「相思相愛」破れた証人喚問 | 平野幸夫のブログ

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ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 

「心と心は一緒だったんだ」。国
会に証人喚問されることが決まる
直前、学校法人「森友学園」の籠
池泰典理事長は「安倍晋三首相か
ら100万円をもらった」とした
時の心の喜びを、参議院の視察メ
ンバーにこう打ち明けた。皇国賛
美の歴史・教育観を共有し「相思
相愛」だったはずの二人の仲がな
ぜこじれてしまったのか。まるで
俗世間の愛憎劇をみるようだが、
国有地の8億円ダンピングという
森友疑惑の核心にいた財務省理財
局長だった迫田英典国税庁長官と
首相夫人という主役級の二人がま
だ舞台に登場していない。このま
ま真相究明をおろそかにしないた

め有権者が厳しい視線を注ぎ続

けることが大事だ。


籠池理事長は最近「保守の方が誰
も助けてくれなかった」と恨み節
をよく口にしているという。「偉
人」とまで持ち上げて共感を寄せ
た安倍首相も「私の考え方に非常
に共鳴している方」「妻から『教
育に対する熱意は素晴らしい』と
聞いている」(2月17日国会答弁
)と疑惑発覚後さえ高く持ち上げ
ていた。


それが、疑惑報道がおさまらず、
1週間も経たずして「寄付金集め
に(安倍晋三記念小学校の)名前
まで使われたのは本当に遺憾で抗
議した」と手のひらを返すように
言われた。首相から悪し様に「非
常にしつこい」(同24日答弁)と
非難までされた。籠池理事長はも
う我慢がならず、「抱き合い心中
」覚悟で反撃に出たのが、今回の
「100万円受け取り」暴露では
ないか。



これにまた逆切れしたように「証
人喚問だ」と安倍首相が反応して
、これまで拒否していた参考人招
致から一転させ強硬姿勢に転じた
。「籠池つぶし」の執念を感じさ
せ、傍から見ても人間的な冷酷さ
を感じさせ、怖くなる。


やや話はそれるが、「籠池」の
「籠」という字から、歌舞伎の名
作「籠釣瓶(かごつるべ)」とい
う愛憎劇を連想した。あらすじは
こうだ。江戸・吉原の名高い花魁
「八ツ橋」にほれた田舎百姓「次
郎左衛門」が成金になって身請け
しようとする。しかし情夫のある
「八ツ橋」から満座の前で「愛想
づかし」をされて、大恥をかく。
それを恨んだ次郎左衛門が「籠釣
瓶」という村正の名刀で八ツ橋ら
大勢を殺害してしまう物語だ。


江戸・享保年間に実際に起きた事
件をもとにした芝居で、いつの時
代にも起こるような愛憎劇として
人気がある。森友疑惑になぞらえ
ると、籠池理事長の心境は、一度
は相愛の仲だった「安倍晋三」に
見捨てられた次郎左衛門にあては
まる。恥辱を晴らしたい意趣返し
のため籠池理事長は秘密の暴露で
「抱き合い心中」を図っているよ
うにもみえる。懐にあるのは「1
00万円受け取り」という刀では
ないか。それが本当に切れ味があ
るかどうかは、物証や証言次第だ
。そんな見立てをしたくなるのも
、今回の証人喚問が真相究明では
なく、単なる愛憎劇が先行してい
るようにように映るからである。


一方でファーストレディがこの局面

になっても、まだ園児に虐待まがい

の教育を繰り返す「オバハン」(籠

池夫人)とメールを交わす親密さと
大胆さにひどく驚く。人付き合い
に距離感を保てない安倍夫人には
ぜひ国会に来てもらい、一連の経
緯を率直に語ってもらいたい。そ
して「100万円授受」があった
とされる2015年9月15日の前
日、安倍首相に呼ばれ、官邸で面
談した迫田英典財務省理財局長(
現国税庁長官)には、不当な国有
地売却決定の判断をただしたい。
この二人の証言なくして、国会の
調査は不十分に終わり、結局籠池
理事長の告発だけの「トカゲのし
っぽ切り」で幕引きにされかねな
い。


23日の衆参両院の証人喚問はたっ
た4時間。与党は籠池証言の不十
分さ突いてくるだろう。ノンフィ
クション作家の菅野完氏による籠
池夫妻への取材によれば、夫婦の
証言や塚本幼稚園の事務室での1
00万円授受後の会計処理など、
心証は「真っ黒」に映るが、有力物

証として挙げる郵便振い込み票や
会計士の証言などが、どれだけ証
拠能力を保てるか、まだ不透明な
部分が多い。



時間割り当ての少ない野党は事前
に4党が調整し、核心の土地売却
価格のでたらめさを浮き上がらせ
ることに焦点をあて、質問を詰め
ておくべきだろう。そして、証人
喚問を籠池理事長の1回で終わら
せてはならない。森友疑惑に続い
て、愛媛県今治市の岡山理科大獣
医学部新設、千葉県銚子市の千葉
科学大など一連の安倍政権の教育
利権をめぐる疑惑解明のため調査
チームを発足させ、次の関係者招
致に備えるべきだろう。


        【2017・3・18】