どうせ死ぬなら 「がん」 がいい

中村 仁一 (なかむら・じんいち)
近藤 誠  (こんどう・まこと)

異端の医師が語りつくす 医療の”ウソ八百”
を読んでみました。


◆第1章 がんの誤解を解く

中村医師
もう20年以上も 「どうせ死ぬならがんがいい」
「死ぬのはがんに限る」
ただし、「治療をしないで」と、あちこちで口走ったり
本に書いたりしてきたので
「あんたの死ぬところを見ないうちは、死んでも死にきれない」という
熱狂的なファンが 年々増えちゃって
70歳を過ぎて 体のあちこち確実に弱ってきていますし・・
こういう腫瘍も育ってきて(のど元の、タマゴ大のしこりを見せながら)

これに対して 近藤医師
良性か悪性か、大きさや手触りである程度検討がつきますが
診断をやっていいものか・・・

中村医師
ノーサンキューです。知りたくないです。
講演のネタに使わせてもらってるので・・・
良性・悪性、どちらでもいいんですよ。
全く切る気もないし、病院に行く気もサラサラないんだから。
だって、 「がんで死にたい」 って言ってる人間が 病院に行ったらおかしいでしょう。
繁殖を終えるまで生かしてもらったんだから、もう十分。

等と(笑い)から始まる、確固たる信念の下に 2人が対談した内容の本です。


●どうせ死ぬなら 「がん」 がいい

「がん死」 のお迎えは最高ですよ
人生の幕引きを、思い通りに出来るかも 知れないんですから。
(がんという病気は、たいていは 最期まで意識はしっかりしてるから
ゆっくり身辺整理が出来るし、親しい人にお礼とお別れも言える。)

「ポックリ死」 だと そんなことやる暇がないし
「ボケちゃった」 ら 何も出来ないし
「寝たきり」 になったら いつ死ねるかわからない。

日本人には 「がんで死にたい」 なんて言う人は いないに等しい
外国では けっこう多いみたいですよ。

ポックリ逝けるなら、それが一番いいんだけど
なかなか そううまくはいかない。

例へば今、日本人の死因で がんの次に多い 脳卒中と心筋梗塞。
この2つは、ポックリ逝けると思われてるけど
「ウッ」ときて、一瞬のうちに死ねるなんてことは 殆ど無い。
何回か発作を繰り返し、半身不随になって リハビリで生涯を送る。
周りの人たちに迷惑をかけたり、介護する人も疲れ果てる。


●治療しなければ、がんはけっこうな病気

介護も 「いつまで」 ってものが ある程度わかると 辛抱もできるんですよね。
3ヶ月とか半年とか・・・
「やれるだけのことはやった」 という満足感もある。

家族も、最初は 悲しんでいるけど 疲れてきますよね。
「1日も早く 死んでくれんか」 と思うようになる。
家庭崩壊することもあるんですから。

長生きもけっこうだけど、どういう状態で生きるかが重要。
ボケたり、いつ死ねるかわからないままの寝たきり
植物状態で 生かされるのは 願い下げですよね。

その点、がんはけっこうな病気。
人間はみんな 致死率 100%の 「未決の死刑囚」 ですからね。
がんで手遅れと言われたら
執行日が 近未来に ほぼ確定し 準備ができるんですから。

本物のがんだと 闘病期間も短いから、周りが大事にしてくれて
至れり尽くせりだし、亡くなったら泣いてもらえるし。

ただし、治療しなければの話です。
今は、9割の人が医療死、つまり病院死をして
死ぬ前に たっぷりと地獄を味わされています。

がんは死ぬ直前まで 頭がはっきりしているし
対処法を間違えなければ 体もわりと動くんですよね。


●がんが痛むのではない。治療で痛む

がんは世間で思われてるほど痛まない。

がんがここまで嫌われ恐れられてる大きな理由は
麻薬を使っても時には抑えきれないほど
強烈な痛みや苦しみを伴い、のたうちまわって死ぬと思われているから。

痛みが強調されすぎて、痛まなかった人たちが表に出てこないから。

「治療しない」 というのはマイナスで、とても受け入れがたいと思われていますね。

患者はみんな、手術で痛んだり、抗がん剤で苦しむわけです。
「むかつく」 とか 「髪の毛が抜ける」 とか、色んな症状が出るってことは
抗がん剤がその人に すごい悪影響を及ぼして、ひどい負担で
体が 「やめてくれ」 って悲鳴をあげているということでしょう。
風邪薬では有り得ないことです。


