朝6時頃、白谷雲水峡入り口から歩き始めて縄文杉に着いたのは夕方の6時頃。
登山ド素人の私にガイドさんとうちの旦那さんがゆっくりと歩みを合わせてくれ、無理なく目的地に着く事ができた。
縄文杉と出会った初めての感想は・・・・・・実は複雑だった。
私自身の問題なのかもしれない。
縄文杉の周りにめぐらされた展望デッキ、根を守るために引かれたシート、人間がこの森に必要以上に入ってくることによって、失ってしまったもの・・・・・。
縄文杉の樹齢は一説には7200年という説もある。
縄文杉が発見される昭和42年までは、ほとんどこの場所に人間が踏み入れることなく、何千年という長い年月をかけてたくさんの微生物、菌糸、木々たちの命を支える根がびっしりと今よりももっと原始の形で残っていただろう。
”人間が良く見えるように”と作られた今の環境は縄文杉にとってどうなのかな?
しばらく自問自答が続いた。
そしてミーハーな気持ちでこの場所に来てしまった自分を少し恥じた。
虫に刺されて体は痒いところだらけ、そして複雑な気持ちのまま、夕飯を終えて高塚小屋で眠りについた。
翌朝は4時半に起きて、ガイドさんの作る朝ごはんを食べ、5時半に高塚小屋を出発。
前の夜は色んなことを考えてしまったけど、でもやはり縄文杉は美しかった・・・・・・・。
夕方見たときよりも、朝の陽の光を浴びてより一層神聖で何千年もこの地を生き続けた圧倒的な生命力を醸し出していた。
その場所にいるだけで吸い込まれるようなエネルギー。
この地で何千年とあらゆる生き物の生と死、輪廻転生を見届けてきた縄文杉。
深い瞑想者のような静寂を持ち続け、命をここまで繋いできたその姿に私が何をどう感じようと、何も変わることはないのだ。
ただ一つ、私の中に人間としてすべきこと、してはいけないこと、たくさんの問いかけを残し与えてくれたことは確かだ。
私は心の中で手を合わせ「ありがとう」と言って縄文杉に別れを告げた。
二日目は雨が降りそうだったので、行きよりも少しだけペースを上げて下山をした。
霧がかった森の中はより一層美しかった。
夕方の白谷雲水峡は、前日の朝の表情よりもずっと優しく、心の一つ一つのひだに入り込んで無償の癒しを与えてくれた。