---文ちゃんに捧ぐ、短い手紙

文太くん、同じ学部の同級生。親友とはいかないまでも、大切な友達です。
バイクが好きで、真面目なヤツではなかったけど
夏の暑い日なんかには、木陰に入って木にもたれ掛かってぐっすりzzZ

大学一年の仮装行列の時も、ワンピースのキャラクターになりきった文ちゃんは、
今年の夏のある日と同じように、変装用の3本の刀を抱えて木の下で眠っていました。


この前会った時なんかは、タバコの煙をくゆらせながら・・・

---『かわいい子、見つけたんだ。』
遠くを見るように、そう言って嬉しそうにしてたっけ。

『文ちゃんが本を読むなんてね・・・・・・ワセダ、三・・・?』

ジーンズの後ろポケットにねじ込まれて、窮屈そうにしている表紙。

---『これ、面白いんだよ。ワセダ三畳青春記、まぁエッセイだけどね(笑)
誰かが面白いって言ってたからさ。』

・・・文太、それ言ったの自分なんだけど(笑)


ヘルメットを抱えて、メッセンジャーバックを斜に掛けて、
ジーンズのポケットには、最近読み始めた本と、くしゃくしゃになったタバコの箱。
廊下ですれ違うたびに、ボディにパンチを入れる、お決まりの挨拶。



明日、自分は彼の通夜に行きます。
ポケットにこっそり、『ワセダ三畳青春記』を忍ばせて。
文ちゃんみたいに、ボロボロにはなってなくても(笑)

きっと、廊下ですれ違ってもパンチを入れてくる友達がいないことに気づいた時、
文ちゃんがいなくなったんだと、実感することになるんだろうか・・・
そんな風に思うと今日の突然の知らせは、なんて酷なものだろう、
なんだか、悔しい気持ちになりました。