めえは何もしていない。何も悪いことはしていない。しかし、姿が動物に変わる、ただそれだけのことで畏怖される。生物はみんな成長過程で姿を変えるのに、ヒトも受精卵から老体まで様々な形態変化をするのに、何故か彼らのことを受け入れられることはない。心で接すればわかるはずだ。彼らは無垢な存在であることが。しかし、心を通わせるには至らないところで多くが終わる。それはいかにヒトが視覚に依存しているかという裏付けになるかもしれない。
「コノハ……どうしよう、どうしよう……めえ、もう学校にいられない……」
「……。めえが学校辞めても、また遊びに行くから」
「ぐすっ、ぐすっ、ありがとう、コノハ――」


 
 ――視界が白くなる。白くなる。すべてが終わった……



――
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「――っはぁっはぁっ……」
 コノハは目覚めた。
「――夢……?」
 夢なのか? しかし、コノハはパジャマ姿で自宅のベッドの中にいる。
「夢……よかった……」
 かなりリアルな夢だった。最近の連続するTFイベントですっかり警戒心が薄れていた。人前で変身するとどういう反応が返ってくるのかということを。
「9月1日……今日から学校……あ、やばい! 時間がギリやん!」
 現実に還ったコノハはベッドから飛び起きた。現実での記憶を重ねていくごとに、今朝、夢に見ていた内容は失われていく。
 夢で視た世界は、もしかしたら、実際に起こり得た現実かもしれない……


<おしまい>