こんにちは~。ひどうです。

今回ははじめてのメロキュン参加になりました。というか、こういうお祭りに参加したことがないので勝手が分からなくてオロオロしてます。。。
でもでも、みなさまのお話がたっくさん読めるのでそこは楽しみですね!うん。

ちなみにお祭り会場はこちらです。↓

魔人さま:http://ameblo.jp/sk56-crpa23-46vv/entry-11749086875.html
風月さま:http://s.ameblo.jp/wind615-song/entry-11749429897.html
ピコさま:http://ameblo.jp/picopico5/entry-11749474172.html

リンクの張り方がわかりませ~ん。
解決したら張り直しますので、ご勘弁ください。。。

ということで、メロキュン初参加作品です。メロもキュンもないかもしれませんが、
どうぞお楽しみくださいまし~。←楽しめるような話じゃないかも(T▽T;)


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Present for…


この時期にしては風も穏やかでむしろ暖かく感じるほどだ。ビルの隙間から見えるふうわりとした雲からは、ちょこんと太陽が顔を覗かせている。
天気はばっちり晴れということで、このままなら夜も雨の降る心配はないだろう。
キョーコは見上げた空から視線を前に戻し、ちょっと軽めに感じる足取りで事務所へと向かった。
だいぶ知名度が上がったとはいえ、スケジュールには空いている箇所がたくさんある。まだまだ新人の域を出ないキョーコは日本一有名で多忙な俳優、彼女の所属する事務所の先輩である敦賀蓮のようにはいくはずもない。
キョーコは時間が空いてると自身の所属する特別なセクションーーーラブミー部の部室へと足を運ぶ。もちろん学校がない時に限るが。
そこで細々とした仕事を請け負って時間をつぶしたり、自分の仕事の台本を読んだり、演技の参考になるかなと思った本を読んだりと結構自由にしていた。
そこに所属する琴南奏江もキョーコと似たり寄ったりだが、見目麗しい分キョーコよりも役者としての仕事が多いような気がする。
「さて…まだ時間はあるし…」
椅子によっこらしょと座り、ようやく少しだけ使い慣れてきた携帯電話をカバンから取り出す。今からだとちょうど少し前に終了したドラマの再放送がやっているはずだ。
何事も勉強という信念のもと、キョーコは携帯電話のワンセグテレビでのチャンネルを合わせた。
少々動きがぎこちないのはワンセグの電波が悪いせいで、テレビの中の蓮はいつも通り真剣な表情で役を演じていた。時には笑い、時には怒り、そして目の前のヒロインの心を翻弄していく。
画面いっぱいに蓮の顔が映ったとき、キョーコの胸の鼓動が早くなる。
「敦賀さん…」
蓮の名前を口にするだけで、胸の奥からきゅんとした少し刺のあるものが湧き上がってくるようだ。
「ふぅ…。やっぱり敦賀さんって凄い人なんだな…」
蓮はどんな役でもこなしてしまう。いつかだったか新開監督が言っていた。自分に惚れる役なら本気で惚れさせるし、ビビる役なら本気でビビらせる、と。
キョーコはダークムーンの収録の途中、蓮が大きなスランプから脱出したあたりから更にそれを感じるようになっていた。
そんな蓮を事務所の偉大な先輩として持つ自分は、果たして幸せなのか不幸せなのか…。
不幸なわけはない、とキョーコは小さく首を振る。自分に恋する気持ちをよみがえらせてくれたのは、間違いなくこの敦賀蓮なのだから。
小さな画面の中で演技をしている蓮を見て、キョーコの胸の中に温かいものが湧き上がり、そしてそれは心の奥に薄紙を重ねるような速度であったが確かに積み上がっていた。

