こうして、10か月近くの月日が流れ、

いよいよ出産を2週間前に控えた

ある日の夜。。。



 母は、

不思議な夢を見ました。



満月の夜空、

突然現れた金色の大きな大きな

龍が、

目前を悠然と飛び、

手には玉の代わりに

何故か男の赤ちゃんを握っていたそうです。

その子は屈託ない笑顔で、

きゃっきゃっ。。とはしゃいでいて。。



その後、

龍は、

物凄い音を立てて、

金の鱗を撒き散らしながら、




夜の大空の彼方に

勢い良く登って行き。。。



そして、ハッと、

目覚めたそうです。



次の日の朝、

その話を聞いた父は、

今度生まれる子も

男の子だと、言い、


そして、

「世紀の英雄」になって欲しいと願い、
(すいません。。完全に名前負けですm(__)m)

「紀 英」(のりひで)と

命名したそうです。



 その後、私はある理由から、

改名し、

今の名前、「廣 一」(ひろひと)となりましたが、

これはまた、

別の機会にお話致します。






 こうしていよいよ出産当日。。。

運命の9月1日を迎えました。


9月1日、昼12時過ぎ、

母に、激しい陣痛が始まりました。



 今までにない、

かなりの痛みだったそうです。



 そして、出産開始。。

しかし。。。


骨盤が狭く。。。

しかも、また開かない状況に。。。


主治医の伊藤先生は、

何度も母を励まし、

一緒に頑張ってくれたそうです。


そして、9月1日の夜になっても。。。

ずっと格闘が続き。。


とうとう。。。

次の日の朝を迎えたそうです。。。



 先生は、

何度も何度も、

意識なんてあるはずのない

なんと赤ちゃんの方に呼びかけていたそうです。。


 そんな。。生まれている途中の私が

分かるわけがないんですが。。。



 そして、

とうとう次の日の

9月2日の夜。。。


母が、ほぼ気絶状態。。。

かなり危険な状態になりました。。

 母は、どんどん眠くなって来たそうです。。


 先生は、必死に

「寝るな!!  寝るな!!」

と、叫んでいたそうです。



先生は、一刻の猶予もありません。。。

機械で引き出すか。。。

どうするか。。。



しかし、先生の取った行動は、

意外な行動に。。。


「気をしっかり持ちなさい!!

あなたは、この世に生まれたんですよ!!

生きなさい!!

生きて、生きて私の所まで来なさい!!

もう、あと少しですよ!!

もうあと少しで、外に出れますよ!!」



なんと、この呼びかけ。。。

生まれる途中の私に呼びかけたんです。。



これには、母も

もうろうとした意識の中、

びっくりしたそうです。。


ところが、

ここで不思議な事が

起きました。。



なんと、私が。。。


もぞもぞと

必死で動きだしたらしいんです。。。


そして、

先生の待つ、

外へ。。。

必死でもがいて、

骨盤を押しのけ、

出て来たそうです。。。



正直。。私。。

そんなバカな。。。と

思っています。。。


だって、信じられません。。

ありえません。。。



しかし、私は

こうして

9月2日22時20分、

出産いたしました。



本来ならば、

9月1日中に生まれる予定だったのですが、


実に34時間以上の長丁場。

先生も前代未聞の時間だったそうです。



 つくづく、

母親の意志の強さ、

生命の神秘を感じました。



 そして、もう一つ

不思議な事が。。。


なんと、私の両耳の耳たぶの後ろに


何故かくっきりと

爪痕が。。。



母は、思わず

「龍の爪痕だ!」と、実感したそうです。



 そして、私の生まれた年は

何故か、

辰年。



偶然がここまで重なると、

本当に不思議です。



 母は、

以前より予知夢を見たり、

どんな獰猛な動物が吠えていても、

母になでられて、

一瞬で静かにしてしまう、

不思議なところがある人でしたが、


私が生まれる時まで、

こんな不思議な事があったなんて。。


今まで、

知りませんでした。。


 実は私。。。


以前に、母より


「あなたが生まれてこなければ、

私は日本画家として、成功していたのに…」

と、子供の時に言われてから、


ずっと。。。

トラウマになり、

生まれてこなければ、良かった…と、

内心、

思って、

生きて来ました。



 この世に生れて、

意味のない人間になりたくなくて、

必死で勉強しました。




昨日の母との対話の時間は、

そんな誰にも言えなかった悩みを

抱えていた私の

トラウマにまでなった母に対する思いが、

少し解消出来た、

有意義な時間となったのかも

知れません。



 もしかしたら、

私は

少しは、母に愛されているのかも、

知れません。



 昨日から続く、

長い文章となってしまいましたが、

お読み頂き、

本当に

ありがとうございますm(__)m