この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。
「暫 (しばらく)」 22
「あんたはお寺さんや、
当然白装束(しょうぞく)持ってるやろ?
それを三人分用意してくれるか。
ワシら三人が幽霊になって驚かせたるんや。
亀吉ハン、玩具屋(おもちゃや)へ行って、
怖そうなお面買うてきてくれるか。
これはオモロイことになってきた、
お坊さん、今度は犯人が腰抜かす番や」
亀吉は玩具屋へ、坊主は庫裡(くり)へ走った。
龍蔵が急いで府警の近藤デカに電話する。
三十分も経たないうちに近藤が車で駆け付けた。
「そう言うわけで、不法投棄の犯人を逮捕して、
法の裁きを受けさせたいんですわ。
逮捕の段取りはワシらがやります。
近藤ハンは見てるだけで手柄があげられますんや」
龍蔵の説明に、近藤がニンマリうなずいた。
「この人は誰ですんや? お化けかと思いましたがな」
亀吉が、近藤を恐ろしそうに眺めた。
「なんぼチンクシャみたいな顔してても、
府警のれっきとしたデカなんや。
ワシとは昔からの飲み友達でな、
歌は天才的な声してるし、
飛んでるハエや蚊が気絶して落ちるぐらいや。
そやから、ワシらは金鳥の夏なんて言わんのや、
近藤の夏や、これ聞いたらハエや蚊は退散や。
ミナミで蚊取り線香が売れへんのは、近藤ハンのせいや」
龍蔵の説明に、近藤が口を尖(とが)らせた。
「ワシは化けもんか?」
「そうですわ」
亀吉が追い打ちをかけた。
ーつづくー