会社を出るのが遅くなった。間に合うか。


第二水曜。Sakuの青葉台ライブ。18時スタート。


青葉台駅に着いたのは18時45分。静寂。終わったのか。


構内の階段を降りる。Sakuのステージへと降りる。


雨の青葉台駅。人影もまばら。間に合わなかったようだ。見ると、ライブ後のあいさつ回りをしているSakuがいる。


間に合わなかった負い目がある。このまま帰ろうかとも思った。


一生懸命に、今日の歌を聴いてくれた人たちと話し込むSaku。歌を聴いてくれた人に感謝し、ひたすら観客目線の感想に耳を傾ける。ほんのわずかでもいいから、聴く者の心をとらえるヒントを求めるように、貪欲に、聞き耳を立てる。


ブログのコメントの礼もある。声だけかけて帰ろう。


自分の番。


遅れて聴けなかったことを告げる。ブログで告知していた新曲の披露も間に合わなかったと。


「2回も歌ったんですよ」


言ってから、何かを思いついたように、「ちょっと待っててもらえます?」と去る。手伝ってくれている仲間と一言、二言、言葉を交わしてから、戻ってくる。


「そんなhiroさんのために、新曲だけもう一回歌っちゃいましょう」


ニコリと、思いもよらぬ一言。驚き。まだ一人ファンが残っている。照れる。


「ホントにいいの? 大丈夫なの?」


「一曲だけ」


一度しまったギターをケースから出し、急いで弦をはじきながら音を整える。


「新曲だけ、もう一回やります」


周囲の人にも声をかけ、Sakuのアンコール・ライブが始まった。


曲はANSWER。自分の夢は何だろう。答えはどこにある。わからないけど、答えを求めるためにいろいろなものを集めよう。…当然、初めて聴く曲。そんな歌詞だったと思う。


小さい子を連れた母親が立ち止まる。家路に向かう人々が振り返る。歌の中心にはSakuがいる。


音楽は聴くものだった、ずっと。CDを買ったり、i-podにコピーしたり。一人の生身のミュージシャンとの、ほんの些細な触れ合いで、音楽を感じ、音楽の中に共存し、空間を共有する体験をすることができた。


hiroでした。

*実話ですよ。sakuも夢に向かってがんばってる本物のミュージシャン。3月末の記事「SAY HELLO」にも本人了承の上で登場させちゃった人物です。今はCDも出していないので、みなさんご存知じゃないと思います。これから来ますよ。名前、覚えてくださいね。sakuですよ。応援してくださいね。sakuを。