日経経済教室に一橋大学の教授が待機児童解消問題について書いている

待機児童解消の為には、保育料引き上げが現実策という意見である

また、幼児教育・保育無償化の議論については、「幼児教育の相当部分は無償化するにしろ、子育ての手間の代行部分については利用者が負担すべきであり、現状の保育料でも低すぎる」という意見である

この考え方に基本的に賛成である

私は、少子化解決の観点から、保育所問題は必ずしも少子化の解決にはならないのではないかと見ている

それは、フルで働く人が増えることが少子化解決になるかが疑問だからである

また、幼児教育無償化については、公平性に配慮されれば、有りうべしという意見であるが、それも、この教授の考え方と同じである

いつかの、NHK番組のブログの際に、3~5歳については、特に、4、5歳が9割、幼稚園、保育所に通っていることについて書いた

幼児教育無償化をするなら、公平性がある、この部分ということになるが、教授の意見も「幼児教育相当部分」ということで同じである

私見では、年金等世代間格差是正の必要性も踏まえれば、マイナンバー資産課税を財源にすることが適切と考える

教授は、それ以下の、「子育ての手間の代行部分」については、保育料を上げることで、待機児童解消することが現実的という意見である

教授の寄稿によれば、都市の地価の高さ、保育士の人件費により、一人当りの保育コストは人数が増えるに従い上昇するということだ

地価の問題は容易に想像がつくが、加えて、人件費の問題が大きく、0歳児の保育コストは一人当り月40万だそうだ

これだけのコストがかかるのだから、月3万の保育料を上げるべきという、教授の意見は、保育所にいれない、入れれない人との公平性の問題として議論されるべきであろう

「子育ての手間の代行部分」については、すべての人が保育所を使う訳ではく、無償化の対象にすることには問題がある

更に教授の指摘の通り、保育料は3万程度で保育コストとの差額は公費負担ということであれば、待機児童解消の為のコストは、見えない、大きな公的負担が必要であり、隠された公平性の問題が存在しているということである

このような問題は、3号制度の問題とも関連する

3号制度は、子育てに優しい制度である

3号制度については廃止すべきという意見もあるようだが、少子化の解決という観点からはどうなのか

3号制度を廃止すれば少子化が進むのではなかろうか

教授は費用の負担の公平性の観点から、待機児童解消の在りかたとして、保育料引き上げによる需要抑制を主張している

私は、少子化解決の観点から、待機児童対策が少子化に与える影響がプラスになるかについて疑問を感じる

教授は自らの提案が「多くの国民のイメージとは異なるであろうが、待機児童解消の現実的な方法」と述べている

批判覚悟の本音の議論だが、必要な問題提起、提案である

教授指摘の費用の公平性、更に加えて、少子化解決に本来的に資するシステムなのかという観点から、待機児童解消問題については議論されるべきである

職業選択の問題であることから個人の自由であることは当然であるが、3号制度の在りかたと同様、国として、社会として、如何なる方向付けが、少子化、公平性、女性労働力等の面から適切なのかについて、議論がなされるべき時である

我々は我が国をどのような社会に持っていくかについてのビジョンが求められている

政府は「みんなにチャンス」会議を設け議論するようだ

適切な議論を期待したい

昨今の経済停滞から、また、社会システムの公平性劣化から、更に最近の労働力不足からも、フルを選択し、その結果、待機児童が増えることは容易に理解できる

しかし、それが「合成の誤謬」となって、更に少子化を進めることにならないか検討が必要である

3号制度の在りかたや、保育料の在りかたを含め、国は適切なシステム設計が必要である

その際、我が国で忘れられ勝ちな視点である、少子化という、戦略的視点を大前提に置く必要がある

私見では、3号制度のような、子育てに優しい制度を維持し、フルの継続を前提とせずとも、出生率を確保できるような、社会システムの公平性を確保して行くことが適切と考える

現状の少子化は社会システムの公平性劣化が原因である

地価、塾依存教育、年金等世代間格差、非正規賃金世代内格差等である

公平性を回復し、出生率が上がるような環境を整備し、更に、同一労働同一賃金の実効性を確保し、パートの女性や、中途採用の女性にとっても不利になることがない労働環境を確保して行くことが、現実的な解決策ではなかろうか

また、教授指摘の通り、0歳児等の保育コストを踏まえれば、適切な保育料負担の議論が必要である

少子化解決、公平性、適切な労働機会といった、連立方程式を解くことが求められている