前回のブログで
「自覚症状があって、来院して診断が下される小児(思春期)甲状腺がんの数」と
「実際に潜在して、有病率している小児(思春期)甲状腺がんの数」はそもそも違い
直接比較するのはおかしい旨のお話をいたしましたが
「そんなこと本当にありえるの??」と疑問を持たれた方もいるかもしれません
そこで、甲状腺がんについての論文を引用したいと思います
甲 状 腺 微 小 癌
木 下 誠 一
http://www.epu.ac.jp/uploaded/attachment/1014.pdf
より
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甲状腺潜在癌
臨床的な徴候が認められず,死後剖検によりはじめて甲状腺癌の存在が確認される甲状腺潜在癌が本邦でも3%から10%存在すると報告8 ~ 10)されている。
その殆どは腫瘍径5㎜以下の乳頭癌であり,臨床的に発見される乳頭癌とは生物学的性格において明確に区別でき,生命予後やQOLには影響しないとされてきた。
甲状腺微小癌
最大径10㎜以下の甲状腺癌を微小癌といい,その殆どが組織学的に乳頭癌であり,臨床的には問題にならず潜在癌としてずっと留まっているのではないかと推測されてきた。因みに最大径10㎜の甲状腺腫瘤は,甲状腺における存在部位にもよるが,痩せた人では触知可能,太った人では触知困難な大きさである。
20年前くらい前から7.5MHzあるいは10MHzの超音波診断装置が本邦に広く普及,数㎜大の病巣も検出可能となり,超音波ガイド下に穿刺吸引細胞診を行うことにより3㎜大の甲状腺微小癌が容易に診断できるようになり11),触知困難で無症候性の微小癌が多数発見されるようになった。
宮内12)は乳頭癌の細胞診グレード分類を行い,その細胞形態から大部分の微小癌は通常の大きさの乳頭癌に比し単にサイズが小さいものあるいは早期のものでなく腫瘍の性質がよりおとなしいものであると述べている。
武部ら13)は,30歳以上の健康な女性に対し超音波検査と超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行い,甲状腺癌発見の基準を腫癌径3㎜以上とすると女性の3.5%,7㎜以上で1.5%,10㎜以上としても0.9%に甲状腺癌がみつかり,3 ~9㎜の乳頭癌は女性1万人当たり262人になると推定している。本邦での甲状腺癌の罹患率は,前述の如く女性10万人あたり7.5人と推計されており,格段の開きがある。微小癌の殆どは臨床的に問題にならず,潜在癌
として留まっていると推測される根拠がここにあると考えられる。
甲状腺検診に超音波検査を行っている他の多くの機関でも,多数の微小癌がみつかり,初めは早期発見,早期治療ができるとの発表がなされたが,あまりに多い発見率から,微小な癌を見つけることは患者にとってかえって不利益なのではとの反省がなされるようになった。14)
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![$ベレッタのナナメ45度視点!出張所](https://stat.ameba.jp/user_images/20130215/11/hina8989/ea/6c/j/t02200311_0800113112420343979.jpg?caw=800)
![$ベレッタのナナメ45度視点!出張所](https://stat.ameba.jp/user_images/20130215/11/hina8989/ad/37/j/t02200311_0800113112420340797.jpg?caw=800)
![$ベレッタのナナメ45度視点!出張所](https://stat.ameba.jp/user_images/20130215/11/hina8989/90/44/j/t02200311_0800113112420340796.jpg?caw=800)
ここで重要なのは
「従来の成人女性の甲状腺がんの罹患率は女性10万人あたり7.5人(1万人あたり0.75人)」であるのに対して
30代以上の健康な女性への調査によって、自覚症状の無いような微小ながん(3~9ミリ程度)のものは、確率的に言うと1万人あたり262人に見つかったとしています。
大きさを「10ミリ以上」としても0.9%、つまり1万人あたり90人に発見できるということです。