今日の予定は悲しいことにキョーコにはほとんどなかった。夕方から坊の仕事がひとつ入っているだけで、その他の用事(仕事と言えないのがまた悲しいのだか)といえば、蓮のマンションにプレゼントを届けに行くことくらいだった。
実は今日2月10日は敦賀蓮の誕生日なのだ。
蓮の今日のスケジュールでは事務所に寄ることはないようで、ラブミー部に足を向けてもらうことはできそうもない。そもそもわざわざ蓮に足を向けてもらうことなどキョーコにとっては申し訳なくて頼めるはずもないのだが。
蓮のマネージャーである社から聞いたところ、幸いにも今日の仕事上がりは夜中をまたぐことなく午後の10時くらいで、その頃には自宅に戻っているとのこと。その際社にはキョーコが夜に蓮の自宅へお邪魔をするという言伝を頼んでおいた。もちろん長居をするつもりはなく、プレゼントを渡したいからということを。
蓮のことなので、プレゼントなどほかの人たちからたっくさんもらっている。たとえその中の単なる一つになろうが、やはり恋する乙女としては好きな人の誕生日は外せない。建前としては事務所の先輩後輩の間柄で、いつも世話になっているというのもあるのだが。
キョーコは時計をチラとながめ、そろそろ「やっぱきまぐれロック」の収録へ向かう時刻を確認し、大きめの荷物と自分のいつものカバンを手に部室を出た。

無事に収録も終え、時間的には蓮のマンションへ向かうにはまだちょっとだけ早そうで、どこかで時間をつぶす必要があった。
「さてと、どうしようかな。事務所に戻るにもそこまで時間がないし…」
と、キョーコがちょっと考えていると、ブブブブブーーーと携帯電話が鳴っていることに気がついた。少々慣れたとはいえいまだ持ち歩くことに慣れていないことに加え、あまり音を鳴らさないようにしているため、こうして振動だけで気がつくのは珍しい。
キョーコは慌ててカバンの中から激しく揺れている携帯電話を取り出した。慌てているせいで相手先を見ることもせずに応答した。
「は、はい最上です!」
『最上さん』
「あ、敦賀さん」
蓮からの電話にキョーコの胸の奥がほっこりと温かくなる。いつ聞いても心地よい声だな、と場にそぐわなく感心していた。
『今どこにいるの?迎えに行くから明るい所にいて』
「え?いえ、大丈夫ですよ」
『夜道を若い女の子ひとりで歩くものじゃないよ。何かあったらどうすの?』
過保護な蓮にキョーコは苦笑してしまうが、それは決して嫌なことではなかった。たとえそれが蓮の性格上のもので、自分だけに対してでなくても。
ほどなくして仕方なくキョーコが近くにあったコンビニの前で待っていると、見慣れた蓮の車がスゥーッと目の前に流れるように止まった。
蓮は運転席から身を乗り出し、助手席のドアを開け、キョーコを招き入れた。
「こんばんは、最上さん」
「こんばんは、敦賀さん。わざわざすいません」
「気にしないで。さぁ、乗って」
キョーコは蓮に勧められるまま、助手席へ座った。自分のカバンと大きめの荷物を抱えたキョーコは、わざわざマンションまで行かなくてもここで渡したらいいんじゃない?ということに思い当たった。
「あの、敦賀さん」
運転の邪魔にならないようにタイミングをはかって声をかけた。今は信号待ちをしている。
「プレゼント、今ここでお渡ししてもいいですか?」
そうすればこのまま蓮はマンションへ帰ることができる。せっかく仕事が終わったのだから、わざわざ自分を招く必要はない、とキョーコは思ったのだが。
「却下」
そのキョーコの提案を矢のような速さで蓮は断った。せっかくキョーコがわざわざプレゼントを渡しに来てくれているのに、すべてを車の中ですませようなど勿体ない。蓮とて恋する男、少しでも好きな子と一緒に過ごしたいという気持ちであふれている。
「どうせなら、家でちゃんと渡してほしいな」
「………分かりました」
丁度待っていた信号も青に変わり、キョーコ的には渋々ではあったが、蓮の言うままに彼のマンションまで行くことになった。

