この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。
「暫 (しばらく)」 27
「そう言うたら、
倉庫で物音がする件はどうなったんや?」
龍蔵が問うた。
「そうですな、幽霊ばっかり追いかけてたから、
忘れてましたわ。
何や聞くとこによると、
幽霊騒ぎがおさまった途端、
物音もせんようになったらしいですわ。
まさか幽霊の仕業やったとは思えんし不思議ですわ」
ちらりと一心の顔を見た。
「私は関係ありませんで。
幽霊騒ぎは私ですが、
倉庫の物音は私も不思議やと思てましたんや。
幽霊は寺の敷地やったからできたけど、
そんな怖い倉庫に忍び込んで、
悪さをする勇気は有りませんわ」
嘘はついてないようや。
そこへニコニコ顔の近藤デカが現れた。
ニコニコ顔なんか、
泣き顔なんか分からんエゲツナイ顔や。
「龍ちゃんオオキに、
墓石の不法投棄はこれで減るはずや。
この界隈の不法は奴らの仕業やったんや。
それにな、余罪を追及してたら、
倉庫の物音も白状しよったで」
近藤の口から意外な言葉が飛び出した。
「何やて、倉庫も奴らの犯行かいな?」
龍蔵が問いただした。
「そうやったんや、あの倉庫には、
漬物やら根菜類なんかが収められてるんやが、
倉庫の中が締め切られて適温やったために、
商品によっては発酵が進んで爆発状態になったんや、
それでダンボール箱が飛び散ってたみたいや。
奴らも最初はビックリしたらしいけど、
気味が悪うて誰も近づかんやろうと、
本職のヤクの運び屋の仕事に利用することを考えたんや」
「ヤクの運び屋?」
龍蔵が声をあげた。
ーつづくー