今頃だが

私は大学で事務の仕事をしている。

 

公務員でもなければ

教員免許も持っていない。

 

大学に雇ってもらっている。

 

学生の入学手続きから

教授たちの研究書類の作成まで

様々なことをしている。

 

 

今も准教授に頼まれ

授業で使う書類作成の手伝いをしている。

 

 

 

 

隣にいるのが佐藤先生。

 

私より10歳くらい年上で

学生の頃

ラグビー部だったので

体格はがっしりしている。

 

大人の男性という感じだ。

 

 

そう私は智樹に出会う前は

この佐藤先生に憧れを抱いていたのだ。

 

 

 

 

「助かったよ。ありがとう。

今からみんなで食事に行くけど

井上さんもどう?」

 

 

教員、事務員、学生、計6名で夕食を共にした。

 

 

 

 

智樹には内緒。

 

ああ見えて

結構やきもちやきなのだ。

 

負けず嫌いで

すぐムキになる。

 

 

そんなところも可愛いのだけど

面倒なので言わないことにしている。

 

 

 

 

店を出るとき

佐藤先生が私の耳元でささやいた。

 

「次は二人だけで来よう。」

 

私はハッとしたが

すぐにみんなの輪に入った。

 

 

 

なんだったのだろう?

 

 

帰りの電車の中で思ったが

智樹の曲を聴いているうちに

すっかり忘れてしまった。

 

 

 

 

 

それから何かしらの用事を頼まれ

佐藤先生と二人でいることが増えた。

 

 

今も研究室に二人きりで

作業をしている。

 

 

「少し休憩しようか。」

 

「はい」

 

私が作業テーブルを片付けている間

佐藤先生は部屋を出て行き

お盆をもって戻ってきた。

 

 

「どうぞ。」

 

そう言って

私の前にコーヒーとイチゴのショートケーキを置いた。

 

「ありがとうございます。」

 

サプライズが嬉しくて

笑顔でお礼を言った。

 

雑談しながらティータイムを楽しんだ。

 

 

「今晩

食事などいかがかな?」

 

そう誘われたが

今日は智樹の家へ行く日だ。

 

智樹も早く帰ると言っていた。

 

 

「すみません

先約があるので。」

 

「そう残念。彼氏かな?」

 

「まあ そんな感じです。」

 

この時 

佐藤先生の表情に私は気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソファでCDをいじっている智樹に

入れたてのコーヒーを渡し

隣に座った。

 

私は窓からの景色を眺めた。

 

この静かな時間が好きだ。

 

 

 

 

私の携帯が鳴った。

 

「もしもし。

… 

いえ大丈夫です。

はい。分かりました。

では明日

… 

はい 失礼します。」

 

 

静寂を壊された智樹は

少し渋い顔をした。

 

「誰? 男?」

 

「大学の先生。」

 

「んなもん 出るなよ。」

 

仕事第一の人がそういうこと言うかな。

 

 

 

不機嫌な智樹にちょっと意地悪を言った。

 

「もしかして 妬いてる?」

 

「ちげーよ。」

 

すねている。かわいい。

 

 

 

智樹が私の膝にそっと手をのせて言った。

 

「…やっぱ 妬いてる。」

 

 

顔を違う方へ向け

口をとんがらせている。

 

 

可愛すぎる!

 

思わず智樹を抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

佐藤先生と二人

研究室にいる。

 

昨日のことがあった後なので

私はテンポよく書類を作り上げた。

 

 

最後の書類に手をのばした時

佐藤先生が私の手を握った。

 

私は驚いて顔を上げた。

 

「僕の恋人になってくれ。」

 

いきなりの発言に面をくらった。

 

「私には 彼が…」

 

「僕の方が優れているだろう。

きみには僕の方がふさわしいんだ。」

 

怖いと思った。

 

力強く握られているので

手が痛い。

 

「すみません!」

 

手を振りはらい

なんとかその場から逃れることができた。

 

 

 

それから私は佐藤先生を避けるようになった。

 

仕事の手伝いも

理由をつけて断った。

 

 

智樹には話さなかったが

勘がいいので

私の変化に気付いていたようだった。

 

 

 

 

つづく

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

 

日中は少し春めいてきましたね照れ

 

 

季節の変わり目

体調の変化など

お気を付けくださいね。

 

 

 

私の空想の世界に

お付き合いくださり

ありがとうございました。

 

ここ最近

仕事が立て続けにあり

疲れ気味の智樹を心配していたのだが

今日は酷く疲れた様子で帰ってきた。

 

 

ソファにドサッと身を投げ

荒い呼吸をしていた。

 

 

私はそっと智樹の頬に触れてみた。

 

熱い気がする。

 

 

体温計をとってきて熱を測った。

 

 

38度。

 

 

やっぱり熱があった。

 

 

夕食のメニューを変更した。

 

冷凍うどんがあったので

煮込み風うどんを急いで作った。

 

 

智樹は力ない声で

 

「ありがとう」

 

と言い うどんを食べた。

 

 

 

 