●がんの9割に抗がん剤は無意味

治療で苦しんでも、なにかメリットがあればいいんですけど
例へば 乳がん、リンパ節を取っても生存率が上がらないことが
1985年までに証明されている。
なのに日本では、今も一生懸命リンパ節まで切り取っています。

日本人の がんの9割を占める 「固形がん」 は抗がん剤で治ることはないし
延命効果さえ 「ある」 と証明されたデーターはありません。

ほとんどの抗がん剤治療には、副作用と縮命効果しかないということに。

「固形がん」 というのは、胃がん・肺がん・肝臓がん・大腸がん・乳がん
のような、かたまりを作るがんです。


抗がん剤で治る可能性のあるがんーー

急性白血病や 悪性リンパ腫のような 「血液のがん」
子供のがん・睾丸の腫瘍・子宮の絨毛(じゅうもう)がん。
その1割、 急性白血病は 若い人は 抗がん剤で治りやすいんですが
年齢とともに難しくなって、60歳を過ぎるとまず治らない、無意味である。

手術や放射線で治らない再発・進行がんにも
抗がん剤は効きません。


●抗がん剤が 「効く」 とは、しこりが一時小さくなるだけ

抗がん剤で腫瘍を小さくしたり、腫瘍マーカーの数値を減らすことは出来ても
治すことは出来ません。

抗がん剤を 認可する時の 「有効」 という判定にしても
「がんのしこりが一定程度、小さくなる」 というだけ。

言葉のまやかしってありますよね。

医者が 「効く」 というのは、がんが治る、延命するという意味では全くない。

抗がん剤の 認可基準というのが
「画像診断で がんの面積が半分になって 4週間続く患者が 2割いたらOK」
(最近は 長さで決めるようになり、その場合は長径が 7割)
8割は 縮小効果すらなくても 認可されちゃう・・

がんのしこりは、抗がん剤でいったん小さくなったり
「消失」 しても、必ず また大きくなります。

むしろ急速に 小さくなったり消失すると
再発するスピードも速く、寿命を縮める結果になりやすい。

抗がん剤で延命できたように見えるデーターには
大きなウソが隠されています。
なのに、日本では 必ずと言っていいほど 抗がん剤が使われてしまう。


●「腫瘍内科医になるのは、おやめなさい」 の意味

抗がん剤は 猛毒だから、がん細胞より 正常細胞の方が
分裂するスピードが速いから、各臓器の機能が低下して
患者を苦しめたあげく、死んでしまう。

転移性の 固形がんは治らないから、抗がん剤治療は患者を苦しめるだけで。
一生の仕事にすると、患者の苦しみに寄り添う 感性を失いかねない。
治らない患者を診るのなら、感謝されるホスピス医のほうがよほどいい。


●ひとりも痛まない老人ホームの 「がん放置患者」

入所者は皆さん高齢で、多かれ少なかれ ボケ症状とか出ていて
家族からは 「できたらホームで看取ってほしい」 と言われます。

最初のうちは 「末期のがん患者に、痛みでのたうちまわられたらどう対処しよう。
とても手に負えないから、その時は病院に担ぎ込むしかないか」 と
何例も見ていきました。
すると前に話したように例外なく、痛まず死んでいくんです。

ホスピスでさえも、がんで痛む患者は 約7割と言われてる。
ホスピスっていうのは、治療で徹底的に がんを痛めつけたあと
辿りつくところなのに、それでも 3割は痛まない。

