この小説はフィクションです、実在とは関係ありません。
「飛 礫(つぶて)」 29
「伸介ハンを追及して、何か新事実が出ましたんか?」
「この伸介さんが、驚きの白状をしたんです」
「驚きの白状?」
龍蔵は手を握り締めた。
「武雄と空中ブランコの練習中、
武雄の乗ったブランコが反対方向から折り返して、
ブランコの踏板に足を引っ掛けて戻ってきた時です、
武雄の差し伸べた両手を捕まえる振りして無視したんです。
武雄はバランスを崩して落下しました。
地面に叩き付かれた身体は二度と息をすることが無かったんです。
そうやろ伸介さん?」
三重子の問いかけに、俯いてた伸介が嗚咽(おえつ)をもらした。
「察には届けましたんか}
「当然です、そやけど武雄さんは否定しました。
ブランコの武雄が折り返した時、手を差し伸べたが掴みそこなった、
あれは事故やと述べたんです。
目撃者もなく、何一つ殺人の証拠がありません。
伸介さんは、証拠不十分で釈放されました。
そんでも、疑いを持ってた私に証明の機会が訪れました。
それは、伸介さんが釈放された後、私の家に頻繁に来るようになりました。
最初は愁傷な態度で仏壇に手を合わせてたんですが、
驚きの言葉を口にしたんです」
三重子が、伸介の顔をうかがった。
「この男、わたしに結婚を申し込んだんです。
お腹に忍がいてる私にですよ。
わたしは確信をもって、武雄が邪魔になって殺したんやろと問い詰めました。
最初は否定しましたが、正直に言うたら考えると言うたら、
ボソボソと話し始めたんです、わたしと結婚したいばっかりに、
武雄の殺害を計画したんです。
わたしが身重やったことも知らずに、武雄との友情も裏切ったんです」
「そんで察には届けんかった?」
お爺が口を利いた。
「警察は、一回調べた事件やし新証拠が出た訳や無い。
本人の供述だけでは相手にしてくれません。
そこで私は、この男に罰を与えることにしたんです」
「罰を?」
お爺が訊ねた。
-つづくー