FLOWERS -フラワーズ-
「しむしむ」の身勝手な映画評などなど
監督:小泉徳宏
出演:蒼井優、鈴木京香、竹内結子、田中麗奈、仲間由紀恵、広末涼子
    大沢たかお、井ノ原快彦、河本準一、駿河太郎、三浦貴大、平田満、真野響子
    塩見三省、長門裕之

<あらすじ>
昭和11年・春。親同士が決めた結婚に悩み続ける(蒼井優)。女学校を出て進歩的な考えを持つは、式当日遂に家を飛び出してしまう。
昭和30年代・夏。の娘たち、長女・薫(竹内結子)次女・翠(田中麗奈)三女・慧(仲間由紀恵)。彼女らはそれぞれに事情を抱えながらも、高度経済成長を遂げる日本で大人としての一歩をそれぞれに歩み始める。
現在・冬。の長女である(鈴木京香)次女の

(広末涼子)。夢にも恋愛にも挫折し一人苦しむと、あくまでも前向きに生きようとする。それぞれが踏み出す一歩は一本の糸へと紡がれ、やがて未来へと繋がっていく――。

<キャッチコピー>
時代を超えた6人の女性たち。
それは一本の糸で結ばれていた。


<マメ知識>
○華麗なテクニックと美貌で人気のピアニスト、蔵島由貴が、鈴木京香が演ずる奏にまつわるエピソードの中で初の映画出演をしています。
○特別協賛は資生堂です。

○企画・製作総指揮は、「TSUBAKI」のボトルデザインなどを手掛けたクリエイティブディレクターの大貫卓也です。

<感想など>
資生堂のTSBAKIのCMに出ている女優6名。
全てがピンで主役を張って当然といった感じですが、2時間弱の尺の中で6人の女性のエピソードを詰め込むと ―
全員を均等に扱わないと事務所からクレームが来たり(本人からも?)するのでは?と余計な心配までしたくなりそうな本作ですが、その出来栄えは・・・

1936年、1964年、1969年、1977年、2009年。
「それぞれの時代を懸命に生きる女性たちを描き、やがて・・・」とありますが、オムニバス形式の独立したエピソードを纏め上げていく様な手法ではなく、時間軸が入り乱れ結末に収束していく感じに仕上がっています。
「しむしむ」の身勝手な映画評などなど

6人の女性の物語は「脈々と繋がる家族の系譜」といった趣ですが ―
伏線が散りばめられ、その伏線を回収していく段階で時間軸を行き来する訳ではなく、いたずらに話をややこしくしているだけの様な気がします。
軸となる主人公が不在の作品で、この様な手法を使うのは、如何なものかなぁ・・・まあ、この作品の場合は主役を決められないので、この手法を使ったこと自体が・・・・と思ってしまいました。

訴えたいテーマは「家族」 ― 
在り方、絆、繋がり。それを受け継ぎ、伝えて行くのは女性であるというコト。それは理解できるのですが・・・
それぞれの女性のエピソードは時間の制約上?(均等に画面に映るように?)、深く掘り下げるコトが出来ないので表面的で、ありきたりな印象が拭えません。
仲間
由紀恵扮すると、その娘達の(鈴木京香)(広末涼子)のエピソードを深く掘り下げて一本んの作品を仕上げた方が感動的で、「家族」についてのメッセージも強く訴えかけるモノがあったのでは?色々な意味で勿体無い・・・

ストーリーの構成等には多くの問題点がある様に思いますが、テーマは普遍的なので、ゴチャゴチャした展開の割には分かりやすいので、その点は良いかも?

