新型インフルエンザの輸入ワクチンに免疫増強剤(アジュバント)が配合されているのは報道されているとおりです。


一方で免疫抑制剤というものがあって、そんなもの何に使うんだと不思議に思う方もおられるでしょうが、これは臓器移植医療で使います。
他人の臓器を異物として免疫系が攻撃するのを抑える目的で使います。
ところが副作用として、感染症にかかりやすくなるというのがあります。
副作用なのか本来の作用の負の面というべきなのか???


移植医療にともなって開発された免疫抑制剤とちがって、免疫増強剤の歴史は古いのです。
1881年アメリカのコーレイは、ガン患者が溶血性連鎖球菌に感染すると、ガンが縮小したり消失する例があることを知り、ガン患者に菌を感染させました。後には死んだ菌に替えましたが、時に劇的な効果をもたらしました。
これが世界初の免疫増強剤でした。
後に日本で騒ぎになった結核菌由来のガン免疫剤「丸山ワクチン」と同じようなものです。
「コーレイの毒素」と呼ばれ、効果は確認できたものの毒性ゆえに忘れられるようになります。
その後アルミニウム塩に免疫増強作用のあることがわかりますが、メカニズムは不明のままでした。


ところが既存のワクチンで歯が立たないAIDSと戦うために、免疫増強剤の研究が一気に進みます。
その結果、免疫系で樹状細胞の果たす役割と免疫増強剤のメカニズムがわかってきました。
細菌の脂質が樹状細胞に刺激を与えそれが免疫を仕切るキラーT細胞やB細胞に情報を送ることがわかりました。


そこで、脂質から毒素を取り除いたり脂質を合成したりすることによって免疫増強剤がつくられました。

ワクチンは幼い子供や高齢者では十分な免疫を得られないことがあります。インフルエンザで重症化しやすい対象が免疫を得られないという皮肉なことになります。
ところが、外国の免疫増強剤入りワクチンは、65歳でも90%以上が十分な免疫を得ることができます。

日本のワクチンにも入れてもらいたいもんです。


※丸山ワクチンとは:皮膚結核の専門家である丸山千里博士が開発したワクチン。結核患者にガンが少ないことから、ガンにも効果があると思われ丸山博士はガンに使うことにしました。ところが、ガンの専門家からは無視され厚生省からも無視されました。
これを効果があると信じた患者たちと対立することになり、マスコミも丸山ワクチンを支持しました。「国内の派閥による新薬潰し」という構図を描いたのですが、世界中のどの研究者も追随しませんでした。本当に効果があるなら世界中が放っておくはずがありません。iPS細胞のような有望な分野には世界の研究者が追随するのです。結局、結核専門家が作ったガンの民間療法みたいなものでした。