誹謗中傷殿損による不法行為の免責要件 | 誹謗中傷 逆SEO

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ここでは、媒体別に参考となる裁判例を挙げ、どの程度の裏付け取材が要求されているのか、特に媒体により相当性判断における裏付け取材の要求の程度に差はあるのかについてみていくこととする。

富士見産婦人科病院事件(東京地判平8年2月28日[満田忠彦コート]判時1583号84頁)は、下級審判決であるものの、新聞という媒体の特殊性を踏まえ、報道する側と報道される側の利益調整を図る具体的な基準を示している。

この事件は、朝日新聞朝刊社会面に、「健康なのに開腹手術」「無免許経営者が診断」「次々と子宮などを摘出さす」「でたらめ診療被害者数百人か」等の見出しのもとに、当時原告が院長を務めていた富士見産婦人科病院が病院ぐるみで、多数の健康な患者に対し、でたらめ診療の結果不要な開腹手術を行ったという旨の記事が掲載された。

本件により病院は閉鎖に追い込まれ、原告は失職、その後破産宣告を受け、医師会から除名処分を受けた。

そこで、原告が、朝日新聞社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求(5、000万円)及び謝罪広告掲載の各請求をした事案である。

この判決は、相当性の判断について、「報道・表現の自由及び国民の知る権利と、取材を受ける側の誹謗中傷権との比較衡量において決定されるところ、被告のような全国紙の社会全般に対する影響力の大きさは測り知れず、ひとたび特定の人物、団体に対し否定的な報道を行った場合には、報道の対象となった人物、団体の誹謗中傷に対し、決定的な打撃を与えてしまうこともしばしば存在する」として、被告のような報道機関は、「対象の人物、団体の社会的評価を低下させる恐れのある報道を行う場合は、その根拠が単なる風説、憶測の類であってはならず、対象者の誹謗中傷を損なうことのないように、入念な裏付け取材をなし、十分な資料を得てはじめて報道するべきである」とした。

しかしながら、「報道機関といえども、取材活動につき特別の調査権限が与えられているわけではなく、自己の意思で取材に応じない者から情報を入手する強制的な手段はないこと、民主主義社会において報道の自由は重要な価値を持つこと、報道機関には言論をもって社会の不正を告発し世論の批判にさらすという責務があること等に照らせば、個人の誹謗中傷侵害に対する責任を追求するに急なあまり、報道機関を萎縮させて報道の自由を損なうことのないよう配慮すべきであって、報道機関に対して、例えば検察官が被疑者を起訴する場合の如く合理的な疑いをいれる余地がないほどに高度に確実な質、量の証拠を収集する義務を負わせるのは酷に失する。

したがって、結局のところ、報道機関が取材に係る事実が真実であると信じるについての相当な理由があるというためには、報道機関にとって可能な限りの取材を行い、報道機関をして一応真実と思わせるだけの合理的資料又は根拠があることをもって足りる」と相当性判断の一般的基準を判示し、記者らの収集した資料又は根拠の情報源の信用性を検討している。