本日付で、私の標記の著書が発売されました。店頭に並ぶには、もう少し時間がかかるようですが、お時間のある時にでも、是非一読をお願いしたいと思います。

私がこの本を書こうと思った動機の一つは、安倍政権の政策(アベノポリシー)の中には国民の多くが支持していない政策が幾つもあるにもかかわらず、安倍政権が高い支持率を得てきているのは何故だろう、また、このような状況を打開するためには何が必要なのだろうか、と考えたことにあります。

例えば、次のようなことは、良識のある多くの人々が「おかしいな」、「問題だな」と感じていると思います。そうなんです。安倍首相は、自分(安倍)の主張や政策を実現するためなら、どんな手を使うことも厭わないという「したたかさ」を持っているのです。

第1に、経済政策を政権獲得・維持の手段に使っていることです。第2次安倍政権は、アベノミクスという「アメ玉」の経済政策で、目の前の損得に敏感な有権者を惹きつけてきました。以前は経済政策について目立った提案も実績もなかった安倍首相は、政権獲得・維持のために「アメ玉」経済政策を利用し、国民の大事な財産である公的年金基金のお金も株価維持・引上げのために使っています。

第2に、世論形成を目指して、マスコミへの介入、マスコミの懐柔を図っていることです。公共放送であるNHKのトップや経営委員に自らの思想に近い人たちを送り込んだり、マスコミに政権中枢や自民党が圧力をかけたりして、自らに有利な(または、不利とならない)報道を実現させようとしています。また、「首相の一日」には、大手マスコミのトップ等との会食、ゴルフ等が頻繁に載っています。報道機関との適切な「距離感」を失わせてしまっています。

第3に、国民への説明に二枚舌を使っていることです。今年4月にまとまった日米ガイドライン(防衛指針)の内容は、憲法解釈の変更によって「集団的自衛権の行使」を認めた前年7月の閣議決定の際に安倍首相が国民に説明した内容とほど遠いものがあります。国民には「差し迫った危険への対処」を理由として説明しながら、米国には「米国との共同行動」を売り込んだのです。安倍首相が目指しているものが、実は、前者ではないことが明らかになりました。

しかし、それでも、多くの有権者が、そのことに気付いていても「他の政権よりましだ」と思っているように見えます。他の政治勢力が国民から信頼されていないのです。そう考えますと、やはり、政策論議をシッカリとしつつ政策の対案を示すことによって、有権者の理解と意識を高め、「信頼される政治」を取り戻すことが大事だと思います。本書がそのために少しでもお役に立つことを期待したいと思います。

(注)「アベノポリシー」。この言葉は私の造語です。その意味するところは、典型的には「安倍政権が新たに始めた、あるいは始めようとしている政策」ですが、「従来の自民党政権時代から続いているものであっても安倍政権の下で変えようとしていない政策」を合わせた諸政策のことです。その特徴は、軍事重視・対米従属の外交・安保政策、格差拡大につながる経済・財政政策(通称「アベノミクス」)、治安強化・人権軽視の社会・人権政策、戦前回帰の教育政策・家族政策などがあります。これらの政策の中には、安倍政権以前の歴代自民党政権でも同様の傾向が見られていましたが、安倍政権で特にその傾向が強まっていると思います。

(了)