「ワオゥッ♪」
(わ、わ、わ! 近い! 逃げな!)
 後ろからラッキーの声が聞こえた。
 コノハは意を決して、走りだした。もうどこに行くのかはわからない。自分の足が走る方へ。しかし、それを追って、ラッキーも付いてくる。
「あらぁ~兄弟なのかしら。仲が良さそうね。うふふ」
 鷲田がのんきに笑う声が後ろの方で聞こえた。
しかし、彼女がそう思うほど楽観的な状況じゃない。ラッキーに捕まったら遊び相手で体を張らなければならなくなる。
(はぁ、はぁ、はぁ、この道は……牧場の方やなぁ。ラッキー、どこまで追いかけてくるんやろぉ)
 コノハは少し走り疲れてきた。
「ワゥ?」
 突然、体が熱くなってきた。これは走ったことによる発熱の感じではない。この感じは――