「遠くて近い存在」
僕と彼女は朝7時50分に、すれ違う。
僕が前夜飲み過ぎて部屋を出るのが遅れると、
彼女とすれ違うのは駅寄りなるし、
逆に僕が早いと駅から離れることになる。
彼女はまるでソーラー電波時計みたいに正確だった。
僕は駅から会社へ向かって歩いていて、
彼女はたぶん仕事のために、自宅から駅に向かって歩いているのだ。
彼女は99%、いつも決まった時間に家を出るのだと思う。
そして平均的に、運河にかかる橋で、すれ違う。
7時50分に出会う場所は、橋の手前か、真ん中で、
すべては僕の朝の寝起きの良し悪しにかかっている。
彼女は30半ばで、服装は黒が多く、とても地味な感じだ。
「きっと彼女のようなひとがビューティーコロシアムに出ると激変するんだろうな」
と勝手に思ったりする。
彼女はいつも歩道の傷み具合をチェックする道路工事員みたいに、
うつむきかげんに歩いている。
だから、かなりの部分で橋の補修すべき箇所を把握しているに違いない。
「今日は寒いですね」
と僕は話しかける。
口には出さないが、いつもそんな風に挨拶している。
それでも彼女はかなり熱心に道路を見ているから、
案外、公団関係者だったりして。
稀に、彼女に合わない朝とかがあると、妙に気がかりだ。
きっと、こういうのを遠くて近い存在と言うんだろうな。
彼女の詳細な現地調査のおかげでなのか、
実際に、この橋は本格的な補修工事に入りました。
“1+1= ” に答えてみよう。
ボクは算数とか数学が大の苦手です。
大人になった今でも、手足の指本数20を超える演算には、
冷や汗が出ます。
自慢ではありませんが、小三年生まで、
“1+1= ” を “11”
と真面目に答えていました。
足し算と掛け算はまだマシです。
その上手をいく、引き算とか、
特に割り算が嫌いです。
なにせ、プラス思考ですから・・・
言い訳になりませんかね、やはり。
でも、 “9-9=” の答えが
、
“(9_9)”
なんて、かわいくありませんかね。
えっ、そんな問題じゃない?
でも、宇宙向かうための数式理論
“1+1=”の答えが
たとえばこうなら、
ちょっと夢がある気がするし、
二人前食べるなんて
太り過ぎに注意。
「地デジ化のためでなく」
僕の家の家電製品は壊れない。
松下製のブラウン管テレビだって、画面が歪んでいるけれど、
一向に壊れる気配はない。
ここ最近はブラウン管の寿命からか、
さらに歪みが進み、画面が4:1(横:縦)になった。
いつか買い換えようと思っていたのだけれど、きっかけを失ってしまった。
マンションで地デジ対応だから、そのまま見続けることができるし、
これだけ頑張っているテレビくんを見ていると、それなりに愛着がわいてきた。
僕の家には他にも、結婚当初に買った電子レンジや冷蔵庫、扇風機が健在で、
独身時代から使っている炊飯器と洗濯機は、
いまだにしっかりお米を炊き、服の汚れを落としている。
それにしても日本製品って本当に丈夫だ。
ただ問題なのは、妻が最新の電子レンジとか、全自動洗濯機見ていて、
ため息を付くようになったことだ。
最近の新製品は省エネで静かだし、新機能で至れり尽くせりなのだから、
当然と言えば当然だ。
そんなある日、妻とショピングセンターを歩いていて、
液晶テレビの展示品の前で妻が立ち止まり、ふと呟いた。
「松潤って、足が長かったのね~」
そろそろ本気で買い換えようと思った。