「大きさが10ミリ以上」に限っても、従来言われている罹患率「1万人あたり0.75人」と有病率「1万人あたり90人」には120倍もの開きがあります。
小さな物や、自覚症状のないものまで含めると、成人の甲状腺がんの有病率は従来の「罹患率」と大幅に違うということがわかると思います。
仮に成人の甲状腺がんも、同じように福島県で調べた場合、普通に言われている「罹患率」と比較すると、大きく違うことが予想されます。
今、騒いでいる方は、この2つの、「違った指標についての差異」を問題にしているのですが、実際に大きな差異が存在することが過去の研究で解っております。
これを直接比較しても意味が無いことは、お分かりいただけたと思います。
故に
従来言われている「小児甲状腺がんの罹患率(来院して判明したものを小児人口で割った結果の100万人あたり1~2人)」と
「疫学的に調査した結果(微小な癌や自覚症状のないものも含む)」には開きがあって当然です。
これを考慮せずに、騒ぐのは、全くおかしなことだと考えます。
もう一つ注意していただきたい点は
甲状腺がんは罹患率で見ても年齢階層で大きな違いがあります
![$ベレッタのナナメ45度視点!出張所](https://stat.ameba.jp/user_images/20130215/11/hina8989/ba/d5/j/t02200159_0660047812420336980.jpg?caw=800)
今の子供達が成長して、年齢が上がるにつれて甲状腺がんは罹患率でも、「自然に、普通に増えてきます」
ただ、その増加率が、チェルノブイリで見られたような「普通の年齢階層別の増加率」を超えるようなものだと
「影響がある」と判断されるのです。
なので大事なのは、
「今後の変化の度合い」だと考えますし、こうした要因を考慮した以上に増えるかどうか?(有意な増加)対照データよりも増えるかどうか?(因果関係)
なのです。
よく、皆様から今後の見通しを尋ねられますが
「福島県の子供の甲状腺被ばく線量(チェルノブイリの1000分の1のレベル)から考えると、年齢ごとの増加率以上に増えることは考えにくい(まず、ありえない)」
というのが私の見解です。
「自覚症状があって、来院して診断が下される小児(思春期)甲状腺がんの数」と
「実際に潜在して、有病率している小児(思春期)甲状腺がんの数」はそもそも違い
直接比較するのはおかしい旨のお話をいたしましたが
「そんなこと本当にありえるの??」と疑問を持たれた方もいるかもしれません
そこで、甲状腺がんについての論文を引用したいと思います
甲 状 腺 微 小 癌
木 下 誠 一
http://www.epu.ac.jp/uploaded/attachment/1014.pdf
より
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甲状腺潜在癌
臨床的な徴候が認められず,死後剖検によりはじめて甲状腺癌の存在が確認される甲状腺潜在癌が本邦でも3%から10%存在すると報告8 ~ 10)されている。
その殆どは腫瘍径5㎜以下の乳頭癌であり,臨床的に発見される乳頭癌とは生物学的性格において明確に区別でき,生命予後やQOLには影響しないとされてきた。
甲状腺微小癌
最大径10㎜以下の甲状腺癌を微小癌といい,その殆どが組織学的に乳頭癌であり,臨床的には問題にならず潜在癌としてずっと留まっているのではないかと推測されてきた。因みに最大径10㎜の甲状腺腫瘤は,甲状腺における存在部位にもよるが,痩せた人では触知可能,太った人では触知困難な大きさである。
20年前くらい前から7.5MHzあるいは10MHzの超音波診断装置が本邦に広く普及,数㎜大の病巣も検出可能となり,超音波ガイド下に穿刺吸引細胞診を行うことにより3㎜大の甲状腺微小癌が容易に診断できるようになり11),触知困難で無症候性の微小癌が多数発見されるようになった。
宮内12)は乳頭癌の細胞診グレード分類を行い,その細胞形態から大部分の微小癌は通常の大きさの乳頭癌に比し単にサイズが小さいものあるいは早期のものでなく腫瘍の性質がよりおとなしいものであると述べている。