「痛まない」 ことは、決して珍しいことではないのに
がんで 穏やかに死んだ人にはーーー
「不思議なことに」 「奇跡的に」 って形式がつくでしょう。


●胃がんも肝臓がんも放置すればラクに死ねる。

不必要な手術をしたり、抗がん剤治療をしたりするから
苦しい死、悲惨な死になってしまうんです。

年齢を問わず、放置すると少しずつ体力が衰え
痛んだり苦しんだりしないで、枯れて眠るような 自然な死を迎えます。
例え、痛みが出ても モルヒネや放射線などの治療で苦痛を除くことができます。
また病巣によっては、食べられなくなって 眠るように死を迎えると考えられます。


●手遅れの幸せ。安らかな自然死

繁殖を終えて 生き物としての賞味期限が切れた年寄りには
「早すぎる死」 はないと思っています。と中村医師。

老人ホームの患者さんたちも、今までなんの屈託もなく
明るく普通に暮らしてきて
ちょっと体調が悪く、病院へ連れて行ったら
末期がんで もう手の出しようがない、ということがほとんど。

その時点で痛みを感じていないんですよね。
がんが痛むのなら もっと早い時期に見つかってたはず。

病院へ行くきっかけは痛みではなくーーー

血を吐いたり、お尻から血を流したり、痰に血が混じったり、
レンガ色の小便が出たり、体が真っ黄色になったり
食が細ってやせてきたり、息切れしたりということがきっかけになる。

苦しめたくないという家族の希望もあって
がんを放置しておくと、最後まで痛まず、消えるように逝かれる。

安らかに自然死するかーーー
1時間前まで ニコッと笑っていたというような 「突然死」 のどちらか。

がんの進行そのものも、世の中の人が思っているほど早くないんです。

胃がんで手術をしない患者さんを何人も診てきたけれども
悪性で進行が速いと言われる スキルス胃がんでさえも
診断が付いてから 数か月で亡くなった人は皆無です。

逆に肺がんやスキルス胃がんの治療を始めたら
数か月で亡くなったという話は、世間に溢れています。と近藤医師。


●がんの9割は 「末期発見・治療断念」 「放置」がいちばん

自然死というのは、何も口に入らなくなったまま
段々、意識が薄れていき だいたい 7日から 10日後に亡くなるんです。

自然死は、いわゆる”餓死”なんですが それはとても穏やかな死に方です。
飢餓状態では脳内に モルヒネ様物質が分泌されて良い気持ちになり
脱水によって血液が濃く煮詰まることで、意識レベルが下がって
ぼんやりとした状態になる。
さらに息づかいが悪くなって酸欠状態になると、これも脳内モルヒネ様物質が
分泌されると言われています。
また炭酸ガスもたまりますが、これには麻酔作用があります。

つまり 「死」 とは、心地いいまどろみの中での この世からあの世への
移行なんです。 本来、そういう自然の仕組みが備わっているんですね。


●家族ががんだとわかったら

固形がんの治療はあくまで、痛みが出てきたらそれを抑えたり
呼吸が苦しくなったら気道を広げる、などQOL(生活の質)を
維持するためだけにやればいいと思いますよ。
自分の家族にも常々そう言ってます。

治療の利益と不利益をちゃんと伝えて 「治療はやるな」 と言って
それでもやりたいと言ったらしょうがないですね。
抗がん剤治療についても 今まで十分に 「するな」 と洗脳してきてるけど
それでも言うことを聞かなければ それはしょうがない。と中村医師。

全く同感、患者さんが相談に来た時も 意見はできるだけ詳しく伝える。
それでも治療を受ける人はいるわけで。
そこに乗り込んで行って 引きとめることはしないし、やっても無意味ですよね。

自分の家族にも 「この治療は意味がない」 とか、いろいろ言ってきてるけど
いざ本当にがんになったら、人の気持ちはどうなるかわからない。
その時は、本人に任せますよ。 強引に治療を止めたりはしません。と近藤医師。





つづく・・・