落合博満の「采配」を読む。35万部も売れているそうだ。
本の帯には、
「監督として結果を出した人の言葉には、説得力があります。」(20代)
「深い洞察力に脱帽した。人生にも、十分参考になります。」(40代)
などと書いてある。 何とも意味不明のコメントだ。

気になった言葉を挙げてみる。
1.数字と戦うな。数値目標がノルマに変わり、義務となり、自分を追い詰める。
自分と戦え!相手と戦え!
2.邪念を振り払い、今、この一瞬に最善を尽くす。
3.自分の仕事は何なのかをしっかり見据え、行動しなければならない。
4.ただ、ひたすら勝利を目指していくこと。
5.組織を統括する立場になったものは、まず、部下たちに「こうすればいいんだ」という方法論を示し、それで部下を動かしながら「やればできるんだ」という成果を見せてやることが大事だ。
6.人材育成は「自分で考え、動き、成長させる。」
7.負けるにしても、どこにチャンスを残して負けるか。
8.後進や部下の育成は守るべき順番を守り、必要な時間をかけなければならない。

この本には、自己啓発の部分と組織運営の部分とが、混在しているので、読む人のニーズによって、見所が変わってくる。
私は、組織がいかに勝つかという観点で読んだので、上に上げた項目は組織運営中心になっている。

読んで、なるほど!このやり方なら何度も優勝できるなと感じた。
ふむ。落合博満は名監督である。
組織を預かるものの最も大事なことは、どうすればその年の戦力で勝てるかという方法論を持っていることと、戦力の底上げ、つまりメンバーの育成方法に一言を持っていることである。

日本の一般的風景では、これがない。部長は、課長に目標というノルマを与え、数字を追いかけることを仕事だと思っている。 人材育成も、課長の仕事だと思っている。わけのわからないスローガンばかり唱え、数字の追求ばかりする。
つまり、方法論がないのである。方法論を持ってないのである。
落合博満は、方法論を見つけることに呻吟、その後は、環境の変化に注視する。
まさに、名監督である。

しかし、こういう名部長は、役員にはなれない。 見えざる集団的嫉妬が、名部長の追い落としを図る。追い落とさなければ、自分の身が危うい。 見えざる集団的自己保存勢力が、名部長を追い落とす口実を探す。 落合の場合、ファンの低下という名の言いがかりだった。 彼らにとって、理由などなんでもいい。 自分を守ることができればいいのだ。

あ~!哀しき落合博満。 あ~!哀しき中日ドラゴンズ!
落合の作り出した常勝の方程式は、時と共に風化していき、中日は長い低迷期を迎えるに違いない。企業が勝ち続けることができない一因をこの事例に見る。

おぞましきは、日本人の嫉妬。見えざる集団的追い落とし。
日本の歴史は、この繰り返しかもしれない。