寝室へ連れて行き

横になった智樹に布団をかけた。

 

 

氷嚢で頭を冷やしたり

薬を飲ませたり 世話をした。

 

 

智樹は私に身を預けているようだった。

 

 

一通りのことが終わり

部屋を出るため立ち上がろうとした

私の袖を智樹が引っ張った。

 

 

「ここにいて。

手 つないで。」

 

 

私はそっと智樹の手を握った。

 

 

弱っている智樹も可愛い。

ついそう思ってしまった。

 

 

私を頼ってくれているのが嬉しかった。

 

 

たぶん智樹のことだから

仕事場では誰にも気づかれないよう

元気なふりをしていたのだろう。

 

 

明日は朝から大事な収録があると

言っていた。

 

自分の体のことより

仕事を大切にしているような

口ぶりだった。

 

 

智樹が眠ったのを確認して

そっと離れた。

 

 

 

 

翌朝

熱は下がっていた。

 

まだ少し倦怠感が残っているようだったが

支度をしているので

行くつもりなのだろう。

 

 

私も自分の仕事があったので

一緒に家を出た。

 

 

 

 

つづく

 

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

HAPPY バレンタインラブ

 

 

本命チョコ、あげた?

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あなたもスタンプをGETしよう

 
 
素敵な一日になりますように。。
 
 
 
私の空想の世界に
お付き合いくださり
ありがとうございました。
 
 
 
 
 

次の金曜日。

 

今日も自宅のベットで一人

うずくまっていた。

 

 

携帯が鳴った。

 

智樹からだった。

 

 

電話に出る勇気がなくて

そのままにしていたが

鳴りやまないので

渋々出た。

 

 

 

「もしもし 茉奈?

ちゃんと話そう。

 

桜木公園で待ってるから来て。

 

待ってるから。」

 

 

 

逃げ出したい気持ちだった。

 

だけど いつまでも

このままでいるわけにもいかないので

私はトボトボと公園へ向かった。

 

 

 

 

車の横で音もなく立っている私に気付き

智樹が中からドアを開けてくれた。

 

 

「乗って。」

 

 

やつれた私を見て

智樹が心配そうに手をのばしたが

私はよけた。

 

 

智樹は「ふ~」と息を吐いてから言った。

 

 

「ネット 見たんだろ?」

 

私はうなづいた。

 

「マスコミがいろいろ騒いでるけど

違うから。」

 

「だって 写真…」

 

「あれは

美穂が相談あるって言うから行ったら急に

…てか

美穂はやり直したいって言ったんだけど

俺ん中ではもう終わってたし

茉奈がいるから…

 

だからあれは

美穂から一方的にだよ。」

 

 

「…もし

私がいなかったら

池田さんを好きになってた?」

 

 

「そんなの わかんねえ。

さっきも言ったけど

俺ん中では終わってると今は思う。

俺は茉奈が好きなんだ。」

 

 

智樹の真剣な表情を見て

私は一人で勝手に思い込みをして

勝手に落ち込んで

智樹をちゃんと信用していなかった。

すぐに聞けばよかったのにと反省した。

 

 

「…ごめんなさい。

…私 智樹に酷いこと言った。

…ごめんなさい。」

 

 

「ちょっと傷ついたけどねって

うそうそ いいよ そんなの。

 

俺の方こそごめん。

茉奈は何も言わなくても分かってくれるって

甘えてた。

 

俺 もっとちゃんと大人の男になるから

茉奈のこと守るから

勝手に離れんなよ。」

 

「うん。 ありがとう。」

 

 

智樹と抱き合いながら思った。

私の方こそ強くならないと。

 

 

 

そのまま車は

智樹のマンションへと向かった。

 

 

 

 

つづく

 

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

冬の何気ない景色を撮ってみました。

 

 

ようやく寒波はそれましたね。

 

インフルエンザが猛威を振るっています。

お気を付けくださいね。

 

 

 

私の空想の世界に

お付き合いくださり

ありがとうございました。

私は毎日が幸せで

楽しいと思っていた。

 

 

 

「なんか最近

茉奈変わったよね。」

 

美紀が言った。

 

 

「そう?

どの辺が?」

 

「幸せオーラが出てる。

はあ いいなあ。

私にもいい人みつからないかなあ。

ってか

いつになったら

彼氏紹介してくれるの?」

 

 

「……」

 

ごめんね。

美紀を信用していないわけじゃないけど

もしも他の人に知られてしまったら…

 

私 友情より愛情をとってるね。

 

心の中で謝った。

 

 

 

「もう 黙んないでよ。

言えないわけがあるんでしょ?

