この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。
「趨勢(すうせい)」 4
「職業がバレたんやから、
お銀のためにも名前を明かしてくれまへんか?」
鉄が運んで来た造りを勧めた。
「マトリに近いんですわ、名取慎吾いいます、歳は三十です」
なぜかお銀が頬を赤らめた。
「捜査官いうたら警察かいな?」
お銀はまだ理解」してないようや。
「麻薬犯罪専従の捜査官や、
刑事や警察官と違うて密性が高いから、
その行動を知ってる人は少ないんや。
麻薬専門の捜査官やからマトリや、
芸能人やスポーツ選手なんかの覚醒剤使用事件が絶えんやろ、
そいつらを捕まえるんに、
辛抱強い内偵捜査の上で逮捕するんや」
龍蔵の説明に名取が口をはさんだ。
「詳しいですな、その関係のお仕事でもなされてましたんか?」
「今話した更生につながる仕事もそうやが、
ここで毎日酒を飲んでると、ヤクの話も飛び込んできますんや。もちろんワシは捜査官やないし、
内偵捜査をしたり逮捕するわけや無い。
ワシの仕事は、
泥沼に足を突っ込んだ者を救い出して更生さすんが目的や」
「凄いですね、わたしらも更正まで面倒見れたらエエんやけど、なんせ事件が多すぎて、
逮捕まで持っていくんが大変なんですわ。
今言われた内偵捜査が大変で、
長いのになると一年二年と長期の捜査になります。
被疑者が言い訳ができんように
逮捕即起訴の段取りでやってますんや。
それだけに証拠集めには時間をかけるし、
逃げ徳は絶対に許しませんのや」
こう言う事情で職業を明かしませんでしたんや。
龍蔵さんが詳しく知ってられるもんやから白状しましたが、
他言せんようにお願いします」
深々と頭を下げた。
ーつづくー