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第329回『仏教心理学の恩恵:苦しみの解消と心の平安・智慧と自己実現・慈悲に生きる』(2017年5月21日福岡 62min)

1)仏教心理学とは

仏教は、信仰である宗教の部分以外に、哲学・科学・心理学の要素がある。この仏教の心理学・哲学の部分は、心の苦しみなどの解消を目的としたものであり、仏教心理学、仏教の人生哲学などと呼ぶこともできる。


2)仏教心理学の三つの恩恵

1.苦しみの解消・心の平安:四諦八正道

仏教の心理学では、人の苦しみの原因は、間違った見方(無智)によって、苦しみを招くものにとらわれることであるとする。よって、その解消法は、正しい見方を体得し、とらわれを解消し、苦しみを解消することである。具体的には、仏教開祖の釈尊が説いた四諦・八正道などの理解と実践です。
なお、この中で、一切の存在は、それにとらわれれば、今は喜びであるものも、後に様々な苦しみの原因になるという苦(=ドゥッカ)の思想の理解が重要です(一切皆苦)。

2.知性(智慧)の向上・自己実現:止と観・禅定と智恵

仏教の心理学では、心が不安定で散乱していると、物を正しく見ることができず、心が静まって安定し、集中が高まると、正しく見ることができます。具体的には、止と観、禅定と智慧という教えです。これは、スポーツのゾーン状態、心理学のフロー状態、武術の無心の境地などに通じるが、勝敗や損得といった我欲にとらわれず、ただ今なすべきことに集中した状態が、最高のパーフォーマンに繋がるという理論です。

3.慈悲に生きる新しい道:万物への愛

無智によるとらわれを解消し、苦しみを解消した人には、苦しみは、自分に対する過剰なとらわれを取り除いて、万物を愛する慈悲を培うための愛の鞭・仏の導きとも解釈されます。すると、苦楽を含めた一切の経験を(悟りに導く)恩恵と見て、この世界を仏の浄土だととらえ、万物への感謝・尊重・愛に生きることも可能となります。
こうして、一切はとらわれれば苦しみだが、とらわれない境地からは喜びとなるものでもあり、その意味で、楽や苦には固定した実体がないという思想に発展します(一切皆空)。