続きです。
天使と悪魔を出したり無意識に巫女の力を使ったりと、コロナはちょっと精神的に複雑なところがあると思います。
二重人格とまでは行きませんが、記憶や力を制御するのは表に出ているコロナとは別部分で行っているような。
5年経って、その辺は収まるどころか強まってる方向にしてみました。
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ビーナスの怒声にシャドウがしどろもどろ抗弁しているのが聞こえたが、コロナは足を止めなかった。
別に怒っていたわけではない。
ビーナスはそんなに気にすることないのに、とさえ思う。
シャドウに悪気は全くないのだ。そういうところはハンターとよく似ている。
だが、彼らのやりとりを止めようとは思わなかった。
――ケンカできるだけでも、いいじゃない。
そう思えてならなかったから。
どちらもはそのことに気付いていないだろうし、きっと教えたところで本当には伝わらないのだろう。かつての自分がそうであったように。
以前の己とハンターを思い出す、シャドウとビーナスの姿。
微笑ましいはずなのに、どうしてだか気が滅入って仕方ない。
そんな自身がなんだか後ろめたくて、コロナは家を出てきてしまった。
――本当に今日の自分は変だ。
素直に認める。確かにハンターがいないのは寂しい。
でも今になって、何故こうも心が揺れるのか。
折りにふれハンターのことを思い出していたのは事実ではあるけれど。
ざわざわとした村の喧騒。
アラージャ村が小さな村とはいえ、人々の話し声や川の流れる音などは耳に届いてくる。
でも、四六時中それで沈み込んでいたわけではないのだ。
それではこの3年、とてもじゃないけれど仕事にならない。
ざわざわ。ざわざわ。
そう、3年。彼がいなくなったのは、そんなにも昔。
ざわざわざわ
そのざわめきとは別のどこかから聞こえてくる声。
『ねえ』
マナクル内のスパイダー達で、姿無き相手との会話には慣れてしまっているコロナ。
しかもその声は不思議と親近感を抱かせる。
考え事に気をとられていたこともあって、コロナは「何?」と驚くこともなく返事をした。
声の側も当然のように続ける。
続く
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