AKB48G☆マジすか学園☆乃木坂46☆欅坂46☆櫻坂46☆日向坂46☆好きな 「かつブログ☆」 -196ページ目

#13ー9☆

前田と峯岸の二人は、九階を目指し、階段を駆けるように、上っていた。

「あいつら、大丈夫かな?」

峯岸が、後ろから前田に話しかける。





『前田さん!生徒会長!ここは、わたしたちに任せて、先に進んでください!』

スズランが、叫ぶ。


『おらー!』

ミナは、鋭い踏み込みで、白銀色の拳を、クワバラの顔面に打ち込む。何発もー。

『どうだ!鉄の拳の味は?』

『なかなか、いいパンチぜよ』

『マジかよ…』

これだけ、手応えのない、反応のない相手は初めてだった。

スズランは、前田と峯岸に、駆け寄り、

『さあ、早く!だるまさんたちは十階に監禁されてます。でも、扉には、鍵がかかってるらしく…九階の須田が持ってるって、裏の入り口の見張りが言ってました!どんな酷い目にあってるかわかりません!急いで!』

そう言って、部屋を出るように二人の手をひく。
前田と峯岸がアイコンタクトをとる。


『大場!』

鋭い峯岸の声。
スズランの手を振りほどき、振り向きざま、落ちている木刀の切れ端ー柄のほうーを握り、ミナの後ろから、クワバラの左手に、打ち込む。逆小手。

『ぐっ!』

思いもよらぬ攻撃。

さらに、峯岸の背後から、前田が絶妙のタイミングで飛び出し、クワバラの左わき腹に、右拳を放った。えぐり込むような一撃。

『ぐぅ!』

クワバラが、片膝をついた。苦悶の表情。

『やはり…。ずっと、そこを庇ってたな…闘いながら…』

クワバラにとっての、アキレウスの踵。弱点。古い傷。


それを見て、ミナとスズランは、感嘆のため息をもらしていた。

『やっぱ先輩たちは、すげーな。さあ!あとは、オレたちに、まかせて先へ!』

『ここまでは、向田マナツさんに案内してもらいました。マナツさんは、組織を抜けて、前田さんに借りを返すんだ、って言ってました!』

絶対、こいつを倒して追いつきます!だから、早くー!





峯岸の問いかけに
前田は、後ろを振り返らずに、

「いまは、あの二人を信じよう!」

前だけを見すえて、そう言った。
(勝てよ…。大場、山内…)



九階ー

重い扉に手をかける前田。

ここに、あの須田アカリがいる。一度闘った相手になりきれるという、謎に満ちた敵。そして、六階で見せた最後のあのしぐさは…?

考えても仕方がない。いまは、前に進むしかー。仲間を助けるために。
鍵は、ここにある。

ガチャリ


広い室内には、ピーンと張り詰めた空気がー。急激に、気温が下がった感覚。



「はあ…はあ…」


「マナツ…。拳が見えちゃってるよ」


向田マナツと須田アカリが、部屋の中央で相対していた。

明らかに、マナツのほうが、息を切らしており、劣勢のように見えた。マナツの見えない拳が、須田には、見切られていた。


「前田…。来ましたか…。もうすぐ…、終わります…。そのあとは…わたしと勝負…です」

マナツの強がり。

「マナツ。ありがとう。あいつは、おれがやる!」
チームホルモンとカナの敵。
仲間の救出の為。

「やっほー!前田。…と、お姫様」

にっこり笑う須田。
攫った張本人と攫われた人質。

「よくも、不意打ちなどしてくれたな!正々堂々、勝負しろ!」

お姫様と呼ばれた
峯岸も、忸怩たる思いを言葉に込める。

「もう、お姫様の役割も終わったし、倒しちゃってもいいかな」


「まだ、わたしがいますよ…須田…」

マナツが、よろよろと、峯岸と前田の前に立つ。

「そんなに、前田と闘いたい?」

小悪魔の笑み。楽しい思いつき。


須田の雰囲気が、一変した。
かけてもいない
眼鏡を外すしぐさー。

そして
三人を睨みつけ、言う。


「『マジにならなきゃ…勝てねーよ!』」

#13ー8☆

「むにゃむにゃ…もう少し、寝かせて…あと一分だけ…」

アンダーガールズ本部ビル二階の部屋には、チームホルモンの五人が、絨毯に横たわり、眠っていた。

「寝言か…?」

ウナギの寝ぼけ声に
ヲタが、目を覚ました。

「ヲタ…大丈夫か?」

バンジーも、目を覚ます。

「まさか、敵だったやつに助けられるとはな…。これも、前田の人徳ってやつか…」

二階の守護者、平松カナのことである。力尽き、倒れこんでいたところを、カナに助けられ、手当てされたのだった。

「ヲタ…。お前、ずっと、前田になりたかったんだな…。強くて、優しい、死闘を繰り広げた敵でさえ、味方にしてしまう…そんな懐の大きな…」

「そりゃ、そうだろ!目指すは、てっぺんに決まってんだろが!」

照れ隠しに、心ならず、怒鳴ってしまうヲタ。

それを、理解するバンジー。

「同じチームに四番バッターはひとりでいいと思うぜ」


「野球は、よくわかんねー」

「ちっ!サッカーでいうとだな…、前田やサドは点取り屋のフォワードみたいなものだ。でも、みんながフォワードになりたいと思って、チーム全員がフォワードだったら、バランス悪いだろ?ゲームを組み立てる司令塔や、サイドを切り込むサイドバック、相手の攻めを防ぐディフェンス、最後の守護神ゴールキーパーなんかがいて、初めて、チームが成り立つんじゃないか?マジ女っていう、チームがな」