後、良かった点と言えば、「映像表現」
コレは素晴らしい!!!
冒頭の ―
雨の中の鈴木京香、竹林並木を歩く田中麗奈、海に立つ竹内結子、ススキの草原を歩く仲間由紀恵、雪の中電車の車窓から外を見る広末涼子、満開の桜並木と蒼井優
兎に角、美しい。

また、それぞれの時代を印象付けるような映像創り。
モノクロ映像、昭和初期の様なカラー映像、ブルーを基調とした現代的な映像とそれにあわせた音響で時代を表わしています。
また、衣装、髪型、街の様子まで見事に再現されていて ―
カンヌ国際広告祭グランプリをはじめ多くの賞を獲っている
大貫卓也と、「ALWAYS 三丁目の夕日」のスタッフの力は、流石デス!!!
その他、背景の風景一つ一つが写真集や絵葉書きとして切り取れる様な感じです。

さて、個々のエピソードは・・・
◎昭和11年春。
(蒼井優) ― 「お母さんはお父さんと一緒になって良かった?」
「しむしむ」の身勝手な映画評などなど
親同志が決めた結婚に納得が行かず、当日「やっぱり無理、私の気持ちはどうでも良いの?」と家を飛び出します。
女学校を出て進歩的な考え方をしていた?と言ってネ。同じ女学校を出ても親の決めた相手と結婚するのが当時は主流!

逃げる様にお宮に行き、そこで家族を見かけ同じ頃が自分にもあったと気付き、父の想いを理解するのです。

「しむしむ」の身勝手な映画評などなど
探しに来た真野響子に対しは ― 「お母さんはお父さんと一緒になって良かった?」
は - 「あたり前です」 更に「育てるのに夢中でした。今度は貴方の番です」と・・・
母から娘へ、伝えたい言葉、そして未来を託す言葉。

が戻ってきた時に、が「万歳!」と叫びながら涙する姿は、世の父の涙を誘う?
が見初めた相手に対面した時のの安堵の顔が何とも言えませんネ。

◎昭和30年代。夏。

(竹内結子) ― 「人を愛するってすごい事なのよ」
交通事故で亡くなった大沢たかお)に対する愛情に生きる。
新婚旅行先を一人追体験し、帰宅後、夫の着ていたスーツに、在りし日の香を求めて一人泣き。
追体験の旅行は痛過ぎマス。愛する人を突然失う悲しみは計り知れないものがありますが、過去に縛られ、未来を見ていない生き方を亡き夫は喜ぶのかなぁ?(ソコまで愛されれば本望?)
確かに愛情の深さと普遍性を感じますが・・・

(田中麗奈) ― 「私、本当の強い女になるんです。格好だけじゃなくて」
「しむしむ」の身勝手な映画評などなど
当時としては珍しいバリバリのキャリアウーマン(編集者)で男勝り。格好も。
恋人
河本準一)にプロポーズされますが「そろそろ、家に落ち着いた方が?」の一言にキレちゃいます。
それは会社でも同様で、男の同僚からの言葉に直ぐに喰いつきます。

兎に角元気ハツラツって感じ。
余り笑いのないエピソードが多い中、
のエピソードは笑いが満載(お笑い担当?)

実家で
が一緒に過ごし、恋人からのプロポーズのコトを話します。
「結婚って良いもの?私、どうして良いのかわからない」
何故か涙が止まらない
自分の生き方が周囲から認められず、恋人の求めるモノともズレがある・・・でも、相手のコトが好き。だからこそ、素直になれなく矛盾だらけに・・・

は ― 「人を愛するってすごい事なのよ」と言い
また、担当している作家(長門裕之)には ― 「矛盾だらけで良い。人としての面白さがソコにある」と言われます。
肩肘を張らず、ありのままの自分で良い。自分らしく女性らしく!!!

◎昭和50年代。
(仲間由紀恵) ― 「私は、この子に世界を見せてあげたいの」
「しむしむ」の身勝手な映画評などなど
(井ノ原快彦)の三人で幸せに暮らしていた家族に待望の赤ちゃんが・・・
しかし医者からは「母体が危ない」と・・・
愛するを失いたくない「今のままの三人で十分に幸せ」「今回は止めないか?」
と訴えます。

の立場からすると当然の訴えかも知れませんが、としての想い ―
自分の中にある命の確かな実感と、育んできた期間、喜びが・・・
「私達に会うのを楽しみにしている筈」
「この子を産まなかったら、一生笑うことが出来なくなる

