「はよぉっ!」
 力無くしたカリンはテンリの言うことに従って、コノハの上から退いてその場に正座した。カリンから解放されたコノハも仰向けの状態から起き上がり、お座りの状態になった。
「さぁーて、カリン。わたしに隠してどうしてこうなったのかを一から全部話してもらおうか」
 テンリは腕を組んで仁王立ちしたまま、二匹の前に立った。獣化しているニ匹より獣化していないテンリの方が強気であるのはいささか不思議な状態であった。
「うぅ……」
 心が折れたカリンは観念してビーストトランスに行ってからの話をテンリに話し始めた……





「ここが息子がつくった研究所か」
「はい」
「森の中だから目立たないとは思うが、大きなものを勝手につくりおって……」
 初老の男は研究員と共に研究所に入って行った。
 すると、玄関の入口にいるガードマンに止められる。
「何だ貴様らは」
「貴様? 連絡はいっているだろう。この方をどなたと心得る。モロー博士であるぞ」
「モロー博士……!」
 ガードマンは険しい表情から一気に驚いた表情へと変わった。
「そ、それは失礼しました」
 ガードマンは慌てて頭を深々と下げ、博士と研究員を中に通した。
「博士、申し訳ございません。無礼な輩が」
「まぁ、よいよい。それより、息子はどこかね」
「ハッ。今、聞いて参ります」
 研究員は研究所の事務室に向かった。
「ワシの資産を勝手に使いおって……これで我一族の悲願に繋がる情報を得られていなかったとしたら、お仕置きをせねばなるまい」
 モロー博士は天井を見ながらそう呟いた。
「博士。息子様は実験棟にいらっしゃるとのことです。案内役を手配しました。行きましょう」
「うむ」
 案内役に抜擢された女の事務員は突然の来訪者に驚きながら、モロー博士と研究員を息子のところに案内した……