キョーコは部屋に招かれて驚いたことがあった。なぜか蓮の家にはファンや同じ俳優からもらったであろうプレゼントが一切なかったのだ。それが不思議でキョーコは蓮に理由を尋ねてみると、頂いたものは受け取りはするけれど、どれかを選んで持って行くと選ばれなかった人に申し訳ないので全部事務所に任せてしまうとのこと。
分け隔てなく平等な人なんだと感心するキョーコだったが、そうなるとこんな所にプレゼントも持ってきた自分はどうなのだろうかと疑問がわく。思い返せばバレンタインの時もキョーコが作ったワインゼリーを蓮は食べていた。
不思議そうな顔をしているキョーコを見て、蓮はクスッと小さく笑った。
「君は特別だから」
「特別?特別というのは事務所の先輩後輩だからですか?それとも私が特別に敦賀さんにご迷惑をおかけしていてそれの代償ですか?」
そんなことを眉間にシワを寄せた真剣な表情で蓮に尋ねるキョーコに苦笑を禁じ得ない。どうしてここまで曲解した考えができるのか蓮は首をかしげる。
「特別は特別。それ以上でもそれ以下でもないよ。ーーー君だから」
蓮の笑顔がエセチックではないことで、それが口先だけの言葉ではなく本心からというのが分かる。
それが分かるとキョーコの胸の奥底から何か温かいものがじわじわとこみ上げ、それが体中、髪の先、指、爪の先までにも廻って行くようだった。その明確な形は見えないが、決して嫌な感じのものではない。
それはキョーコの顔までほんのり赤く染める。
「そ、それよりもこれプレゼントです。お誕生日おめでとうございます!」
ようやくここに連れてこられた理由を思い出し、キョーコは大きめの紙袋に入ったそれを蓮の胸に押し付けるように手渡した。
蓮はさして重くないそれをキョーコから受け取る。
「ありがとう。嬉しいよ」
蓮の甘さMAXの神々しい笑みがキョーコに向けられると、背後で気の毒な数体の怨キョが干上がった。
「今、開けてもいい?」
キョーコは相変わらずちょっとためらったものの、ほかのプレゼントはここにはないので比較されることもないだろうということで、いいですよ、と小さくうなずいた。
蓮はキョーコの了承を得ると、その大きな包みのリボンを解く。蓮のイメージを考えたシンプルな柄のラッピングも丁寧にゆっくりと開けていく。
何が出てくるのかドキドキと蓮の鼓動が高鳴る。キョーコが蓮のためにだけ選んだプレゼントだと思えば当然のことだろう。
ドキドキしているのは蓮だけではない。蓮を想って選んだものの果たしてそれを気に入ってくれるかどうかが問題なのである。
蓮が取り出した箱の中身を確認すると、そこから現れたのは寝具ーーーーー枕であった。
それは自分にぴったりフィットしたものをオーダーメイドしてくれる今流行の枕だった。もちろんキョーコには絶対視感という三次元認証システム並みの脅威の特技があるため、蓮にジャストフィットな枕のオーダーくらい朝飯前である。
「枕?」
「はい。どこからどう見ても枕です」
意外なものが現れて驚きに蓮はわずかに首をかしげた。しかしキョーコから選んだ理由を聞けばそれは意外でもなかった。
「前に軽井沢のロケの時、バスの中で枕がないと眠れないとおっしゃっていましたよね?あの時は…つたない私の膝で我慢をさせてしまいましたが…」
その時の膝の感触を思い出してしまったキョーコは、膝をモジモジとさせちょっと顔を赤らめた。
「あぁ、そういえばそんなこと言ってたね」
蓮はあの時のキョーコの柔らかな心地よい膝枕を思い起こし、緩んだ口元をさりげなく手のひらで隠した。
「でも、気にしなくてよかったのに」
むしろ同じ枕ならキョーコの膝の方がいい、と蓮は密かに残念なため息をついた。
「いえ、気にします。敦賀さんの体の方が大切ですから。自分の頭に合った枕は健康にもいいんです」
握り拳とともに力説するキョーコに蓮はあっけにとられるも、裏を返せばそれだけ蓮のことを心配してくれているということだ。
そう思えば気分は悪くない。むしろ上昇する一方だ。
「だいたい食事のことも含めですね、敦賀さんはただでさえ体を酷使しているんです。せめて眠る時くらいぐっすりと眠っていただきたいんです…」
と、指をモジモジさせて言ったキョーコに上目遣いで見上げられた蓮は、その可愛らしさに思わず抱きしめたい衝動にかられ、手にしていた枕を落としそうになった。だが何とか意地で平静を保ち、枕を落とすことだけは避けられた。
「そんなに俺のことを心配してくれたんだ。嬉しいね」
「当たり前です。敦賀さんは大切なーーー」
そこまで言ってキョーコはハッとして口元を押さえた。調子にのっていらないことまで口走りそうになってしまった。
「大切な?」
「た、たたた、大切な先輩だからです!」
「…大切な先輩ね。まぁ、いいか」
明らかにキョーコがごまかしたことが蓮には分かるのだが、残念なことに分かるのはそこまでで、本当に言いたかったことはキョーコにしか分からない。とりあえず今はキョーコが蓮のことを心配してくれているのを嬉しく思うだけにとどまった。
しかし自分の体のことを心配するキョーコに蓮は彼女にもただの先輩後輩の枠を越えた特別な何かが混ざっているような、そんな気がした。それは本当にかすかに感じたような気がしただけでそれ以上は蓮には分からない。しかもそんな自分に都合の良いようになど。しかし、もう少しそれを引き出してみたい、と蓮は素早く思考をめぐらす。
「それはそうと、最上さん。この枕、早速だから俺の寝室へ置いてきてくれる?その間にコーヒーを淹れておくから」
そう言って蓮は自分の寝室のドアを指差し、手にしていた枕をキョーコに渡した。
「え?あ、はい。分かりました」
蓮に手渡された枕を胸に抱えながら、示されたドアへ足を向けた。その後ろ姿を見送りつつ、ふと何かを思いついたように口元に意味有りげな笑みを浮かべた。そして本来ならキッチンへ向けるはずだった足をキョーコが向かった方へ向けたのだった。