命を宿すことの出来る女性にしか、本当の意味では理解できない言葉、感情なのでしょう。
「しむしむ」の身勝手な映画評などなど
「この子に世界を見せてあげたいの」という一心で、母性で産み亡くなるのです。

◎現在。
鈴木京香)  「ふられた、オバサンだから」
「しむしむ」の身勝手な映画評などなど
ピアニストを目指すも、譜めくりの日々、自分の才能の限界を感じる日々。年下の恋人とも別れるがお腹の中には子どもが・・・
「しむしむ」の身勝手な映画評などなど
未婚の母になる決意が出来ないまま、祖母の葬儀に集まった家族の中で揺れ続ける心情。
妹、の子どもとのやり取りや、妹夫婦を見る奏の眼差しの先には「夫が居るという家族の夢」が透けて見えていたのかも知れませんね。

決意後も ―
「何をやっていても幸せそうね」の言葉。
そして・・・「育てていけるかな?この子には父親は居ない・・・」
「支えが欲しい」という切実な想いが嗚咽となっていく様は、観ている方も辛いですね。
それでも産もうとする気持ちは、宿る命に対する母性 ― つまり「無償の愛」なのでしょう。

広末涼子) ― 「生きてるだけで楽しいんだよ」
母、の死と引き換えに生まれてきたコトを幼い頃から心の内に秘めつつも、幸せな結婚をし生活しています。
「しむしむ」の身勝手な映画評などなど
姉、奏
が切迫早産の恐れがあり入院。

そこで(平田満)が医師との話し合いの中で ―
「何かあったら、母体を優先して下さい!」と訴えます(当時を思い出すとしては当然の反応ですね)
その後、に謝るのですが、そのに対して ―
「私なんか生まれてこなかったら良かったのに」と小さい頃から自分を責めてきた想いが、いつしか「母の分まで生きよう」と思えるようになり、「何をしても、生きているだけで楽しい」と実感していると語りかけます。
が己の命と引き換えに産んでくれた意味を誰よりも理解しているから、出てくる言葉です。

幸せそうな
笑顔の裏には、「自己否定」から始まった幼い日の葛藤があり、ソレを昇華させることが出来たは素晴らしいとは思うのですが、ソコに至る過程は描かれることはなく・・・(これが一番重要なのに・・・)

そして、
は実家で、慧が自分達に向けて書いた手紙を母子手帳の間に見つけます。
そこに書かれていた内容は ― 
「たった一つのかけがいのない家族。これからもずっと一緒」
の言葉に象徴されます。

娘達に対する溢れんばかりの想い。
生まれてきてくれたことに対する感謝の念。

「母の愛の深さ(無償の愛)は計り知れない」と思わされますね。この母の想いが、家族を繋いでいくのです!



う~ん・・・。
再度考えてみても、特に必要とは思えないエピソードが幾つかある様に思えます(各世代、多くの女性に共感を得ようとしている?)女性なら大いに共感できる部分も多いのかも知れません。
映像表現と女優陣の華やかさ、素晴らしさをメインに楽しめばOKかなぁ~?と思いつつも・・・
女性の為の映画を謳っていて、女優中心のこの作品。男性俳優陣の扱いの軽さがねぇ・・・

「家族を紡ぎ、繋いでいくのは女性である。」「家族を作ろう!」 ―
と訴える、ある意味「少子化対策作品」?厚生労働省推薦が貰えるかも?(笑)
「TSUBAKI」のCM作品って話もありますが・・・(爆)

各女優陣のファンの貴方。
CM調の綺麗な映像表現の好きな貴方。
時間軸がゴチャゴチャしていても大丈夫な貴方。
女性だと思われる貴方(笑)
お勧めです。

<最後に>
六人の女性(主演女優)を花に例えた本作。
その花の種は ―
凛の母を演じた、
 
真野響子

個人的には、日本の母の強さ、美しさを一番体現していた様な気がします。


6月12日公開です。