茉奈のこと信じてるからね

いつか話してよね。」

 

美紀はそう言ってからネット検索を始めた。

 

 

 

「ちょっと やだ なに?」

 

と美紀が言ったので

スマホを覗き込んだ。

 

心がざわついた。

 

 

 

<橋下智樹 池田美穂と復縁‼>

 

 

<アイドルで俳優の橋下智樹と女優の池田美穂が

ドラマで共演することが決まった。

破局した二人だったが

新ドラマをきっかけに復縁したとの

関係者からの情報が得られた。

打ち合わせ後

誰もいないビルの合間で

抱き合う二人の姿を目撃した。

二人の出会いは…>

 

 

 

これ以上読み進めることが出来なくなった私に

追い打ちをかけるように美紀が

 

「見て。」

 

と智樹と池田美穂が抱き合っている写真を見せた。

 

私は身体が震えるのを感じた。

 

 

 

「ちょっと茉奈どうしたの?

気分悪いの?

顔真っ青だよ。」

 

 

「…ごめん

早退する…」

 

 

 

 

 

 

 

布団の中でうずくまりながら

携帯を握りしめていた。

 

智樹に聞いてみようか?

と思ったのだが

どう聞けばいいのか言葉がみつからず

何もできずにいた。

 

 

 

もし記事が本当だとしたら?

智樹になんて言う?

 

相手は女優だから

心変わりしても当然だ。

 

私なんて見向きもされないだろう。

 

初めからアイドルとファンの恋愛なんて

無理だったのだろう。

 

 

 

 

智樹からメールが届いた。

 

怖くて読むことができなかった。

 

 

翌日には電話も鳴ったが

マイナス思考に陥ってしまった私は出なかった。

 

 

 

ネットでは

智樹と池田美穂の交際情報が次々とアップされていた。

 

知りたくもなかったが

美紀が教えてくれるので

自然と耳に入っていた。

 

 

 

 

金曜日。

 

今日は智樹の家へ行く日だったが

とても行けそうになくて

自宅へ帰った。

 

 

このままズルズルしていても

何もならないことは分かっていたが

どうしても動くことが出来なかった。

 

 

 

 

午後10時過ぎ 携帯が鳴った。

 

智樹からだ。

 

家にいないので

かけてきたのだろう。

 

 

恐る恐るでた。

 

 

 

「……」

 

「大丈夫? 調子悪いの?

…茉奈?」

 

「…ううん 平気。」

 

「平気そうな声じゃないけど?

なんかあった?」

 

 

私はゆっくりと呼吸してから聞いた。

 

「…池田さんは?

いいの?」

 

「え? 美穂?

美穂がどうしたの?」

 

「…ネット…見たの。」

 

「で?」

 

「でって? でって何?」

 

怒り口調になっていた。

 

 

「なんで怒ってんの?」

 

「怒ってない!

どうして何も言ってくれないの?

私のことなんて

どうでもいいんでしょ?

もう連絡してこないで!」

 

切ってしまった。

 

 

 

それから智樹から連絡はこなかった。

 

私が「連絡しないで」と言ったのだから

当然なのだが

感情が前に出すぎて

酷いことを言ってしまった。

 

もうこれで智樹とは終わりなのだと思うと悲しくて

私はずっと泣き続けた。

 

 

 

 

生気を失った私を美紀が心配してくれた。

 

「彼氏と何かあった?」

 

「…大丈夫。」

 

「大丈夫って顔じゃないよ。

話したくなったら

いつでも話してね。」

 

「…ありがとう。」

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

寒波がきています。

 

こちらでは雪は降っていませんが

風がとても強くなっています。

 

どうぞお気を付けくださいね。

 

 

 

私の空想の世界に

お付き合いくださり

ありがとうございました。

 

 

それから私は

週末を智樹の家で過ごすようになった。

 

 

智樹の仕事は不定休なので

この家で一人で過ごすこともあった。

 

自然に私はこの家の家事をするようになった。

 

 

 

家事はあまり得意ではない。

 

特に料理はもっと勉強しておけばよかったと

反省している。

 

「うまい。」と言ってくれる時もあれば

「まあまあかな。」

こう言うときは口に合わなかったときだ。

 

 

 

智樹の好きなものは

唐揚げ

ハンバーグ

カレー。

 

子どもの様な味覚なのが可愛かった。

 

 

 

 

 

それともう一つ。

 

智樹は私に甘い言葉をくれる。

 

 

もう何度溶けてしまったか分からない。

 

モテるわけだと思った。

 

女性の扱いが上手い。

 

今まで沢山の人と付き合ってきたのだろうと

思うと悲しくなるので

なるべく考えないようにしている。

 

今は私の彼氏なのだから。

 

 

 

私に触れるときも…

 

これ以上は言えない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日

気付いてしまった。

 

 

智樹はオーディオ機器は

良いものを持っている。

 

大きなテレビとスピーカーもある。

 

これで観る映画は迫力があるのだ。

 

 

 

 

私は自分の家から

智樹のライブビデオを持ってきた。

 

 

くどいようだが

私はアイドル智樹のファンである。

 

毎日 音楽家映像を欠かさない。

 

智樹の前で黄色い声を出し

やきもちを妬かれたこともある。

 

本人なのに複雑である。

 

 

 

 

今日は遅くなりそうと

さっきメールがきた。

 

 

一通りの家事を済ませ

部屋の照明を落とし

DVDをセットした。

 

 

オープニングの音楽が流れた。

 

ベースの音が体を駆け巡る。

 

最高だ。

私の勘は大当たり。

 

 

まるで本当に

コンサート会場にいる気分だ。

 

しかも前列!

