シノドスリーディングス第二段、若手経済学者の飯田泰之をメインに、岡田靖、赤木智弘、湯浅誠らとの対談を収録


この本を読むと社会問題を語る言葉が哲学や文学から、プラグマティックな社会工学にかわってきたなと強く感じる。飯田泰之の言う経済学的思考というのも、つまりはそういうことだ


特に赤木、湯浅との対談が面白い。今の日本で個人の生涯賃金を決める最大の要因は、高校か大学卒業の年齢の時にたまたま景気がいいか悪いかだという。さらりと語られているがこれはスゴく恐ろしいことだ。つまり、生まれた年で給料が決まると言ってるも同然だからだ


湯浅誠の言う経済的セーフティネットからも地域のコミュニティからも切り離されて、いかな生活の保証も、這い上がる道もなくした貧困者たちの境遇も読んでいて肌が冷えるものがある


それらに対して飯田泰之が提示する処方箋はシンプルで、累進課税の強化と負の所得税、インフレターゲット、そして何より、ルールの維持された新自由主義市場のもとでの経済成長だ


これは一般的な読書家を驚かせる結論だろう。貧困や格差などの拡大の原因は、俗流左翼的に言えば、成長最優先でセーフティネットを無視する新自由主義政策というのが事実上の常識になっているからだ


しかし飯田泰之はそれらに対し、それは曲解された新自由主義であり、フリードマンもハイエクも生活保証の重要性を否定などしていないという。また、ケインズとハイエクの対立という論点も疑似問題であり、今の経済学は場合によってケインズ的視点とハイエク的視点を使い分けるとか


経済成長が必要だというのもある意味当たり前の話で、どんな貧困対策も社会保証も、財源としてのお金がなければ成り立たない。そして、増税より何より、お金を増やすにはどうするか。そこで経済成長という話しになる


その基本認識をベースに、同じエコノミストであり著者の師にあたる岡田靖や中年と若者の世代間格差を問題にする赤木智弘や、反貧困運動のスター、湯浅誠と現代の経済問題を広く語っている


赤木、湯浅両氏とも飯田泰之と認識の相違はあまりなく、対話は極めて建設的に進んでいる。特に、学問知と実践を考える上で、湯浅誠との対談は必読のハイクオリティ


今、災害にあった日本が、改めてどう復興し経済成長をとげるか。それを考えるために絶対必要な視点も、この本は与えてくれる