この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。
「暫 (しばらく)」 19
「龍蔵さんどないします、
幽霊をみつけに来たのに、墓石の不法投棄やなんて、
とんでもない事になりましたな」
坊主が去った後、亀吉が問いかけた。
「目的は幽霊や、幽霊さんに会うまで毎晩来るで」
亀吉がうなずいた。
それから三日後の夜十一時、変化が起こった。
「龍蔵さん、後ろ向いたらあきませんで、
誰かがつけて来てますわ」
「ホンマやな、ワシらの歩調に合わせてつけて来るな。
この調子で歩いて、次の角を曲がって隠れよ。
エエ作戦を思いついたから打ち合わせや」
うなずく亀吉と共に角を曲がった。
「曲がったとたんに足音が消えましたな」
亀吉が振り向いたが誰もいない。
「エエ作戦いうんはな、この寺を一周して元の位置に戻るんや、そこから、さっき歩いた塀の横を同じように歩くんや。
ただし今度は亀吉ハンあんた一人や。
ワシがあんたをつけてる幽霊の後ろから歩いて、
幽霊を確認する。
タイミングを見計ろうて、
藪から棒に幽霊の後ろから大声だして驚かすんや。
幽霊が飛び上がって気絶するかもしれんで」
亀吉が、笑いをこらえながらうなずいた。
二人で元の位置に戻り、作戦が始まった。
亀吉が一人塀際を歩く、後方から龍蔵が様子を確かめる。
確かに、亀吉をつける足音が聞こえる。
突然龍蔵の大声が響いた。
「コラッ」
振り向いた亀吉が、キョロキョロ幽霊を探す。
「龍蔵さん幽霊はどこですんや?」
「何やホンマに気絶したみたいやで」
龍蔵が亀吉を呼び寄せた。
ーつづくー