「いいこと言うな。たまには…」


「たまには…な」

バンジーが、肩をすくめて笑った。

「そうだな…。いまは、まだ、足手まといかもしれない…。だったら、おれの出来ることを命懸けでやるだけだ!でも、いつか、おれもエースストライカーになってやるぜ!よっしゃ、体力も回復したことだし、いっちょ、ウチのエースを助けに行くか!」


「わたしも行く!」

唐突に
ムクチが、身体を起こして言った。

「おれも、行くぜ!」

「もちろん、おれだって!」

ウナギ、アキチャも、話を聞いていたようだ。

「おれ、今日、あんまり活躍してないからな」

アキチャが、不服そうに言った。

「おれもだ。やってやるぜ!身体も軽くなったし、痛みもなくなった。あのカナって奴、白魔法つかえるのかな?」

身体を眺め回すウナギ。

「鎮痛剤が効いてきたんだろ」

バンジーは、常に、現実的だった。

「………」

ムクチが、立ち上がって、何かを指差していた。

テーブルの上に五本の小瓶があった。髑髏のラベル。手紙が添えられてある。

『目が覚めて、闘志があれば、飲んでください。もきゅ』


「こ、これは、ポーション!?」

「FFから、離れろって!」

RPGが頭から離れない
ウナギとバンジーの間を、かき分けて、瓶を手にするヲタ。

続いて、ムクチ、アキチャ、バンジー、ウナギの順に瓶を掴んでいった。

お互いに目線を交わし合う。

一斉に、蓋をあけ、一気に飲み干す五人。

ヲタが、空になった瓶をテーブルに叩きつけるように置いて、言った。

「おれたちは、前田やゲキカラには、なれねー。だからって、尻尾まいて、逃げたりしねー。おれたちが出来ること、おれたちにしか出来ねーことがあるはずだ。気合い入れろ!マジ女魂を忘れるな!」

ヲタの言葉にうなずく四人。

「よっしゃ行くぞ!チームホルモン!」

「おう!」

五人の声が、室内に木霊した。ギリギリの再始動だ。







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#13ー7☆

八階ー


親衛隊十人衆クワバラの動きが止まる。

「まだ、意識があるちや?最後に、言い残したいことがあれば聞くぜよ」

何度も、何度も、コンクリートの床に、前田を叩きつけ続けたクワバラ。だが、前田は、絶対にクワバラの特攻服の袖を
離さなかった。



「ク…クズ野郎…」

前田は、そう言って、口のなかの血を吐き捨てた。

「ガハハハハ!まっこと強情ぜよ」

クワバラは、遊びに飽きた玩具をたたき壊すかのように、前田を片手で軽々と持ち上げ、今度は頭から、コンクリートの地面に叩きつけた。


「ぐはっ!」

「生徒会長!?」

間一髪
前田を受け止めたのは峯岸だった。全身を投げ出し、クッションの役目を果たす。

「前田…、マジ女を…頼む」
マジすか女学園の矜持。

「ガハハハハ!死にぞこないが!二人まとめて、カツオのたたきにしてやるぜよ!」


掴みかかろうとするクワバラの手の小指めがけて、渾身のパンチを打ち込む前田。

クワバラが、顔をしかめて、手を引く。

「はあ…はあ…、痛みは感じるみたいだな…ニブいだけか…。大丈夫か?生徒会長…」

「も、もちろん…だ。そんな…クズ野郎にやられる…私では…ない」
立ち上がる根性を見せる峯岸。さすがは、マジ女の生徒だ。


前田が、クワバラと距離を置く。

(いくよ…)

龍神ー離れた場所から相手の傍に一瞬で移動し、その運動エネルギーを全身に集約し、斜め下方から……


前田は、一気にクワバラに迫るべく、距離を詰めようとした。

しかし、途中で足がもつれ、転倒してしまう。深刻なダメージがうかがえる。

「くっ!」

「前田!危ない!」

峯岸の声もむなしく
またしても、クワバラに制服を掴まれる前田。

「ガハハハハ!もう終わりにするぜよ!」



ガチャリ

不意に
扉の開く音。

「ガハハハハ!って、うるせーんだよ!前田から、とっとと手離しやがれ!クワバラン!」

「クワバランって、戦隊ヒーロー物の悪役みたいだね。言い得て妙だけど」

扉を開けて、あらわれたのは、
大場ミナと山内スズランの二人組だった。アンダーガールズの急襲を振り切ったのだ。


「おれって、ヒーローっぽい?」

「そうは、言ってない」
ピシャリとミナにつっこむスズラン。
相変わらず、緊張感のない二人だ。

「なんじゃあ?お前ら…」
クワバラは、新しい玩具を見るような目つきで、二人を見ていた。


「正義の味方、大場ミナだ!」

「いつから、正義の味方になったんだか。わたしは、山内スズラン。マジ女の二年だよ!前田さん!生徒会長!大丈夫?」

心強い援軍の到着ー。そこに新たなる戦端が開かれようとしていた。


「月にかわって、鉄拳制裁だぜ!」


「断然、すべってるよ…ミナ」