 

振り付けを踊っても

隣の人とぶつかる心配もない。

 

 

立ち上がり

映像の中の智樹と一緒に踊った。

 

 

私はDVDの世界に入り込み

酔いしれていた。

 

 

 

 

 

すると

部屋の中が明るくなったので

私は振り向いた。

 

そこには

目をパチクリさせた智樹が立っていた。

 

 

 

智樹が帰るメールを送ったことも

インターホンを鳴らしたことも

まったく気づいていなかったのだ。

 

私は完全フリーズした。

 

 

 

「あははは! ははははは」

 

智樹が笑い出した。

お腹を抱えて

目じりには涙を浮かべて

笑い転げている。

 

後にも先にも

これだけ笑う智樹を見ていない。

 

 

 

私も笑おうとしたが

顔が引きつり

乾いた笑いしかできなかった。

 

『穴があったら入りたい』とは

まさに今

使う言葉だと思った。

 

 

 

 

 

その後

この時のことをネタに

数回からかわれた。

 

 

その度

私は穴を探した。

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

京都の続きです。

 

 

近代的な京都駅。

なかなか見ないデザインで楽しいです。

 

けど、雪が降っていて寒かった。

外なので…

 

 

 

 

私の空想の世界に

お付き合いくださり

ありがとうございました。

 

 

 

 

あの日から二週間が過ぎていた。

 

 

私はキスのことを思い出して

顔から火が出そうに

なることもあったが

智樹が普通なので

私も普通でいることを心がけた。

 

 

 

 

 

「茉奈は

お寿司が好きだったよね?」

 

 

「うん

あと 茶わん蒸しも。」

 

 

「OK わかった。

和食の店 予約しとく。」

 

 

私 大切にされてるなと思う。

 

こんなに幸せな気持ちになるのは

久しぶりな気がした。

 

 

 

 

 

後日

智樹が連れて行ってくれたのは

『和食の店』というより

『料亭』だった。

 

 

こういうとき

感覚のずれを感じずにはいられなくなる。

 

 

 

 

お座敷に通された。

 

 

正座をすると

すぐに足がしびれてしまうので

掘りごたつを見てホッとした。

 

 

 

 

料理は品数多く

テーブル一杯に並べられた。

 

こんなに沢山

二人では食べられない。

 

誰か来るのだろうか?

と思っていると

 

 

「いろいろ食べたいかなと思って。

好きなの食べて。」

 

はあ なんという

金持ちの贅沢発言。

 

 

「いつもこんなに豪華な食事なの?」

と聞くと

 

「そんなわけないでしょ。」

と笑って答える。

 

これも私には幸せな時間だった。

 

 

 

 

私は思い切って

以前から心配だったことを聞いてみた。

 

私と一緒にいるところを

誰かにみられたらと思うと心配で

ヒヤヒヤすると。

 

 

すると智樹はさらりと言った。

 

「案外 大丈夫だよ。

それなりに気を付けてるしね。

 

茉奈には迷惑かからないようにするよ。」

 

 

「私は大丈夫。

 

撮られたところで

一時的なものだし

 

でも智樹は…」

 

言いかけて 

やめた。

 

 

ニコニコしている智樹を見ていたら

私たちは別々の世界で生きていると

そういう意味のことを言いそうになっている

自分に気付いたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車の中

いつも流れている洋楽。

 

歌詞は全く分からないが

メロディーは覚えてきた。

 

 

「茉奈

まだ時間大丈夫だよね?」

 

 

「うん。」

 

 

「どうしよっかなあ。

俺んち来る?」

 

私は一瞬でフリーズした。

 

 

そんなことにはお構いなしで

車は智樹のマンションの方へと

向かっていった。

 

 

私は智樹の彼女なんだし

家に遊びに行くのは不思議なことじゃない。

と自分に言い聞かせていた。

 

 

 

 

 

智樹が住むマンションに着いた。

 

 

思っていた通り

高級マンションだった。

 

 

駐車場もセキュリティがしっかりしていた。

警備員までいる。

 

駐車場からエレベーターに乗った。

 

 

 

この時は通らなかったが

後日マンションのロビーが

高級ホテルのロビーのようだったことに

私は驚いた。

 

 

 

 

 

智樹が玄関のドアを開けたと同時に

室内廊下の灯りがついた。

 

 

「どうぞ。」

 

玄関ドアをおさえ

手で中へと促す。

 

 

私は恐る恐る中へ入った。

 

 

家の中はまるでモデルルームのようだった。

 

 

室内はとても綺麗だったが

あちこちに服やCDなどの物が散乱していて

少しほっとした。

 

 

奥の窓から東京の夜景が見える。

 

スカイツリーも綺麗に光っている。

 

まるで観光スポットだ。

 

 

私の家からは

周りの建物の間に

少しだけ公園の緑が見える。

 