蓮がキョーコの後を追ってみると、彼女は入ってきたドアに背を向けて、ちょうど枕をベッドに置こうとしているところだった。それを見て口元に黒い笑みをはき、その背後から蓮はキョーコが枕を置いた瞬間に抱きかかえるようにしてベッドの上に転がった。
「きゃっ!」
短い悲鳴とともに、あっという間にキョーコは蓮の胸の中に抱き込まれてしまった。がっちりと腰に巻き付いた腕は簡単には外せそうもない。
キョーコの鼓動は一気に高まり、背中越しにこれが伝わってしまうのではないかと気が気ではない。
「やっぱり無防備だな、君は」
クスクスと蓮が笑うと、それが背中越しにキョーコにも伝わる。
「いくら頼まれたからって、女の子が男の寝室へホイホイと入っていくものじゃないよ」
「でも…」
「ーーーーそれとも、何か期待していいのかな?」
「え?」
耳元でささやくような蓮の心地よい響きを伴った声がキョーコに鼓膜を刺激し、そこから頭の中へと入り込む。更に全身に流れキョーコの肌を淡い赤に色づかせる。
蓮の目に映るキョーコの耳や首はそれよりも更に赤みを増していた。
「…き、期待されても何にもでませんよ…」
蓮を意識しているキョーコの体温は確実に上がっている。しっかりと抱きしめている蓮にはそれが伝わっているだろう。
ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた蓮だが、不幸にもキョーコには見えなかった。
「プレゼントは枕だよね?」
そう言って蓮はくるりとキョーコの体を反転させ、自分の胸に彼女の頭を押し付けた。
「わっ…ふぅ」
「静かに…」
キョーコはアワワとあたふたしつつ自らの置かれている状況を確認する。
広く温かな蓮の胸、腰に回る力強い腕、頭の上から降ってくる誰もかも魅了するセクシーな声。それが今キョーコだけに向けられている。そして蓮の放つ彼自身の香りも。
それらにうっとりと身を任せ陶酔しそうになったものの、慌ててキョーコは自ら強制的に再起動のスイッチを押した。
「つ、敦賀さん?」
「ん?」
蓮の胸のあたりからモゴモゴとしたくぐもった声が聞こえ、いまだキョーコの頭を胸に押し付けたままだったことを思い出す。少しだけ力を緩めるとふうっとため息とともに熟れたリンゴのような赤い顔が蓮に向けられた。
その可愛さに一旦緩めた腕にうっかり力を込めそうになる。
「あのぉ…足を…外していただけませんか…?」
キョーコを抱き込んだ際、蓮はちゃっかり足も絡ませていたのだ。
これはどこからどう見ても、誰が見ても抱きしめあっているとしか思えない光景だった。
「ダメ。抱き枕だから」
「…でも、私が差し上げたのは…」
クスッと小さく笑いながらもほんのりと夜の帝王モードをにおわせた蓮はキョーコの唇に人差し指を当て何も言うなと黙らせる。
「最上さんの枕は全部俺がもらうからね」
「へ?」
「代わりに俺の腕枕をあげるから」
と、キョーコの頭の下に伸ばした右腕を差し入れそのまま肩を抱く。左手はキョーコの背中から腰に回し引き寄せる。もちろん足は絡ませたままだ。
「つ、敦賀さん!」
この状況にキョーコは恥ずかしいのを通り越し、名前のほか何も言えなくなってしまった。それでも頭の下にある蓮の腕枕が意外と心地よいと感じてしまうのは、体のどこかか蓮を求めているのだろうか。
