今日は水曜日でカウンセリングの日でした。
ここ3回は、正直心に負担のかかる内容が続いていて、終わった後はだいぶぐったりとしています。
さて、今回は趣向を変えて、うつ病患者さんの周りの方へのアドバイスというか、私の思うことを書いていきたいと思っています。
近しい方にうつ病患者をお持ちの方は、きっとその方とのコミュニケーションに試行錯誤されているかと思います。
私が実際にされて、良かったこと、嫌だったことを主観的に書いて見たいと思います。
周囲の方は、きっとうつ病患者の方に病気が良くなってもらいたいという一心から、色々と情報を集め、実践してもらいたいと思っているのではないでしょうか。
しかし、患者本人にとって、それを行うこと自体がストレスになってしまうことはしばしば起こりえます。
では、どうすれば、それを実践してもらえるのか。
そのアプローチについて記したいと思います。
例えば、うつ病の気分転換に釣りがいいという情報があります。
うつ病の方に、釣りに挑戦してもらいたいなぁとお考えになっている場合ですが、
まず、本人にとって一番負担になるのが
「釣りに行ってみたら?」とか「釣りがうつにいいらしいから、やってみなよ」という言い方です。
釣り経験者ならともかくとして、初めて釣りをする患者にとって、全く未知の領域に踏み出すということは非常に心理的にも、また肉体的にも負担になります。
まず、うつ病は午前中調子が悪く、午後から夜にかけて少し体調が良くなるという傾向があると言われています。
午前中から、そのような言われ方をすれば、まず乗り気になることはないでしょう。
少なくとも昼食後、できれば2時か3時ごろがいいでしょう。
まず、本人に、その日の体調について聞いてみてください。
「今日は体調どう?」
それに対して
「今日はしんどい」
という回答があれば、その日はそっとしておいてあげてください。
一日中ベッドに横になっているのはうつ病にとって必ずしもいいことではないのですが、患者本人からすれば、それしかできないのですから、無理に外出を強制することはかえって逆効果だと思います。
うつ病には波がありますから、2、3日置きに体調を尋ねて、
「今日はまぁまぁ」といった回答が来るまで待ちましょう。
まぁまぁという日が来れば、次のアクションを起こします。
釣りに誘う言い方ですが、
先ほども書いた通り、「釣りにでも言ってくれば?」という言い方をすると、一気に体調を崩してしまいます。
釣りに行けと言っているのに、行けない自分に対して自責の念で、また落ち込んでしまうかもしれないからです。
より負担のない言い方をするならば
「釣りに興味があるんだけど、悪いけど付き合ってもらえないかなぁ。もちろん、体調が悪いなら全然行かなくてもいいからね」
といった感じが良いでしょう。
あくまで、釣りの依頼者という立場で、お願いするという形をとるのがいいと思います。
それでも、多くの患者はあまり乗り気にはならないと思います。
そういう時は、すぐに引き下がってください。
「わかった。じゃあ、今日はゆっくりしてね。」
とでも言って引き下がってください。
間違っても
「どうしてもダメ?行きたいんだけどなぁ」と未練がましくいうのはあまりお勧めできません。
あくまで、患者の心理的負担にならないように心がけてください。
夜に近づくにつれて、体調も良くなると思いますから、
夕方4時頃でもいいですから、本人の顔色を見て、もう一度お願いするのもたまにはいいかもしれません。
「どうしても行きたいんだ。一人だと心配だから、一緒に来て色々相談に乗ってくれると嬉しいなぁ」
と言った感じで、患者を必要としているんだよというニュアンスを込めるといいでしょう。
それでもダメなら、しばらくはその提案をするのはやめておきましょう。
逆に、もしどこかのタイミングで、しぶしぶでも行ってくれることになったら、道具や餌の調達は基本的に家族や恋人の方が主導的に進めることをお勧めします。
もし、一緒に売り場に行きたいと言われた場合は、どれがいいかなぁといった感じで相手の意見も聞くといいでしょう。
それで、患者の意見があれば尊重してあげてください。
元気が無くて「どれでもいいよ」といった態度であれば、「これなんかが良さそうだから、これにするね」といった感じで、相手の了解を得つつ購入してください。
そして、いざ釣りを始めるにあたっては、やはり達成感のある釣りをしたいものです。
できれば周囲の方ができるだけ事前に情報を仕入れ、うまく釣れる場所や餌のことを調べておきましょう。
その上で、そのことは本人の前では口に出さない方がいいと思います。
必要最低限のこと、餌のつけ方や釣竿の使い方などだけ教えて、あとは患者本人の好きにさせておくのが良いです。
周囲の方もご自身の仕入れた知識をフル活用して釣りを行ってください。
その上で、患者のビギナーズラックで釣れた場合は一緒に喜びましょう。
患者が釣れず、周囲の方が釣れた場合は、大げさに喜んで、少しだけアドバイスしてもいいかもしれません。
ただ、そのやり方を強制するのもまた良くないのです。
「こうやったら釣れたよ!」ぐらいの言い方にして、実際にその手法をとるかどうかは患者本人に任せた方がいいと思います。
本当に、うつ病患者ってわがままで面倒くさいですね。
でも、本人からすれば、「いやいやお前の趣味に付き合ってやってるんだ」ってな感じですから、そもそも乗り気ではないのです。
一生懸命患者をおだてて、その気にさせましょう。
それで、患者が釣りにはまればしめたものです。
趣味ができるということは、うつ病治療にとってとっても前進だからです。
ただし、ここまで書いたことを実践して、最後までうまくいくのはせいぜい20%ぐらいだと思います。
時間をかけて、合間を設けて、たまーに、「私の趣味に付き合ってもらえる?」という下からの姿勢で接してあげてください。
繰り返しになりますが、「これこれがうつにいいらしいからやってみなよ」という患者主体の提案はぜひ避けてください。
これを書いたのも、私自身がこういう経過をたどったからです。
私の彼女が釣りに興味があり、私の体調のいい時に一緒に釣り具を買いに行きました。
初めての釣りは全く釣れなかったのですが、どういうわけか以来釣りに少しずつのめり込んでいき、今では、気分のすぐれない時は、半ば逃げ場に逃げるかのごとく釣りに行っています。
こういった、自分なりの気分転換を見つけられたことは非常に幸運でした。
一方母親は、「これこれがうつにいいからやってみたら?」といった言い方をしてくるので、正直乗り気になることはまずありません。
あくまで、患者に手伝っていただく。趣味に付き合っていただく、と言う低姿勢のアプローチが効果的だと思います。
最後に
あくまでこれは私の体験談です。
話半分程度に参考にしていただき、患者さんごとに適したアプローチを模索していただくのが最も効果的だと思います。