私はそこを『癒しの空間』と呼んでいたのに

スケールが違う。

 

 

 

 

 

「座って。」

 

促されるまま

ソファに腰を下ろし

テーブルの上を整えた。

 

 

「コーラでいい?」

 

智樹はグラスに入れたコーラを

私の前に置いた。

 

 

もう一つ何か置いた。

 

 

家の鍵だった。

 

 

 

「いつでも来て。」

 

この家の合鍵だ。

 

私は動揺した。

 

ただただテーブルに置かれた

鍵をみつめていた。

 

 

 

 

智樹が隣に座り

私の肩を抱いた。

 

 

 

そしてキスをした。

 

 

 

 

 

私はこの夜

智樹の家に泊まった。

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

 

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

 

 

京都へお参りに行ってきました。

 

 

人が多くて身動きが取れませんでしたキョロキョロ

 

今年もよい年になりますように。。

 

 

 

私の空想の世界に

お付き合いくださり

ありがとうございました。

 

 

いいの?

相手はトップアイドルの

橋下智樹だよ?

 

私に彼女が務まる?

 

どうして もっと ちゃんと

考えてから

返事をしなかったのだろう?

 

 

今更

「やっぱり考えさせてください。」

なんて言えないし

はああ~

 

 

 

まったく仕事に身が入らない。

 

 

悶絶している私をみつけた美紀が

近寄ってきた。

 

「茉奈~ どうしたの?」

 

「うん ちょっとね。」

 

「なによー

私と茉奈の仲でしょ?

隠し事はなしだよ。」

 

 

「…彼氏ができた。」

 

「えー 良かったじゃん。

私の知ってる人?

どんな人?」

 

 

「…言わない。」

 

言えるわけがない。

 

 

「どうしてよー? 教えてよー」

 

 

 

このタイミングで

智樹からメールがきた。

 

不安よりも嬉しい気持ちが勝った。

 

にやけそうになるのを

こらえていたが

美紀にバレた。

 

 

「なになに~?」

 

「映画行こうって誘われた。」

 

「何観るの?

私もついて行っちゃおうかなあ。

いいな~」

 

 

 

 

仕事が終わった後も

しつこく聞いてきたが

どうにか逃げられた。

 

 

しばらく聞かれるだろう。

 

でも決して言えない。

 

 

今の時代はマスコミ記者だけではなく

ネットの普及で

全ての人がパパラッチだと

私には思えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもの桜木公園で待ち合わせ。

 

初デートだ。

 

嬉しさに心が弾む。

 

 

ん?

 

 

まてよ?

 

 

映画館には沢山人がいる。

 

大丈夫なのか?

 

 

 

だが私の心配はすぐに解消された。

 

 

 

 

特別ルートを通って

観覧室での鑑賞だった。

 

映画館にこんな仕組みがあったことを

初めて知った。

 

さすがビップだ。

 

 

 

私は今

橋下智樹の隣の席に座って

映画を観ている。

 

夢のようで

映画に集中できなかったことは

言うまでもない。

 

 

 

 

 

映画の後は食事だった。

 

以前 優斗たちと行ったところよりも

カジュアルな感じの店

 

智樹の行きつけなのか

店員と親しげに話をしている。

 

 

創作料理を出す

おしゃれな店だった。

 

 

 

 

 

食事が終わると

私を家まで送ってくれた。

 

遠慮するのも変だから

お言葉に甘えることにした。

 

 

車中では

さっき観た映画の話

今かかっている洋楽の話をした。

 

 

私はアルファベットを見ただけで

拒絶してしまうほど

英語が苦手なのだが

 

少しでも智樹に近づきたいので

覚えていこうと思った。

 

 

 

 

 

私が住んでいるアパートの前で

車が止まった。

 

 

「今日はありがとう。

楽しかった。

おやすみなさい。」

 

智樹に笑顔を見せ

シートベルトを外し

ドアに手をかけた。

 

 

「茉奈 待って。」

 

と言われたので

私は智樹の方を向いた。

 

 

 

ゆっくりと

智樹の顔が近づいてくる。

 

 

 

私は自然に目を閉じた。

 

 

 

そして

 

 

 

二人の唇が重なった。

 

 

 

優しいキスだった。

 

 

 

 

つづく

 

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

今年も残りわずかとなりました。

 
一年を振り返ってみると
出会いの多い年だったと思います。
 
素敵な出会いが沢山あった
良い一年でした。
 
 
まさかね
私がこんな形で
ブログを書くようになるとは
思ってもいませんでした。
 
来年も
新しい自分に出会えるかな?
 
