「安倍晋三記念小」の深い闇 | 平野幸夫のブログ

平野幸夫のブログ

ギリシャ語を語源とする「クロニクル」という
言葉があります。年代記、編年史とも訳されま
す。2014年からの独自の編年記として綴りま
す。

 


「安倍政権」の放つ腐臭がぷんぷ
ん漂ってくる。学校法人「森友学
園」(籠池泰典理事長、大阪市)
が大阪府豊中市で新設予定の小学
校用地に9億円もの国有地をただ
同然で与えた売却疑惑は、想像以
上の病巣の根深さと広がりを思わ
せるスキャンダルである。なぜ、
いたいけな幼児に教育勅語を暗唱
させ、軍歌を歌わせるなど戦前賛
美の教育を刷り込む学校法人の小
学校が認可適当になったのか。過
大な埋設物撤去費の評価がまかり
通った理由は。「安倍晋三記念小
学校」名で寄付金集めが行われ、
安倍夫人が名誉校長を引き受けた
経緯は。解明すべき点は数多いが
、疑惑を覆い隠す岩盤の下から、
戦前回帰を志向する組織「日本会
議」の存在と人物ネットワークが
のぞき見えてくる。


興奮気味に顔を紅潮しながらの異
様な答弁だった。「私や妻が認可
、国有地払い下げに一切かかわっ
てないことは明確にしたい…私や
妻が関係したということになれば
、間違いなく首相も国会議員も辞
める」。17日の衆院予算委でこの
問題を追及された安倍首相は、経
緯を問われただけなのに辞任まで
口にした。籠池理事長との関係や
夫人が名誉校長を引き受けた詳細
な答弁はなかった。記者の取材の
心構えとして、「細部の場面が真
実を映しだす」と教えられるが、
この答弁を聞いた多くの記者が「
首相は痛いところを突かれ、むき
になって逆切れ気味になったので
は」と疑念を募らせたのではない
か。


この疑惑の報道の多くが、9億5
600万円の鑑定価格から近畿財
務局が地下のごみ撤去費と算定し
た8億1900万円を差し引いて
売却した対応だけを問題とする。
しかし、売却以前に、本来競争入
札だったのが、なぜ森友学園だけ
随意契約したのかも、ほとんど報
じていない。事前に汚染土壌の除
去費用として国が約1億3200
万円支払い、結局国の収入は約2
00万円に過ぎず、森友学園はほ
とんどただ同然で手に入れた不可
解さもクローズアップしていない
。民進党による21日の現地聴取に
、近畿財務局と大阪航空局の担当
者らはろくに説明できなかった。


国民の財産を預かり、1円たりと
も見逃さず厳しく算定する優秀な
財務局職員がこんなずさんな対応
したケースは見たことがない。こ
の疑惑は、目に見えない大きな不
当な力が働いているとしか思えな
い。本来、国民の財産が大きく棄
損されたのであれば、疑惑解明の
ため検察の捜査が行われるべきだ
ろう。しかし、まだその気配もな
い。残念ながら、最近の東京地検
と大阪地検の特捜部の凋落ぶりを
思う時、事件解明は期待薄と言わ
ざるを得ない。


もし、報道機関に調査報道の機能
が働けば、不正解明のきっかけは
つくりだせるはずだ。その端緒は
、さまざまあるように見える。「
財務局が全部チエックしていたら
問題なかった。職務怠慢だ」と他
人事のようなコメントをしている
松井一郎府知事だが、袂を分けた
上西小百合衆院議員のブログ発言
が興味をひく。


「維新から『塚本幼稚園』(注:
森友学園運営)を視察してその素
晴らしさを広めろと命じられた。…
森友学園問題は松井一郎大阪府知
事が認可した責任をとって終わる
でしょうね」


小学校はまだ「条件付きの認可適
当」段階で、放言の多い議員のコ
メントをすぐに信ずるわけではな
いが、解明のきっかけにになりそ
うだ。そもそも問題あるこんな小
学校が認可適当になったのか松井
知事や学校法人を管轄する文科省
は明解に説明する義務がある。そ
の過程から究明材料がでるかもし
れない。いずれにせよ、政治家の
介入なくして、こんな疑問だらけ
の認可手続きや土地売却がまかり
通るはずがない。



「よこしまな考え方を持った在日
韓国人・支那人」との文書を幼稚
園の父母に配布した籠池理事長は
極右組織「日本会議」の大阪支部
幹部である。差別的なヘイトスピ
ーチを頻繁に口にする人物で、園
児の父母らから損害賠償まで申し
立てられていることも、新たに明
るみになった。安倍首相を「偉人
」として讃え、日本会議の国会議
員懇談会特別顧問を務める安倍首
相や麻生太郎財務相らと歴史観を
共有しているとみられる。認可適
当が認められた2年前の文科相は
同懇談会副会長の下村博文氏。

昨秋、籠池理事長に感謝状を贈っ

た稲田朋美防衛相は同懇談会の

政策審議副会長を務めた。いずれ

も安倍首相の側近である。主要な

登場人物の多くが「日本会議」の系
譜でつながっているのは、隠しよう

がない。


今回の疑惑の中心にある近畿財務
局を管轄する立場の麻生財務相は
「適正な手続きによって処分を行
っていると承知しているから私ど
もとしてはこれ以上のお答えのし
ようがないというのが言い分だと
思う」とかばってみせた。しかし
明白な積算根拠が説明できなけれ
ば、財務局の判断は背任行為に等
しく、ひいては財務相の責任にも
なるはずである。こんな隠ぺいを
認めるような答弁が許されるはず
もない。


もし検察が機能しないのなら、今
後は国会での集中審議で、籠池理
事長や大阪府の小学校認可担当者
ら、近畿財務局長らの証人喚問も
必要になるのではないか。この疑
惑は別に、偏向教育による教育基

本法の逸脱、官僚腐敗などをはら

んでいる。


「事件は時代を映し出す鏡」とい
う言葉はジャーナリズム界の古い
言葉だが、今回の疑惑はこの国の
右傾化による病理を多く映し出して

いるように見える。そして何より未
来ある子どもらを、勝手な思想教
育や利権で汚してはならないとい
う思いが募る。


    【2017・2・23】