ユリイカ 特集・橋本治 | heliumvoice-表

ユリイカ 特集・橋本治

$heliumvoice-表-「ユリイカ 橋本治」「ユリイカ2010年6月号 特集=橋本治」(青土社)

最新刊「リア家の人々」についての宮沢章夫との対談、小説を書くということについての栗原裕一郎によるインタビューがとてもタメになりました。

「自分の頭で人間を造型しておくのではなくて、こういう状況に置かれた静の眼に事態がどう映っているか、だったらどうするのかを、彼女に全部決めさせた」

「だってわかる人の内面描写をしてもしょうがないじゃん」

「顔の表情が見えるように心理の表情も見える」


とかとか。

いろんな人からの寄稿の中では、ゆずはらとしゆきによる「ハイスクール八犬伝」のラノベ文脈からの再……ではなくて初評価が嬉しかった。でも読者からしてみれば、もうちょっと面白く書いてほしかったなあ、などと思ったりはする。
「ハイスクール八犬伝」は未完に終わったが、もしかして「いちばんさいしょの算数」もこのまま終了ということになってしまうんだろうか?

それと仲俣暁生の「1983年の廃墟とワンダーランド 同時代人としての村上春樹と橋本治」が面白かった。

「(リア家の人々は)『ふしぎと(ぼくらはなにをしたらよいかの殺人事件)』であまりにも冷酷に描いた鬼頭家の娘たちの名誉回復の物語」

という指摘に眼が洗われました。

フリで読んで面白い本だとは思いませんが、こうやって評価を重ねてって、著作の絶版がくいとめられるならそれに越したことはないと思います。

夏目漱石の「吾輩は猫である」がいつの時代の書店にも並んでいるように、「桃尻娘」も店頭から消し去ってはならないのだ、と。

以上