 
よいお年をお迎えください。
 
 
 
 
私の空想の世界に
お付き合いくださり
ありがとうございました。
 
 
 
 
 
 
 

 

 

食事会が終わり 

優斗たちと地下駐車場で別れた。

 

私が

「美味しいお料理だったね。

ご馳走様。」

と智樹に声をかけたが 返事はなく

そのまま二人は車に乗り込んだ。

 

 

「俺らの話題ばっかで ごめんな。」

 

ぽつりと言った。

 

 

「ううん。楽しかったよ。

優斗くんにも会えたし。」

 

私は嬉しいふりをした。

 

どうしても池田美穂のことが頭から

離れなかったのだ。

 

 

智樹は微笑み 車は動き出した。

 

 

 

 

運転しながら言った。

 

「茉奈ちゃんて 彼氏いるの?」

 

「いないけど…?」

 

 

そういえば 

そんな話はしたことがなかった。

 

池田美穂のこともそう。

 

少し考えれば分かりそうなものなのに

私が一方的に智樹を好きだったから

考えもしなかった。

 

 

 

 

「俺らさあ 付き合っちゃおっか。」

 

 

私は何のことか一瞬理解できなかったが

ものすごい驚きに襲われた。

 

 

「なんでーー⁉」

 

叫んでしまった。

 

 

「えっ? 好きだから。」

 

智樹も驚いた様子だった。

 

 

 

いや そんなことを聞いているのではない。

大抵の人は好きだから付き合いたいと

思うものだ。

 

それくらいは私にだって分かる。

 

私が聞きたいのは

 

「だって智樹には…」

 

池田美穂がいるでしょと

言いたかったが

言葉に出なかった。

 

 

智樹はすぐに察した様子で

 

「ああ 美穂のことか。

付き合っていたのは

ほんの2か月くらいだよ。

 

茉奈ちゃんと会う前。

今はフリー。」

 

と言った。

 

私はホッとしたが

疑問はそれだけではない。

 

 

 

「どうして 私?」

 

「う~ん ひとめぼれ。かな。」

 

さっきから 付き合うとか 好きとか

ひとめぼれとか 

私の脳はショートしそうだ。

 

 

 

「ほら 初めて会ったとき

普通ファンなら

キャーキャー言ってパニクルんだけど

茉奈ちゃんは顔色一つ変えなかったじゃん。

 

正直 驚いたし

闘志に火がついて

『俺の虜にしてやる』って思ったんだ。」

 

 

そういうことだったのか。

正直に言わなくても… 

なんか傷ついた。

 

私だってパニクッてたよ。

フリーズしてたから 動けなかっただけ。

 

そう言いたかったが

言えないので うつむいた。

 

 

「でもさ

話してるうちに 面白い子だなって

もっと一緒にいたいなって

ひとめぼれしたってのも 嘘じゃないよ。

 

なんか惹かれるものがあった。

 

茉奈ちゃんになら何でも話せるし

甘えられる気がする。

 

こんなんじゃダメかな?」

 

 

「……」

 

私は黙ってしまった。

 

智樹のことは大好きだ。

 

だけど いろいろ考えてしまう。

 

どう返事をすればいいのか

言葉がでない。

 

 

 

 

「やっぱ茉奈ちゃんは読めない。

 

俺の予定だと

『うれしい』って涙をながすのね。

 

そんで キスして ハグしてって

流れだったんだけど…

 

わかった。

いいよ。

返事はまた今度で。

 

ゆっくり考えて。」

 

 

 

 

 

「あのっ

 

…よろしくお願いします。」

 

 

 

 

 

こうして私は智樹と恋人同士になってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

クリスマス いかがお過ごしですか?

 

明日からは

お正月モードですね。

 

日本の切り替えの早さには

いつも驚かされますキョロキョロ

 

 

 

私の空想の世界に

お付き合いくださり

ありがとうございました。

そして ついに この日がきた。

 

 

 

半フリーズ状態で

ギクシャクしながら

身支度をした。

 

 

何日も前から用意していた

服に袖を通す。

 

 

この数日は

家中に服を広げ

足りないものは買いに行き

大忙しだった。

 

 

 

いつも智樹と会うときは

きちんとしていたけど

今回はもっと気合を入れて頑張った。

 

 

智樹に会わせたイメージだけど

清楚感は大切。

 

 

仕上げは以前もらったネックレス。

 

よし 完璧。

 

 

鏡の中の私に最終チェックをして

桜木公園へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

少し早く着いたので

智樹はまだ来ていなかった。

 

 

 

ぼんやりと公園の木を眺めながら待っていると

車の音が聞こえた。

 

 

 

私の近くで止まり

運転席の窓が開いた。

 

「待った?」

 

「今来たとこ。」

 

本当は20分程まったが

定番の返事をした。

 

 

 

「それ…」

 

智樹はネックレスを指さして微笑んだ。

 

「よく似合ってる。可愛いよ。」

 

 

『可愛いよ』

 

『可愛いよ』

 

『可愛いよ』

 

何度も智樹の声がこだました。

 

 

私は気を失いかけた。

 

 

ここで意識をなくしては

せっかくの食事に行けなくなってしまう。

 

気合で平静を保った。

 

 

 

 

私が車に乗り込むと

動き出し 行動へ出た。

 

 

 

そういえば

智樹の車にはよく乗っているけど

動いている車中は初めてだ。

 

 

とても嬉しい。

 

 

