみえるボリスの友情。観た目で判断してはいけない…そういうことを伝えたいのかな、と。


観たい映画を観て、読みたい本を読んで、聴きたい音楽を聴く!-最強3


風俗嬢のサービス(笑)を受ける二人。


終盤、ボリスの家庭の事情を知ったフィリップは、ボリスに助言します。友人として。一度は離れる二人ですが、友情の絆は再び二人を結びつけます。

全編、お気楽な笑いで通していて、いわゆる「お涙ちょうだい」の演出はありません。それでも、再会し笑顔を交わしあう二人の表情に、ホンワカとした温かい感動が伝わってきます。なかなかの良作だと思いますよ。


エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督はフランス国内を中心に活躍する監督。4作目となる長編の本作は、フランス人の3人に1人は観たという大ヒット。ドイツ、オーストリア、韓国でもヒットとなって日本上陸。シャンテでの上映は長くなりそうな予感。全国でも時間をかけてじわじわとヒットしそうな予感もしてます。hiro自身、観た方の推薦により、いい映画を観ることができたと感謝。なので、hiroも推薦させていただきます。お近くの映画館にかかったら、ぜひ。


そうそう、この話、実話がベースになっているそうです。エンドロールで実際の二人の映像が入ります。最近、よく観ますね、この演出(笑)。



hiroでした。

アース・ウインド&ファイア、聞きたくなるよ。