正義のゆくえ | hideinu日記

正義のゆくえ

ブログに書きたいことがいっぱいあったのだけど、
ここ数週間、取材や原稿書きに追われていて、さっぱり更新できず…。
遅ればせながら、ボチボチ更新していきたいと思います。

一昨日はハリソンフォード主演 『正義のゆくえ  ICE特別捜査官』
シンポジウム付き試写会に出かけた。

この映画は、ハリソン・フォード扮する アメリカ移民局のベテラン捜査官・マックスと、
7人の移民を巡るストーリー。

生活費を稼ぐため、子連れで国境をわたってきた不法移民のメキシコ人女性、
永住権取得が目前に迫っているが、じつは重大な問題を抱えているイラン系アメリカ人の家族、体を売ってまでグリーンカードを手に入れたい女優志望のオーストラリア人女性etc…。

たしかに法を犯している彼らなのだけど、じゅっぱひとからげに取り締まってしまうには、あまりにもやりきれない事情がストーリーから垣間見える。

「法」と「人情」の間で揺れ動くマックスの心情もよく描かれていて、まさに「正義ってなに?」と考えさせられる内容だった。

肌の色、生まれた場所、国籍、それって、「いったい何なのだろう?」と思うなぁ、この映画を観ると。

きっと、どんなに推測してみても、移民の気持ちは、定住者である私には計り知れないものがあるのだと思った。


映画が終わったあとは、シンポジウム。

パネリストは、IOM(国際移住機関)職員の橋本 直子さん、カルデロンさん一家の弁護を引き受けた渡邊 彰悟弁護士、そして、ジャーナリストの蟹瀬 誠一さん。

このなかで、IOMの橋本さんによる、移民のデータ分析が興味深かった。
印象に残った数字をいくつが挙げておく。

まず、世界の移民総人口は約2億人
この中には、国際結婚による移住者、留学生、難民、人身取引、出稼ぎ、などが含まれる。

2億人と聞くと、「多いな」という感じがするが、世界の総人口からみると、たったの2%
やはり、移民は圧倒的にマイノリティだ。

さらに、この2億人のなかで非正規滞在者は約3000~4000万人あまり。
約2割くらいの計算かな? これを多いとみるか、少ないとみるか…。

こうした移民たちが、母国に仕送りする金額は一年で約33兆円だそうであるから、ODA総額の1,198億(2008年度)を、はるかに上回る金額となっている。

しかし、移民を送り出した国だけにメリットがあるだけでなく、受け入れ国にも同様にメリットがある。
人手不足の解消はもちろんのこと、人口増加による経済効果があるからだ。

とはいえ、アメリカみたいに、どんどん低所得者の移民にローンを組ませていると、サブプライム問題なんかで痛い目に遭うのだけど…。

9.11以降は、各国とも移民に対する取り締まりが強化た。
とくに、「以前から厳しかったうえに、さらに取り締まりが強化されたのは日本だ」と、カルデロンさん一家の弁護を担当していた渡邊弁護士は言う。

9.11以前は、たとえ非正規入国者であっても、真面目に働いている人に対しては“在留特別許可”が下りるケースが多かったそうだ。
しかし9.11以降は、カルデロンさん一家に代表されるように、ほとんど許可が下りなくなっているという。

とはいえ現在でも、在留特別許可が下りるかどうかは入管のサジ加減ひとつで決まるのが現状。
「明確な決まりはない」なんて、おかしな話しだなぁ。

白人に対してはウェルカムな日本だけど、アジア系・中東系・南米系なんかの外国人を見ると、「=怖い」「=犯罪者予備軍」なんてイメージしがち。

そのせいか、やたらと「外国人を入れると犯罪が増える」なんて声を耳にするけど、
じつは日本国内の犯罪発生件数のなかで、外国人犯罪の発生率はわずか2.3% なのだそうだ。

当たり前だけど、97.7%は日本人が犯しているんだよな。

ぶっちゃけ、日本に外国人が増えようが減ろうがどっちでもいいのだけど、
はっきり言えるのは、
「お互いの幸せのために、偏見を持つのはやめた方がいい」
ってことかな。
知りもしないで決めつけると、お互いにとって不幸な結果になるからね。

ちなみに、シンポジウムの最後には渡邊弁護士がカルデロン・ノリコさんから預かったメッセージが披露された。

「日本で学べることに感謝しています。しかし今後は、自分のように親と離ればなれに暮らさねばならない子供が
増えないように願っています」

ホント、正義って難しい。