運転している智樹の姿はかっこいい。

 

 

どの角度から見ても美しい。

 

『美しい』 と言っても

女性っぽいというのではなく

男性の美しさだ。

 

にやけてしまいそうなのを必死にこらえた。

 

 

 

楽しい時間は短い

あっという間にドライブ終了となった。

 

 

 

 

 

 

レストランの地下駐車場に車を停め

車を降りた。

 

 

近くにレストランへ続くエレベーターがあり

私たちは それに乗り込んだ。

 

 

 

エレベーターの扉が開くと

ボウイらしき人が待っており

部屋へ案内してくれた。

 

 

 

 

個室だ。

 

 

レストランの個室は初めて。

 

 

緊張の面持ちで中に入った。

 

 

 

 

 

 

すでに二人来ていた。

 

 

 

一人は大人っぽい女性。

 

 

もう一人は

 

わっ!

 

 

アイドルグループ『オリオン』の

仲村優斗(なかむらゆうと)だ!

 

 

智樹の友達だから

アイドルがいて当然なのに

私ってば浮かれていて

誰が来るとか何も聞いていなかった。

 

 

 

心の準備ができていない…

 

フリーズしそう…

 

 

固まっている私をよそに

智樹は親しげに挨拶をかわし

私を紹介した。

 

「前にはなした 井上茉奈ちゃん。」

 

私のことをどう話していたのだろう?

 

フリーズ中で聞ける状態ではないので

言葉にはしなかった。

 

 

 

「こちら 俺のマネージャーで

田畑美智代(たばたみちよ)さん。

『みっちゃん』て 呼んでる。」

 

マネージャーさん? はあ。

 

私は感心しながら挨拶をしたが

フリーズ中なので

カクカクしながらお辞儀をした。

 

 

「で こっちが 知ってると思うけど

仲村優斗。」

 

フリーズしている私を不思議そうに見る優斗。

 

すかさず智樹が

 

「あ この子すぐ固まるんだ。

気にしないで

たぶん優斗がいるから驚いてる。フフフ」

 

と 優斗に言った。

 

 

ばれている。

 

私にフリーズ癖があることを

智樹に知られていた。

 

もう こうなったら開き直りだ。

 

美味しい料理を堪能してやる。

 

 

 

 

 

全員席につき

料理が運ばれてきた。

 

 

三人は楽しそうに仕事の話や

洋楽の話をしている。

 

そういえば

さっき車の中で流れていたのも洋楽だった。

 

私は洋楽も疎いので

よくわからなかった。

 

 

この状況で

おしゃべりしながら食事を楽しむなどという

高度な技術は持ち合わせていないので

せっかくの料理に集中し

食べる方を楽しむことにした。

 

 

無邪気に笑う智樹の姿が

私には嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

会話の内容を聞いていて

マネージャーのみっちゃんと

優斗が恋人同士だということがわかった。

 

 

ん?

 

優斗はなんとかって女優と

交際してなかったっけ?

 

結婚間近と

マスコミ報道されてたような…?

 

マスコミってもしかして適当?

 

私の思考が分かったのか

優斗がニヤリとした。

 

 

 

そういえば

智樹も女優の池田美穂(いけだみほ)との

交際が噂されてたなあ。

 

<熱愛!> とか

 

<破局か?> とか

 

結構マスコミを騒がせてたよね。

 

 

…そうだよね

智樹だもん

誰もほっとかないよね。

 

私 ばかみたい。

 

一人ではしゃいでた。

 

泣きそう。

 

 

私は気づかなかったが

一人で笑ったり

不思議がったり

泣きそうになったりしているのを

 

智樹は静かに見ていた。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

今週は寒波がくると

天気予報で言っていました。

 

どうぞご自愛くださいね。

 

 

山が紅葉しています爆  笑

 

 

 

私の空想の世界に

お付き合いくださり

ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

その後も智樹とは

たまに公園の駐車場で会ったり

電話で話したりしている。

 

 

 

恋人ではないことは確かだが

友達なのだろうか?

 

 

智樹は私のことを

どう思っているのだろう?

 

 

なぜ私と会うのだろう?

 

 

初めて会ったとき

「ライブの感想を聞きたいから」

と 言っていたが

まだ聞かれたことがない。

 

 

あまり仕事の話はしない。

 

それもそうかと思いながら

 

なら どうして

私と話をするのだろう?

 

 

私の頭の中は

疑問符ばかりだ。

 

 

 

 

日中は仕事のおかげで

気が紛れているが

 

家に帰ると考えてばかりで

何も手につかない。

 

 

女子力を失うのは嫌なので

たまに気合を入れて

頑張ってみたりするが

どうも身が入らない。

 

 

 

 

 

 

今日もまた家でぼーっと

考え事をしていたら

智樹からの電話が鳴った。

 

 

 

「いつも急でごめん。

今から会える?」

 

「うん。」

 

「じゃ  いつものところで。」

 

 

 

私は智樹のなんだろう?

 

 

智樹は私のなに?

