ガールズ・マンション 前編 | 931

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第六天が雨yayoiが晴れとせん

 僕の名前は 小郷 雄也(オゴウ ユウヤ)27歳のシガナイ資産家だ


父親が教授職で母は専業主婦だけど公務員の家系で有る僕は
幼い頃から立派な人に為ると周りから期待され育てられてきた


そんな思いとは裏腹に自由奔放に生きた僕は
家族や親戚に迷惑かけるなと一定の生活費を支給され飼い殺されている



そんな訳で、お見合いしても年収は親の仕送りで800万などと書くしかなく
結婚は勿論、恋人が出来るわけもない


そんな僕を見かねて知人が誘ってくれたのがガールズ・マンションだ


出会い喫茶の様なモノで女性は無料で建物内の漫画やシャワーなどを利用できる
ただ、食事は実費で寝床の利用にはポイントを利用しないといけない


このポイントはマンションに訪れた男性客に指名されると1週間の泊まる権利が与えられるのだ


生きる為にマンションの住人は常に身形に気を使い
一週間以内に拾ってもらえる様に、いつ追い出されるとも知れないマンションで地獄の7日間を生きてるのだ




 僕と友人は受付で高額なマンション立ち入り券を購入し中に入った


ロビーを進み奥に有るエレベータに乗ると遠くからスピーカーから単調な短いメロディーと
受付に居たであろう男の声が聞こえた「2名様ご入場~♪」



7階建ての建物のまずは2階を押した


エレベーターを降りるとソコは既に部屋の中で淡いピンクの絨毯に
椅子やテーブルが無造作に置かれTVが6台置かれていた


パソコンやゲームも何台か置かれていて
女の子達は寝転がったり談笑したり思い思いに楽しげに生活している様だ


自動販売機も無料で使えるようで置くには寝室やシャワールームが有るのだろう


ただ立ち竦んでる僕に友人が声を掛けてきた
「良い子いた?」見渡せば皆、可愛く年齢も若い子が多い


みんなとデートしたいと思った僕は
一番、好みの子に声を掛けてみた「あの~・・すみません!」
声を掛けた子はチラリと一瞬僕を見たけどダルそうに「いま忙しいんで」と携帯に視線を戻した


他の女の子たちも一瞬だけ僕達を見る人も要るけど
すぐに視線を逸らし、まるで僕達が見えてないようだ


「さすがに一日目は無理か・・・」友人がボソリと呟き
エレベータに乗った
僕も慌てて友人の後を追いエレベータに乗り込んだ。




 3階で降りると下の階と殆ど変わらない小奇麗な空間が広がっていた
違う事と言えば、何となく部屋が広く感じる事くらいだ


相変わらず物思いに楽しんでる女の子達を尻目に
詰まらなさと、足に若干の気だるさを感じた時に独りの女の子が話しかけてきた


「始めましてコンニチワ」僕は後ろを振り向き本当に自分に話し掛けたのか確認したけど
後には誰も居ない


ドキドキしながらコンニチワと、そつなく返した
「よかったらお話しませんか?」と続ける彼女に促されるままに二人で椅子に腰掛けた



髪は真っ黒のロングヘアーで歳は10代だろうか?
どうしてコンナ普通の子がこんな所に居るのだろう?


簡単な自己紹介を終えた後、
彼女に興味を持った僕は質問してみた

「恋人を探してるんですか?」
少しの沈黙の後に彼女は静かに首を横にふった


高校を出た後に就職が決らず
家に居ても親に働けと怒られる毎日で
居場所が無くなった彼女は、このマンションに辿りついたと言うのだ


家に居ればゴク潰し扱いされ生かされてる僕には彼女の気持ちが良くわかった


「僕と同じだ…」思わず出てしまった言葉に同類扱いした申し訳なさを感じながら
自分の身の上を話し「今は信じられないかも知れないけど人生為る様に為るから…」と
駄目な大人らしく説得力のない言葉で彼女を勇気付けようとした自分に苛立った


「小郷さんは彼女さんを探しにマンションに来たんですか?」

質問された僕は少し悩んで素直に頷いた

「こんな所で出会ってもと思うけどね」

苦笑する僕に釣られたのか彼女も静かに笑いながら寂しげに僕を見た


僕は彼女から眼を逸らし考えた


美しく可愛らしい人だし僕なんかに話しかけてくれた


このマンションに住んでる理由も止む終えないモノだ


だけど余りに幼すぎる

年齢と言うより親に怒られたから家を出た一時的な家出で此処にいる

例え恋人同士に為っても長く関係は続かないだろう


親だって心配してるだろうし
僕が彼女を指名しなくても生きていけるだろう


「おい!雄也!上に行こうぜ」友人の声にハッとした僕は
彼女にお辞儀をしてエレベータに乗った


俯いてた彼女が顔を上げて何かを言おうとした事に気付いた時にエレベータの扉は閉まった

なぜだか胸が痒い感じがして少し息苦しさを覚えた




 4階は明らかにガランとしていた


部屋そのもの広さは変わらないし女の子の数も変わらない
けれど部屋が広く感じる


そうか・・テレビが少ないんだ。

違和感の正体に気付いた僕はテレビの数を数えた

偶然かこの階と同じ数の4台のテレビが置かれていた



チラチラと僕達を見る女の子の視線に気恥ずかしさを感じていると
友人が小声で「あの子なんてどうよ?」と顎で独りの女の子を指した


そんな周りに判るような態度で聞かれたら
良いとも悪いとも言えないじゃないか…と黙ってる僕を横目に
友人は好みの子が居ると積極的に話しかけ何が食べたいかとか今夜の予定を聞いたりしている



さっき友人が指した女の子は確かに僕好みの可愛らしい顔で
こんな人とデート出来たら楽しいだろうなぁ~て思った


僕の視線に気付いたのか僕の方に歩み寄ってきて目の前で立ち止まった

その大胆さに驚きながらも悪い気はせずムシロ自然に笑顔に為ってる自分に驚いた



好みの人に近寄られて悪い気がする訳のない僕は彼女のリードで楽しく会話をしていた

「私、胸ないからモテないんだよね…」という彼女に
そんな事ないよと、恥ずかしく力説する僕は何だか初めてキャバクラに遊びに行った客の様だ


彼女が「どんな人が好みなんですか?」と聞いてきたので
何て答えようか悩んだ


貴方が好きなタイプです!なんて言えないし
顔は好みだけど遊んでる感じが…なんて胸の内を全て言える訳も無い



押し黙る僕を見かねた友人が助け舟を出してくれた

「俺達、飯たべに行くんだけど食べたい物とか有る?」
「お肉食べたーい!」と笑顔で言う彼女に
友人が「お前、絶対遊んでるだろw」と突っ込んだ

「そんな事ないですよぁ」と言葉遊びを続けてる彼女と友人を見て居ると
なんだか別の世界の人達を見ている様で
此処だけ夜の世界なんじゃないかと思えた



長年の付き合いで僕が純粋な人を好きな事を知ってる友人は
「上の階行きたいから、またねぇ~♪」と切り出すと
彼女も笑顔で「ハーイ♪」と笑顔で見送った



エレベータに乗り込んだ僕が閉まり行く扉の向こうに見た彼女の姿は
眉間にシワを寄せ別人の様だった




後半に続く

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