「今日だけでいいから、何もしないからこのままでいて?」
蓮の声音はいつも通りだったが、キョーコにはその影に何かが隠れているような気がしたものの、どうして蓮がこんなことをしたがるのかという想いに考えが及ばないキョーコは、やはりラブミー部のキョーコだった。ようやく自分の恋心は認識するところまできたものの相手の想いを推し量るまでにはいたらない。
「ダメ?」
綺麗な眉尻を困ったように下げ、じっと憂いを含ませた瞳で哀願されると、キョーコは一瞬でキュン殺されそうになった。
「…今日だけですよ?」
その結果、こうして観念するしかなくなるのだ。
そもそもキョーコの方もこの状況が嫌なわけではない。想いを寄せる蓮にこうして抱きしめられているのだから。ただ慣れていなくて恥ずかしいだけなのだ。
キョーコから良い返事をもらった途端、ふわっと花がほころぶように彼女に微笑みかけ蓮はそそくさと掛け布団を引き上げた。そしてそのまま満足そうに目を閉じた。
あのカインの時のような情緒不安定ではなく素のままの敦賀蓮が隣にいるのがキョーコにはくすぐったく、無意識に蓮の方へ体をすりよせる。その仕草が無意識であるがゆえ蓮に淡い期待をもたらす。
蓮の鼻孔をくすぐる香りに包まれキョーコは安心してまぶたを下ろした。
キョーコが完全に眠りに落ちたのを見計らってから蓮はそっと目を開けた。
好きな子がこんなに無防備に寝ている隣ですんなり眠れるわけがない…。
蓮の中の今はまだ押さえ込んでいる荒々しい欲がいつでもわずかな隙を狙って飛び出そうとしている。日々それをさりげなく、時には必死に押さえてキョーコに接していることに彼女は気がついていない。それでも今はキョーコがこの腕の中にいるのが幸せで蓮は優しくゆっくりと栗色の髪をなでる。
自分の誕生日がこんなに嬉しいと思えるのは本当にひさしぶりだった、数えきれないほどのプレゼントや祝いの言葉を手にしようとも、たったひとりの最上キョーコという少女からのものが蓮には一番うれしかった。
それに…。
キョーコの中に敦賀蓮という存在が特別なポジションとして認識されているかもしれない、と今日のことでわずかに感じることが出来たのもある意味サプライズなプレゼントだった。
蓮は自分の胸の中に留まってくれたキョーコの髪へ顔を埋めるようにし、規則正しい寝息を子守唄に、いつしか自分も優しく甘い夢の中へ誘われていった。キョーコの夢を見ることができますように、と祈りながら。

「すっごいプレゼントをもらったみたいだなぁ、蓮?」
翌朝、ニンマリと目をひっくり返したお皿のようにした社に起こされるまで、蓮はとろけそうな幸せな笑みを口元に浮かべ、抱き枕状態のキョーコを自分から離すことなく腕の中に抱いたまま眠っていたのだ。
ツッコミどころ満載の蓮を社が放っておくはずもなく、当分の間いじってからかわれるネタにされたことは言うまでもない。

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はうぅ。。。
少しは甘いお話になったかな?なってない?やっぱり…。
せっかく蓮の誕生日なんだから、少しはおいしいコトをプレゼントしようと思ったんですけど。
ま、いっか。

今回は魔人さまにお誘いを受け、嬉しかったです。ホントに。
それにお応えできるような作品になったかどうかは。。。怪しいですな。はっはっは。