大学からの帰り道。運悪くその道を歩いていた猫柳ミャンは久々に聞く知り合いの声に振り返ったところだった。
「へ……はあぁぁ?」
 巫女服のめえがウマに乗ってこちらに向かって来ている。全く意味がわからなかった。
「ミャアアァァァンンンちゃんんんもおいででで――」
 そんな声が聞こえる。
 久々に会えたのは嬉しいが、とりあえず嫌な予感しかしなかった。



「ふっふ~、ミャンちゃんの弱い場所はめえ、知ってるもんねー」
 黒めえが復活。良からぬことを企てている。
 ヒロミも視界にミャンを捕えた。しかし、逃がせてあげたいが、めえに見付かったのは運が悪いとしか言いようがないだろうと諦める。
 ヒロミがミャンの横を通り過ぎる瞬間、めえはミャンの首筋をぐっと押した。
「みゃぁ!?」
 ミャンはビクンと震え、一気にしっぽが服から出た。めえはその瞬間を逃さずにミャンのしっぽを掴み、引き上げる。ミャンはめえに引っ張られる過程で急速に体が縮み、最終的にはネコに変身してしまった。
「めえGJ!」
 めえは自分にエールを送る。
 めえの腕の中、ネコになる過程で一緒に持ちあがった服の中からミャンが出て来た。
「わぁー、もぉー、ビックリしたぁ! 一体なんなの?」
 ミャンは状況が全くわからない。


「ミャンちゃん、おっひさー」
 めえが笑顔でミャンに話しかける。
「お久……って、どうしたの? ん? このウマってもしかして、ヒロミちゃん?」
「ミャンも捕まったか……」
 ヒロミはミャンに同情した。
「ん? 何か聞こえたような……」
 黒めえ覚醒。
「いやっ、はぁー走るのは気持ちいいー」
「そうだよねー☆」
「???」
 ミャンはやっぱり状況が把握できなかった。
 と、ここで再びめえはコタローの声を聞いた。



――「ハァ……ハァ……君は……逃げたりしないんだな……」



「近い!! ヒロミちゃん、こっち!」
「んぎゃ!?」
 ヒロミは再び、急激に顔を引っ張られた。
 めえの曲がれと命令する方向に泣きながら曲がる。
「行け行け、ヒロミ号ぉ~~!」
「こらっ! 勝手に名付けるなぁ~」
「めえちゃん、止めてぇえぇぇ~!」
 すると、正面にタヌキに変身しかけのコタローと女の子が一緒にいるのが見えた。
「むぅ、コタローのやつ……」
 めえはちょっと、ムッとした。
 最後に思いっきりヒロミを叩く。


パァァアアァシァァァァァァィィィィ―――ン!!!


「今日のめえ、ひどいぃ……うぅ……」
 ヒロミはもうめえの気に触るようなことはしないでおこうと思った。

「はいー、ストップ~! お、いたいたコタロー。何かニオイしたもんね。……って、あ、あなたは確かコノハの友達の……」
 めえはミャンをヒロミの背中に乗せたまま下に降りる。しかし、ヒロミが逃げないように手綱は持ったまま。
 めえは女の子に見覚えがあった。
「え、あ、うん。テンリ。めえ? この前会った子……やよね?」
 テンリがかなり驚いた表情でめえを見る。
「覚えててくれたの! わーい、また友達が増えたぞ~嬉しいなぁ~」
 めえは素直に喜んだ。しかし、コタローと何故二人きりでいたのか……これはコタローを説いたださなくてはなりませんねー。
「でも、今日は忙しいから、また今度遊ぼうね! あ、コタローはもらっていくよ」
「ぎゃぁ!」
 めえは地面で横になっているタヌキ姿のコタローを腕に抱え、器用にも再び、ウマに跨った。
「それじゃあ、テンリ! ヒロミちゃん、行くよー!」
「ひひっ、いーん!」
 ヒロミは一応、ウマの真似をしてみた。しかし、うまく誤魔化せたかどうかはわからない。


パァァアアァシァァァァァァィィィィ―――ン!!!


 再びめえのムチが来る。
「――――!!」
 声を出したいけど、女の子がまだ近くにいるので我慢した。
「……あ、ちょ、ちょっと! この、男のヒトの服! どうしたらええのぉぉー!」
 テンリは叫んだが、めえ達には聞こえていなかった。

 それから数十分後……
 めえ達一行は狐塚家にまで帰って来ていた……いろいろ仲間を巻き込んで……
「よし、ありがと、ヒロミちゃん」
「どーいたしましてー」
 ヒロミは棒読みで返す。こう何十回も叩かれると不貞腐れたくなる。
「……どうしたらいいんだろ?」
 ミャンはヒロミの背中の上で呟いた。
「よっと」
 コタローに関して、めえはちょっと聞かなければならないことがあるので、先にしっぽを持って、ヒロミから下りた。
 逆さ吊りにされているコタローはでろーんとして最早生気は無い。
 ヒロミとミャンが少し気の毒そうに見守る。


 と、その時、狐塚家の玄関が開いた。
「あ! たぬきのおにーちゃん!!」
「……めえ、コタロー君に何を……」
 けえとねえがちょうど出てくるところだった。
「あ、猫柳さんと馬場さんとこの子達も……?」
 ねえはどういうことかわからなかったが、めえが何かやらかしたのはわかった。
「……。みんな、うちに入って。ちょうど、話したいこともあったし、夕食は食べて行ったらいいよ」
 ねえはそう言って、すぐに家の中にリターンした。
「あははっ☆ たぬきのおにーちゃん、動かないー」
 けえはコタローを楽しそうにツンツンしている。
「ふわぁ~、何か眠くなってきちゃったなぁ……」
 たくさん寝たのにまだ寝足りないのか、めえが大きくあくびをした。コタローの意識が戻った後、また一波乱起こったのは言うまでもない。


<おしまい>