武部ら13)は,30歳以上の健康な女性に対し超音波検査と超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行い,甲状腺癌発見の基準を腫癌径3㎜以上とすると女性の3.5%,7㎜以上で1.5%,10㎜以上としても0.9%に甲状腺癌がみつかり,3 ~9㎜の乳頭癌は女性1万人当たり262人になると推定している。本邦での甲状腺癌の罹患率は,前述の如く女性10万人あたり7.5人と推計されており,格段の開きがある。微小癌の殆どは臨床的に問題にならず,潜在癌
として留まっていると推測される根拠がここにあると考えられる。
甲状腺検診に超音波検査を行っている他の多くの機関でも,多数の微小癌がみつかり,初めは早期発見,早期治療ができるとの発表がなされたが,あまりに多い発見率から,微小な癌を見つけることは患者にとってかえって不利益なのではとの反省がなされるようになった。14)
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![$ベレッタのナナメ45度視点!出張所](https://stat.ameba.jp/user_images/20130215/11/hina8989/ea/6c/j/t02200311_0800113112420343979.jpg?caw=800)
![$ベレッタのナナメ45度視点!出張所](https://stat.ameba.jp/user_images/20130215/11/hina8989/ad/37/j/t02200311_0800113112420340797.jpg?caw=800)
![$ベレッタのナナメ45度視点!出張所](https://stat.ameba.jp/user_images/20130215/11/hina8989/90/44/j/t02200311_0800113112420340796.jpg?caw=800)
ここで重要なのは
「従来の成人女性の甲状腺がんの罹患率は女性10万人あたり7.5人(1万人あたり0.75人)」であるのに対して
30代以上の健康な女性への調査によって、自覚症状の無いような微小ながん(3~9ミリ程度)のものは、確率的に言うと1万人あたり262人に見つかったとしています。
大きさを「10ミリ以上」としても0.9%、つまり1万人あたり90人に発見できるということです。
「大きさが10ミリ以上」に限っても、従来言われている罹患率「1万人あたり0.75人」と有病率「1万人あたり90人」には120倍もの開きがあります。
小さな物や、自覚症状のないものまで含めると、成人の甲状腺がんの有病率は従来の「罹患率」と大幅に違うということがわかると思います。
仮に成人の甲状腺がんも、同じように福島県で調べた場合、普通に言われている「罹患率」と比較すると、大きく違うことが予想されます。
今、騒いでいる方は、この2つの、「違った指標についての差異」を問題にしているのですが、実際に大きな差異が存在することが過去の研究で解っております。
これを直接比較しても意味が無いことは、お分かりいただけたと思います。
故に
従来言われている「小児甲状腺がんの罹患率(来院して判明したものを小児人口で割った結果の100万人あたり1~2人)」と
「疫学的に調査した結果(微小な癌や自覚症状のないものも含む)」には開きがあって当然です。
これを考慮せずに、騒ぐのは、全くおかしなことだと考えます。
もう一つ注意していただきたい点は
甲状腺がんは罹患率で見ても年齢階層で大きな違いがあります
![$ベレッタのナナメ45度視点!出張所](https://stat.ameba.jp/user_images/20130215/11/hina8989/ba/d5/j/t02200159_0660047812420336980.jpg?caw=800)
今の子供達が成長して、年齢が上がるにつれて甲状腺がんは罹患率でも、「自然に、普通に増えてきます」
ただ、その増加率が、チェルノブイリで見られたような「普通の年齢階層別の増加率」を超えるようなものだと
「影響がある」と判断されるのです。
なので大事なのは、
「今後の変化の度合い」だと考えますし、こうした要因を考慮した以上に増えるかどうか?(有意な増加)対照データよりも増えるかどうか?(因果関係)
なのです。
よく、皆様から今後の見通しを尋ねられますが
「福島県の子供の甲状腺被ばく線量(チェルノブイリの1000分の1のレベル)から考えると、年齢ごとの増加率以上に増えることは考えにくい(まず、ありえない)」
というのが私の見解です。