 

 

 

 

まとまらない気持ちのまま

急いで支度をし

桜木公園へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は当たり前のように

車のドアを開け

助手席に座った。

 

 

「よっ」

 

 

「おにぎり持ってきたけど

食べる? 昆布食べれる?」

 

袋からラップにくるまれた

おにぎりを一つ智樹に渡した。

 

 

「初手料理じゃん。

やべー  超うめー」

 

少年のように

おにぎりをほおばる智樹。

 

なんだか可愛い。

 

 

「手料理ってほどでもないと思うけど?」

 

私はちょっと得意な気持ちで言った。

 

 

 

「手作りおにぎり

久しぶりなんだあ。

やっぱ売ってるのとは違うなあ。」

 

なんかカチンときた。

別にいいけど。

 

 

少し不満そうな私の顔を

チラリとみてから智樹は言葉を続けた。

 

「俺 料理とか全然できなくて

どっか食べ行くとか

コンビニで買うとかしかないから

やっぱ嬉しいよ。

ありがとな。」

 

 

 

 

 

智樹は頭の後ろで手を組み

正面を見ながら話しだした。

 

「俺さあ 12歳んときにデビューして

今26だから

14年この世界にいるわけなんだけど

気付いたら芸能界が普通になってたのね。

 

でも 会社の人に怒られたり

マスコミに叩かれたり

いろいろ辛いことも あったりしてさ

 

普通ってなんだよ⁈ とか

 

俺ってなんだよ⁈ とか

思った時期もあったし

 

もし 大学卒業して

普通のサラリーマンとかになってたら

どんな暮らししてたのかなとか

 

でも やっぱさ 俺

この世界しか知らないし

ここで生きていくしかないんだって思った。

 

だったら

でっかいこと してやろうじゃん

みたいな。

 

ビッグになってやろうじゃんて思ってる。」

 

 

私は智樹の横顔をみつめながら話を聞いた。

 

 

「俺のドラマを楽しみにしてるとか

 

俺の歌を聞いて元気になったとか

 

ファンのみんなが言ってくれて

すげえ嬉しくて

もっと みんなのために頑張ろうって

思うんだよね。

 

よし 俺がみんなを笑顔にしてやるって。

 

どんどん成長して

いつも新しい橋下智樹を

みんなに見せてやるんだ、

 

辛いとき

苦しい時もあるけど

絶対負けない。

 

俺は走り続ける。」

 

 

 

ああ この人は

なんて純粋な人なのだろうと思った。

 

見た目はチャラチャラした若者だけど

中身は真面目な青年なのだ。

 

芸能の世界は華やかに見えるけど

実際はとても厳しい世界なのだろう。

 

ぬるま湯にどっぷり浸かった生活しか

していない私には

到底理解できないほどの

辛さがあったのだろう。

 

何度もくじけそうになりながら

必死に頑張ってきたのだろう。

 

 

 

私の目から涙が溢れ出ていた。

 

 

泣き出した私に気付いた智樹が

驚いたような表情で

顔を覗き込んだ。

 

「どうしたの?

俺 変なこと言った?」

 

ちょっと慌てている。

 

 

「ううん ごめんなさい。違うの。

…智樹の頑張りに

感動しちゃった。」

 

私は頑張って笑顔を見せた。

 

 

「ありがとう。」

 

智樹が私の頭を優しくなでた。

 

 

 

私はしばらく泣き続けた。

 

 

「落ち着いた?」

 

「うん。ごめんね。」

 

なんだか とても恥ずかしい。

 

智樹の前で泣いてしまった。

 

大変だったのは智樹の方なのに

私が泣くのは違うのに。

 

しかも きっと今酷い顔になってる…。

 

 

 

「いいよ。

 

あのさ 俺 今度

友達と飯食いに行くんだけど

一緒に行かない?」

 

 

ビックリだ。

 

食事に誘われてしまった。

 

友達も一緒だけど

智樹と食事だなんて

夢のようだ。

 

 

「…行きます。」

 

「よかった。

じゃあ 詳しいこと決まったらメールするね。」

 

笑顔の智樹が眩しい。

 

 

もう これ以上ここにいたら

私はパニックを起こしかねない。

急いで帰ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

また ベットの上に倒れている私。

 

毎回こんな調子では身がもたない。

 

冷静に対処しなければ。

 

落ち着け私。

 

ただご飯を食べに行くだけだ。

 

取り乱すな しっかりするんだ。

 

ベットから起き上がり

お風呂場へ向かった。

 

 

 

 

私は智樹のことが好きなのだ。

 

ファンとしてだけではなく

人として好きなのだと確信した。

 

 

自分の気持ちに気付いたが

告白する気はない。

 

私にそんな勇気はないし

今の智樹との関係を

壊したくないと思った。

 

 

 

 

つづく

 

 

 

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

 

 

空に虹が

かかっていました。

 

急いで撮ろうとしたのですが

間に合わず…ガーン

 

まだまだ修行が必要みたいです。

 

 

 

私の空想の世界に

お付き合いくださり

ありがとうございました。